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『スキルシェア・サバイバー』  作者: SM
第1章 見慣れない世界と「借りる」力
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1.3 岩石狼との遭遇

とりあえず、この森から出なければ。そう思い、俺は歩き出した。足元に広がる発光する苔が、まるで道標のように薄暗い森を照らしている。その光は、足元を照らすには十分だが、森の奥深くまでは届かない。一歩足を踏み出すごとに、不安が募る。この森には、どんな危険が潜んでいるのだろうか。見たこともない植物、そして、聞いたことのない鳴き声。全てが、俺の警戒心を刺激する。


数分も歩かないうちに、獣の気配を感じた。それは、ただの動物の気配ではない。獲物を狙う、獰猛な捕食者の気配だ。ガサガサと、背の高い茂みが大きく揺れる。その揺れは、ただの風によるものではない。何かが、こちらに向かってきている。心臓がドクンと跳ね上がった。嫌な予感がする。全身の毛が逆立つような、本能的な恐怖が俺を襲った。


茂みの中から現れたのは、狼のような姿だが、全身がごつごつとした岩石で覆われた、見たこともない魔物だった。体長は二メートル近くあり、その巨体は、まるで動く岩山のようだ。鋭い牙と爪が、月明かりに鈍く光る。その瞳は、血のように赤く、俺を獲物と見定めている。


「うわああああ!」


思わず叫び声を上げ、後ずさる。岩石狼は、唸り声を上げながら、ゆっくりと、しかし確実にこちらに近づいてくる。その足音は、まるで地面が震えるかのように重い。一歩踏み出すごとに、地面が微かに揺れる。


武器もない。戦う術もない。俺は、ただの高校生だ。体育の授業で少し運動する程度で、喧嘩なんてしたこともない。完全に無防備な俺は、ただ恐怖に身を竦ませるしかなかった。絶体絶命だ。このままでは、あの岩石狼に食い殺されてしまう。脳裏に、家族の顔が浮かんだ。もう、会えないのか? こんな場所で、俺の人生は終わってしまうのか? 冷や汗が、背中を伝って流れ落ちる。心臓の音が、耳元で激しく鳴り響いていた。

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