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そのお店の前をわたしは何度も行き来する
わたしがそのお店の前を通るすべてのときを
そのお店の店主が見ているわけではないだろう
けれど、けっこうな割合、店主と顔を合わせる
その多くはお店の前で
ときに店先を掃除している店主と
ときに子どもたちに笑いかけ、手をふっている店主と
ときに手をうしろで組み、遠くをぼんやり眺めている店主と
お店のなかの店主と目が合うこともある
お店の前を通るとき、わたしがなかをのぞき
店主がそれに気がついて微笑みながら軽く会釈してくる
店主の会釈に、わたしは返したり、返さなかったり
返さなかったのは、急いでいたりで
気がつかなかったフリをしたとき
わたしがなかをのぞかなければ目が合うこともないのだけれど
どうしてだろう、お店のなかをのぞいてしまう
そして、店主と目が合う




