1.5 限界と可能性
しかし、その力はすぐに消え去った。緑色の光が消え、盛り上がっていた腕の筋肉も元に戻る。体から、急に力が抜けていくような感覚に襲われ、俺は膝から崩れ落ちそうになった。まるで、全力疾走した後のように、全身がだるい。
「スキルの持続時間が終了しました。現在のスキルレベルでは、一度に一つのスキルしか共有できません。また、持続時間も短いため、注意が必要です」
また、あの無機質な声が響く。なるほど、制限があるのか。一度に一つ、そして持続時間も短い。たった数秒の間に、岩石狼を倒すことができたが、もし相手が複数だったら、あるいはもっと強大な魔物だったら、どうなっていたかわからない。それでも、この力があれば、この世界で生きていけるかもしれない。絶望の淵から、一筋の光が差し込んだような気がした。
俺は、倒れた岩石狼を見つめた。こんな魔物を、たった一撃で倒せるなんて。信じられない。このスキルは、確かに地味かもしれないけれど、使い方次第では、とんでもない力を発揮する。重要なのは、誰のスキルを借りるか、そして、そのスキルをどう使うか、ということだ。
「よし……」
俺は立ち上がり、ローブの埃を払った。まだ不安は尽きないが、目の前の危機を乗り越えられたことで、少しだけ自信が湧いてきた。この世界で、俺は一人ではない。俺には、スキルシェアという能力がある。そして、その能力を使って、誰かの力を借りることができる。それは、俺にとって、大きな希望だった。