ep.Ⅷ 愚者と模擬文章鑑定
生徒たちの模擬鑑定の結果のどこが問題なのか、考えながら読むのも楽しみの一つです^^
「今回は文章形式で模擬鑑定をしようと思う。今後一人で練習をする際は、今回教える形式でしばらくやってほしい」
「文章……ですか」
「現代人は書くのが苦手な人も多いけど、いろんな意味で学びになるはずだよ」
口頭の場合、しっかりとした単語が出なくてもニュアンスで伝えることができる。
しかし文章の場合、抽象を避けて具体を意識しなければならない。
「つまり、言語化の練習になるってことね」
「言語化ってなんですかー?」
「難しく考える必要はないよ、夢義。表現の仕方を増やすみたいな感じだ」
「む、む、むずかしそうー」
「とりあえず、僕の過去の鑑定結果を見せよう」
〜相談内容〜
ハナさん(仮)
付き合って半年が経ちましたが、喧嘩をすることが増えました。
結婚を見据えてお互いお付き合いをしているのですが、うまくいくのかどうかを見ていただきたいです。
・過去【ソードのキング(逆)】
互いの立場に差があり、対等とは言えない。
お互いの考えが噛み合っていない。
・現在【ワンドのペイジ(逆)】
信頼関係が築けていない。
遠回りしている。
・近未来【ワンドのキング】
自分の軸や考え、価値観が固定されすぎている。
しっかりしている人。
・最終結果【節制(逆)】
不安定ではあるが、致命的というほどではない。
・アドバイス【女帝】
自分に自信を持ちながら、現状に合う最善に調整しよう。
あなたならできる。
〜まとめ〜
まず、二人の関係性はそれほど悪くありませんよ。
三ヶ月から半年が経つと、仲を深めるための擦り合せに苦労するものです。
誰もが通る過程のようなものなので、ハナさんもそれほど不安になる必要はありません。
喧嘩が起こる原因は、それぞれの考え方にあるようです。
お互いが考えをきちんと伝えきれておらず、相手の考えを受け止めようとしていません。
いわゆる価値観を一致させるのに苦労している段階ということですね。
妥協点を模索しなければならないのですが、ハナさんなら柔軟に調整ができるとカードに出ています。
「私ならこの仕事をやり遂げられる!」くらいの気持ちで、挑戦してみてください。
「おおー、占いっぽい!」
「ぽいじゃなくて占いだ」
「水都くんの占いを見たことがなかったけど、やっぱり本物は違うわね」
「これは感‐‐‐‐じゃなくて、初心者の時に占ったものですよ。僕も二千花と同じで、枚数が少ないと読みにくいので」
「それでも私とはレベルが違います。私にもできるか不安になってきました…………」
「いや、これくらいは何回かしたら誰でもできるって。他人の展開結果を読むことはできないから、無意識に難しく感じているだけだよ」
実はまとめの最初の三行は、厳密に言えば鑑定結果ではない。
カップルの初期によく起こる問題を、知識として披露しているにすぎない。
占いにおいて程度感を伝えるのはかなり重要であり、難しい部分の一つ。
それを一般的な出来事を用いて説明しているのだ。
「これは言語化の技術で最も重要な"イメージ化”だね。例えを用いるのもイメージ化の技術の一つだ」
「言われてみると、各カードの意味も現実の考え方に当てはめて変換しているわね」
「うん。鑑定結果を受け止める時、相談者がイメージできるように説明するのがベストだ。ということは、占い師もイメージをする必要がある。具体性を意識するというより、想像しやすい内容を意識する感じかな」
乙羽は頭の中で水都の説明をイメージしているのか、口角を上げながら水都の鑑定結果を食い入るように見つめている。
対して二千花と夢義は、眉間にシワを寄せて固まっていた。
「習うより慣れろだ。やり方の説明をすると、各項目のリーディング内容はメモ書き程度でいい。慣れないうちはキーワードだけでもいいよ。最後のまとめは、実際に相談者が読むことを意識して書くこと。実は僕のはあまり良い例とは言えなくて、できるだけ口語を意識するといい。台本みたいな感じかな」
「テーマはどうしますか?」
「メンバー同士を占ってみようか。基本的には人間関係の問題が生じかねないから、あまり推奨されたことじゃないんだけどね。いずれネタに困るからってのもあるけど、いろんな意味で良い経験になるはずだ。組み合わせは、俺と夢義、乙羽さんと二千花で」
「二千花ちゃん、よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします、乙羽さん」
「わーい、てんちょーだぁ!」
「はいはい、よろしく」
二つのテーブルに分かれて、各人カードをシャッフルし始めた。
まずは乙羽と二千花ペア。
それぞれが同時にカードをシャッフルして並べる。
二千花は四枚。
乙羽は五枚だった。
文章の作成方法は、携帯にまとめてメッセージアプリで送信する。
〜相談内容〜
乙羽さん
仕事についてのアドバイス
・過去【戦車】
勝負・戦い・挑戦
・現在【女帝】
成果・才能・モチベーションが高い
・未来【皇帝】
積極的・実行力・向上心・男性?
