3.1 日常と評判
リリアとの出会いから数週間が過ぎた。俺、佐倉アキラは、ギルド・アークライトで様々な依頼をこなす日々を送っていた。朝、ギルドの掲示板で依頼を選び、リリアと森へ向かい、魔物と戦い、素材を採取する。夕方には街に戻り、ギルドで報告を済ませ、稼いだ銀貨や銅貨を数える。そんな、冒険者としての日常が、少しずつ俺の体に馴染んできていた。
リリアの「探索」スキルと俺の「スキルシェア」は、予想以上に相性が良かった。彼女の鋭い五感と、森のあらゆる情報を感知する能力を借りれば、どんな隠された道も、どんな珍しい薬草も、瞬時に見つけ出すことができた。そして、俺が一時的に借りた「怪力」で大型の魔物を退治したり、時には「鑑定」スキルを持つ商人の力を借りて、珍しい素材の価値を見極めたりと、二人の連携は日を追うごとに洗練されていった。俺は、リリアの指示に従ってスキルを使い分け、彼女は俺のスキルシェアの特性を理解し、的確な指示を出してくれる。まるで、長年連れ添ったベテラン冒険者のような、息の合ったコンビネーションだった。
おかげで、俺の懐は少しずつ潤い始め、ギルドの冒険者たちからも「あの新米コンビ、結構やるな」と一目置かれるようになった。ギルドの酒場では、俺たちの噂が飛び交っていた。「おい、聞いたか? 佐倉って新米冒険者、他人のスキルを借りられるらしいぞ」「マジかよ! それって、最強じゃねえか?」「でも、持続時間が短いんだろ? 使いどころが難しいな」。様々な声が聞こえてくる。俺のスキルは、この世界では異質であり、同時に大きな可能性を秘めている。その可能性に、人々は好奇と驚きの目を向けていた。リリアも、最初はぶっきらぼうだったが、俺といる時は少しだけ表情が柔らかくなった気がする。時折、俺の冗談に小さく笑ったり、困っている冒険者にさりげなく助言を与えたりする姿を見るたびに、彼女の意外な一面を知り、俺は少しずつ彼女に親近感を抱くようになっていた。
俺の異世界での生活は、順調に進んでいるように見えた。しかし、その一方で、俺の能力に不穏な目を向ける者たちもいた。ギルドの片隅で、俺のスキルについてひそひそと話す冒険者たち。彼らの視線は、好奇心だけでなく、どこか警戒や羨望、あるいは敵意のようなものが混じっているように感じられた。街中で、俺の姿をじっと見つめる怪しい影。彼らは、俺が気づくとすぐに姿を消すのだが、その視線は、まるで闇に溶け込むかのように、俺の背中にまとわりついてくる。俺は、常に誰かに見られているような、不気味な感覚を抱くようになっていた。それは、まるで、透明な糸で操られているかのような、不快な感覚だった。




