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―ほかには、ローマのほかに、どこか行ってます?
―ああ、ローマのほかは、ニューヨークと、あと、ヘルシンキですね
―で、どうでした
どうと聞かれたので、わたしは話した
ニューヨークは、からだも心も休まることがなく
ヘルシンキは、カモメがたくさんいた記憶ばかり
そんなこと人に話すようなことではなかったのだけれど
―そうですかあ
―いつ行かれるんですか、ローマ?
―へ?
―え?
―誰がです?
―だって、え
―ああ、いえいえ、ちがいますよ、行きません、行きませんよ
その日、結局、あれがどうなったのかの行方はわからず
けむに巻かれたような気がしないでもないのだけれど
もやもやとした釈然としない何かはそこにはなくて
人と話をしたからだろうか
いくぶん妙な気持ちではあるけれど
悪い気はしていない




