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暗光の操拳者  作者: Happy Banana
セイノール編
5/5

アルバトロス先生によるありがたい授業②

「さて、予告どおり今日は空拳(エンプティ·ハンド)についてやりますかねぇ」


積み重なった本を部屋の隅に置き、いつも通り挨拶をして授業が始まった

この1週間特別合宿もあと2日を残すのみだ。


「まず、どれほど予備知識があるか教えてくれいただきますかねぇ」

「え~と、確か七歳頃に突然発現するんだったよね?」

「その通りです。

実はなぜ発現するのかあまり分かって無いんですよね。

実に面白い。ウフフ」


そーいえば俺、七歳以前の記憶がほぼないんだよな。

クロノスからはいづれ戻るよって言われたけどさ····


「それと通常、空拳は灰色をしています。

あなたにとってはそれが異常に見えるかもですが」


確かに自身の大海のような青色と燃え盛るような赤色の麻の葉の模様が入っている両の空拳からは想像しようもなかった。


「そのこと分かったよ。

あと、発現する空拳の数も人によって1つか、2つなんだろ?」

「はい、そうですよ」

「じゃあ…空拳が発現しない人もいるの?」

「·····」


突然アルバトロスは突然あっけにとられた様に黙りこくってしまった。

一気に静けさが広がるのを感じた。


あ、やべ…いけないこと聞いたか?


ひとしきりした後アルバトロスが口を開いた。


「····どこかにはいるかも知れませんねぇ。この世界は広いので。

とりあえず授業に戻りますねぇ」

「うん…」


とりあえずこの話題は今後出さないようにしよう。


「先ほどおっしゃった通り、1挙者と2挙者がいます。その割合は前者が圧倒的に多いですねぇ。

この学校はその逆ですけどねぇ」


やはり、この学校はそれだけレベルが高いってことか。

各地から人が集まるだけあるね。


手技(ハンドスキル)については知ってますよねぇ?」

「それは知ってるよ、後付けで色んな能力を入れれるってやつでしょ?

もっとも俺には関係ないけどね」

「そうです。

その能力について詳しく説明しましょう。

まず、空拳には能力を受け入れる容量(キャパシティ)があるんですねぇ」

「コップみたいな感じ?」

「そうです!イメージできてますねぇ」


今日一のテンションでセルディックを指差して言った。


「そのコップに現象を理解したり、イメージして少しずつ手技という水を入れていくんですねぇ。

もちろん習得にはセンスやものすごい努力が必要ですし、何年も費やしますよ。

後、これといった全員に共通する習得法がないのも難しい要因の一つですねぇ」

「それを習得したらどんな能力を使えるようになるの?」

「この世の現象は全て習得することが"一応"可能ですが、火や水、風の力を習得することが一般的です。

身近な現象ですしねぇ」


自身に身近なものほど習得しやすいってことね。


「ですが、天才なら神之間(ゾーン)使いに並ぶほどの強さを持つ人もいますよ。

南方統率師団長のロクサッド師団長はまさにそれですねぇ。

しかも1挙者!まったく恐ろしいですねぇ」


またまたニヤニヤしている····

慣れてきたけど普通に怖いよ先生。


「では、一般的な空拳はここまでにして、

お待ちかねの神之間について話しましょうかねぇ」

「待ってました!」

「まず、神之間が刻み込まれた空拳の特徴について解説しましょう」


ようやくマントの中から2つの空拳が現れた。

片方は灰色の手。

もう一方は鎧の籠手(こて)のようなものだった。


やっぱり、神之間使いの空拳は異形をしているんだな。

世界にとっても特別な存在って感じがする。


「見て分かる通り、神之間使いの空拳は通常とは異なる形態をしています」

「だから先生はマントでずっと隠してるの?」

「そうですよ。

やっぱり世間一般から見ると相当怖いようで。

あ、あなたのはそこまで変化が大きくないので隠す必要もないと思いますが」


なるほど、確かに怖く感じるもんな。


「後、副校長という立場的に様々な人達とお話することが多いということもありますねぇ」

「立場上ってことね」


アルバトロスは深くうなずいた。


「通常は後から絶え間ない努力をして手技という能力を習得できると言いましたね?」

「うん」

「神之間はまるで違います。

最初から能力が刻み込まれているからです。それもとんでもない力を」


クロノスも言ってたな、

この世の理ギリギリの力って。


「勿論使いこなすには努力と時間はかかりますが。

私もまだ完璧ではありませんしねぇ。ウフフ」

「先生の神之間はどんな能力なの?」

「それはいくらあなたといえど教えるわけにはいけませんよ」


アルバトロスは微笑みながらそう諭した。


「まぁでも、明日、その身を持って体験出来ますから。

お楽しみに。ウフフ」

「え···明日何かあるの?」

「明日は実戦練習を行う予定です。

まぁこの私、アルバトロス特別合宿最終日の試験とでも思っててください」

「う、うぇ?」


まじでこいつ急にぶっ込んでくるんだよな…

でも、やっと先生の力を知れるし楽しみかも。

いっそのことぶっ倒してやるよ。


「話を戻しましょうか。

ところでセルディック君。神之間の発動方法はご存知ですよねぇ?」

「そりゃもちろん。

自分の体と一体化することだよね?」


どんだけクロノスのもとでやってきたと思ってんだ!


