メッセージ
アイスフェス一転、龍己くん視点になります。
彼視点からの柚木ちゃんの可愛さをお楽しみ頂けると幸いです。
始まりは一通のメッセージだった。
髪を乾かし終わり、これからSNSチェックでもするかとスマホに手を伸ばしかけた時、ティロンといった子気味良い音が響いた。
「天野さん……?なんだろ」
通知が来てすぐ見るのは気持ち悪いかもしれない、と長押しをして既読を付けないようにメッセージを確認する。実に便利な機能だ。
『良かったら、今度映画に行きませんか?』
『弟がカフェをやっているんですけど、そこのお客さんにチケットを2枚貰ったみたいで。俺は一緒に行く人もいないし、あげるよと言われてしまって』
ここがマンションかつ夜じゃなかったら飛び跳ねている自信がある。
自分が一方的に相手に好意を持っているからこそ押しすぎてはいけない、と距離感を図りかねてはいた。
そんな中でまさか向こうから誘って貰えることがあるなんて。友達?知人?位には思われているのだろうか。
少し冷静になろうと冷蔵庫から炭酸水を取り出し、一息つく。ピリッとした炭酸特有の感覚に、体温とは正反対の温度が正気を取り戻す手助けをする。
ゆっくりと味わった350ml程度のグラスが空になってから、再びスマホへと手を伸ばした。
『良いんですか?俺で良ければ是非』
速まる心拍数をなんとか抑えて文章を読み返す。誤字はなさそうだ。
送信ボタンに触れるまえに、彼女からのメッセージも読み返す。自分が送った後に読み返すと、トークルームを開き続けることになる。それが意味するところは、相手からのメッセージが飛んできた瞬間に既読がつくということで。色んな意味で耐えられるはずがなかった俺は、読み返してから送る作戦を決行した。
……弟?
若干の冷静さを得た脳に、先程までの冷静さを欠いた脳では処理しきれなかった単語が飛び込む。
弟がいたのか。つまりお姉ちゃんなわけで。
兄弟関係を知ると納得感や意外性だったりでグッとくるのは俺だけじゃないと思いたい。
先程のメッセージを思い切って送信し、続けてフリック入力をする。
『弟さん、カフェ開いてるって凄いですね!お幾つなんですか?』
思っていたより早く新着を知らせる通知音が鳴った。天野さんも丁度仕事や家事終わりのリラックスタイムだろうか。
『2つ下なので、25歳ですね』
『…てことは、天野さん27ですか?1個違いだったんですね!俺26です』
そう離れては無いだろうと思っていたものの、歳を聞いていなかったことに今気がついた。
知る度に好きになる。家族構成や年齢が分かっただけでこんなにも頬が緩むような恋愛、今までしてこなかった。
「……これが沼落ちってやつ?」
ポツリと呟いた誰にも聞こえることの無い言葉が、1LDKのマンションに響いた。




