6/6
地図の余白
図屋は、いなくなった。
だが、世界は不思議と困らなかった。
地図は更新されなくなったが、道は消えなかった。
ただ一つ、変わったことがある。
地図の端。
どの地図にも、必ず小さな余白が残るようになった。
名前も、印もない空白。
けれど、人々はそこを見ると、なぜか安心する。
「行き場のないものが、行ける場所がある」
そう、無意識に知っているからだ。
そして今日も、
名を持たない二人が、
誰にも描けない場所を歩いている。
――それでも、確かに存在しながら。
後日談:余白が増えた世界
ユイがいなくなってから、五年が経った。
地図屋という職業は、正式には消えた。
依頼も、看板も、弟子もいない。
けれど「地図屋だった人」を覚えている者は、意外と多かった。