「えぇ、その通りです。

知ってるかと思いますが、一体化すると自身の身体能力も急激に上がります。

しかし、その状態をずっと維持することはとても難しいんですよねぇ。

セルディック君は動きながらどのくらい維持できます?」

「うーん、30分とか?」

「あら、まだまだ発展途上ですねぇ」


セルディックは少しイラッとした。


「そう言う先生はどんくらい出来るの?」

「2時間です」

「え、まじ?」

「マジですねぇ」


俺なんてなにもしなくても1時間くらいで一体化が解かれるのに····


「まぁそう悲観することはありませんよ。

私もあなたの歳くらいの時もそのぐらいでしたよ。

····もう少し長かったですけどねぇ。ウフフ」

「は、はぁ····」


一言多いんだよぉ…


「あと、あなたの場合について話しましょう」

「お、俺の場合?」

「えぇ、あなたは神之間使いの中でも異常なんですよねぇ」

「え、そーなの!なにがなにが?」


セルディックは元気を取り戻した。


「それはあなたが両方の空拳とも神之間持ちということです」

「確かに、そうだった···」


すっかり忘れてた。

そーえば俺の空拳はどちらも異形というやつだ。


「実はこんな事象、いままでに無いんですよねぇ。

というかとんでもない確率なんですよ」

「でも、俺、赤の模様が入っている空拳の方は一体化できないんだよね」

「それはあなたの自身の体の問題でしょう。

今は片方の能力を処理するのでいっぱいなんでしょう。

でも、ゆっくり時間をかけていけばそれも出来るようになると思いますよ。

まぁ私の予想ですがねぇ」

「努力あるのみってことね」

「そうですねぇ」


だから、俺は一体化できない方の能力は良く分かってない…

使いこなせれば相当強くなれると思うんだけどなぁ、、


「ここまで言ってきたように、神之間っていうのは簡単には言えばチートです。

ですが、神之間が刻み込まれた空拳の容量はそれで埋められてしまいます。

つまり、手技が習得できないんですよねぇ」

「つまり俺には習得できないってことね」

「はい、残念ながら。

まぁ容量以前に体と一体化するから使うことがほぼ出来ないですけどねぇ」


てことは逆に俺以外の神之間使いは、片手に神之間、もう一方に手技が使えるってことか。

確かにそれは強いな。


「ちなみに神之間使いは今現在13人いると言われていますねぇ。

私と君、それと校長を抜いてあと10人いるということですねぇ。

君と同い年で言うと、東方のフタソッシェのコプロン操挙学校に在籍しているソルト君ですねぇ」

「え、同い年に神之間使いがいるの?」

「えぇ、驚くことに。

本来は10年に1人か2人なんですけどねぇ。

近年増えてきてる傾向にあるらしいですよ」


ソルト···か。

どこかで会えるといいな。


「明日もありますし、午前の授業はこれまでにしましょうかねぇ。

あ、午後は割り算をやりますかねぇ」

「えぇ!!」




こうしてこの合宿も最終日を迎えるのだった。

ちなみにセルディックは合宿6日目に筆算という最強の武器を手に入れた。



ーーーーーー

一方に校長室にて


月明かりが照らす部屋に二人の声だけが響いていた。


「どうじゃ?セルディック君は」


相変わらず、手すりに手を掛け椅子に深く座りながらそう尋ねた。


「順調ですよ。

明日は私と実戦試験をと考えています」


私も久しぶりに神之間使いと戦えてワクワクしますしねぇ。


「そうか、くれぐれもやられるとかは勘弁してくれよ、アルバトロスよ」

「大丈夫ですよ。

特別な存在とはいえ、まだ私とはかなりの差がありますしねぇ。

ただ、手加減する余裕はないかもですねぇ。

いづれにせよ、私にとっても楽しみです。ウフフ」


そう言うと、背を向けその場から去ろうとしたアルバトロスに向かってキプロスが呼び止めた。


「あまり気にすることじゃないと思うのだか、ここら辺で近頃不穏な動きがあるらしい

警戒だけはしといてくれんかのう。頼んだぞ、アルバトロスよ」

「承知しました、心にとどめておきます」


校長室のすぐ外の廊下にある窓から知らない人影がうごめくのを微笑みながら見つめ、そう答えた。


読んでくださってありがとうございます。

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