・アドバイス【ソード4】
休むこと・一時停止
〜まとめ〜
乙羽さんには高い向上心があり、常に挑戦し続けています。
未来でも変わらず活躍しているので大丈夫です。
体にはお気をつけて。
三十分ほどかけて二千花はここまで書き上げたものの、眉間にシワが寄せながら指を携帯の画面に添えたまま固まる。
文章量が水都の結果と比べて少ないことに不安を抱きながらも、これ以上書くことがないことに困っていた。
その様子を察した水都は、テーブルに並ぶカードを見て苦笑した。
「ああ、これはある意味難しい結果だね。内容を見てもいい?」
「お願いします」
「うん、初めてにしては悪くないよ。これはよくあるパターンだけど、知らなければ導き出せないものだからな。あとでまとめて解説するから、とりあえずそれで送信しといて」
「分かりました…………」
無念とばかりに、力なく送信ボタンを押した。
乙羽もまとめ終わったようだ。
〜相談内容〜
二千花ちゃん
デートをした男との未来
・過去【カップ8】
失礼な態度によって興味をなくした。
・現在【ソードのペイジ】
誰が良い出会いの相手か考えている。
・近未来【ソードの2】
一定の距離を保っている。
・最終結果【悪魔(逆)】
体の関係になる? 沼にハマる?
たぶん未遂。
・アドバイス【ペンタクル10】
他に良い人がいる。
〜まとめ〜
二千花ちゃんは警戒しながらも、虜にされてしまうかも……(。>﹏<。)
最初は興味がない状態で再スタートしますが、だんだんと相手のペースに乗せられてしまいます。
恋愛というより、都合の良い関係になってしまうのでオススメはできません。
他に良い人がいるので、ちゃんとした恋愛をしたいのならその人を探してみて!(^^)
「面白いテーマですね。仮定のテーマか」
「二千花ちゃんが聞いてみたいって言うから」
「この結果から察するに、意外に未練があるのか?」
「なんですか?」
二千花の鋭い眼差しが水都を突き刺す。
「失礼。こほんっ。僕の形式を意識して書いたのが伝わりますね。さすがの吸収力です。しかも僕の問題点だった硬さを顔文字で緩和する手法もいいと思います」
「真似してみたけど、うまくできたようで良かったわ」
「まとめ方はね。だけど、一番やっちゃいけないことをしてしまっている。まあある意味初心者あるあるだから、次に活かすようにしてください」
「残念。でも課題があるほうが燃えるわね」
二千花とは対象的に、落ち込む様子を見せない。
水都からすると、二人とも初めてにしては上出来の評価だった。
一方で夢義の様子を見ると、バキバキに目を見開いて携帯とにらめっこしている。
たまにカードを穴が空くほど見つめたかと思うと、パラパラと本をめくって何かを確認する。
都度、「うーん、うーん」と独り言を発していたかと思うと、「あ!」と破顔させる。
見ていて少し面白い。
さらに水都が注目したのはその集中力であった。
集中力が続かないタイプに思える夢義が、三人の中で最も集中している。
「お茶でも飲んで待っていようか」
「そうね」
「はい」
夢義が「おわったー!」と大声で報告したのは、それから約十五分後のことだった。
水都に届いた占い結果を確認すると、思わぬ内容にフリーズする。
水都の珍しい姿に、二千花と乙羽は興味をそそられた。
すぐに水都は「なんでもない」と答えて、いつもの言葉を発した。
「リッスン!」
占い結果は分かりやすさを重視しているため、極端なカードに設定しています。
次話で自分の考えと合っているか、答え合わせをしてみてください^^
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