ep.Ⅸ 愚者と模擬文章鑑定〈答え合わせ〉
「じゃあそれぞれのフィードバックをしようか。まずは二千花から」
〜相談内容〜
乙羽さん
仕事についてのアドバイス
・過去【戦車】
勝負・戦い・挑戦
・現在【女帝】
成果・才能・モチベーションが高い
・未来【皇帝】
積極的・実行力・向上心・男性?
・アドバイス【ソード4】
休むこと・一時停止
〜まとめ〜
乙羽さんには高い向上心があり、常に挑戦し続けています。
未来でも変わらず活躍しているので大丈夫です。
体にはお気をつけて。
「リーディング自体は悪くない。方向性は間違っていないし、内容の重要な部分を理解できている。まあ文章が硬いけど、これは少しずつ慣れていけばいい」
「ありがとうございます。文章量に不安があるのですが、水都さんならどうやって増やしますか?」
「今回の場合で言うと、読み解き方にポイントがある。二千花は【戦車】、【女帝】、【皇帝】の意味が全部同じものに感じたから困ったんだろう?」
「そうです」
「過去から未来にかけて意味が同じということは、それが答えなんだよ。実際、鑑定内容には二千花もその事実を書けている。ポイントは、同じ意味のカードが複数出ている理由だ」
一つは単純に、過去から未来にかけて同じ質、同じモチベーションと行動力で仕事をこなし続けている事実を示している。
もう一つが、
「"強調”だ。タロットにおいて、この強調を見つけることはかなり重要な点だと言える」
「すごく頑張っているとか、すごく才能があることを強調しているということですか?」
「今回の場合はそうだな。他のケースで言うと、人間関係の問題を占ったとして、これって大半は複数の問題があるよね? その中に強調ポイントがあれば、まず最初に手を付けるべきだったり、強く意識するべきだったりが分かる。占い師側も警告として相談者に伝えられるしな」
占い結果は情報量が多いため、相談者がすべての情報を受け取れないことは多々ある。
だから特に覚えておくべき内容を占い師が強調したり、緩急を意識したりするのは技術の一つだ。
「そしてこれだけ強い能動性の主張に対して、アドバイスが休めというものも重要だ。現実的に考えてみても、こんなパワフルはいつか限界がくる。だから休息も強調ポイントになるな」
「えっと、私の占い結果の範囲の先で、限界がくる可能性があるということですか?」
「そういうこと。未来の流れから、その先の未来を予測することも大事だよ」
「勉強になります」
リーディングの強調については、なかなか本やインターネットのサイトではお目にかかれない。
この一回のフィードバックだけで、この店に関われて良かったと心から思えるほどに、二千花は大きな価値を実感していた。
乙羽も手書きでメモをとっている。
夢義はうんうんと頷いていた。
たぶんあまり理解できていない。
「夢義は糖分をとっとけ」
「はーい」
トコトコとジュースを取りに席を立った。
「占い鑑定でも、現実的な思考はアリなのね」
「結局、現実ベースの説明が一番受け取りやすいですからね。ここはかなり塩梅が難しいんだけど、乙羽さんのは典型的なダメな例ですねー」
〜相談内容〜
二千花ちゃん
デートをした男との未来
・過去【カップ8】
失礼な態度によって興味をなくした。
・現在【ソードのペイジ】
誰が良い出会いの相手か考えている。
・近未来【ソードの2】
一定の距離を保っている。
・最終結果【悪魔(逆)】
体の関係になる? 沼にハマる?
たぶん未遂。
・アドバイス【ペンタクル10】
他に良い人がいる。
〜まとめ〜
二千花ちゃんは警戒しながらも、虜にされてしまうかも……(。>﹏<。)
最初は興味がない状態で再スタートしますが、だんだんと相手のペースに乗せられてしまいます。
恋愛というより、都合の良い関係になってしまうのでオススメはできません。
他に良い人がいるので、ちゃんとした恋愛をしたいのならその人を探してみて!(^^)
「一見すると良い内容なのですが、僕には現実の思考をベースにリーディングしているような気がします」
「否定はできないわね……」
「二千花から聞いた話をそのままリーディング結果として当てています。これ自体は別にダメじゃない。ただ、最終結果の【悪魔】は、明らかに二千花の性格から推察した様子が見られます。だからワードに自信が持てなかったのでしょう」
「乙羽さんにそう思われていたなんて、ちょっとショックです」
「ご、ごめんなさい! よく聞く話だからつい、ね」
「二千花がチョロいかどうかはともかく‐‐‐‐‐‐」
「チョロくありません!」
「失礼。今回お互いを占ったのは、『フラットな気持ちで占えるか』を確かめるためでもあったんだ」
「占い師は感情移入をしちゃダメというのは分かっていたけど、確かにこういうことも起こり得るものね」
占い師は人気商売であり、リピーターを獲得するのが目標の一つである。
リピーターを増やすということは、必然と仲良くなるお客さんが増えるということ。
仲良くなれば応援をする気持ちが芽生え、自身の感情に左右されるリスクが生じる。
今回の乙羽の場合、その人の傾向から占い外で推測をしてしまったのが問題だった。
「これも難しいところなんだけど、過去の情報から方向性の推測を立てること自体はダメじゃないんだ。例えば、過去にも関係をズルズルとしていたとかね。ただ今回の場合は、先入観でリーディングをしているからアウト」
「参考に、どういうところで感じられたの?」
「うーん、信じてもらえないと思うけど、人の話し方で感情ってなんとなく分かるでしょ? 僕は文字の書き方でもそれがなんとなく分かるんですよ」
「それは性格を読むのと同じ才能なのかしら?」
「まあ似たようなものですね。思考の傾向‐‐‐‐思考の癖を文字からも読んでいるんですよ」
「超能力者かなんかですか?」
「残念ながら超能力は持ってないねー。二千花の身近に例えると、本でも作者ごとの色を感じるでしょ? 表現の仕方やワードセンスなど。感覚的にはそれに近い」
「な、なるほど」
分かったような分からないような。
乙羽は理解を放棄している。
一方で、ジュースを飲み干した夢義が急に手を上げた。
「てんちょー! ムギの番はまだですか?」
「あと五分」
「待ってます!」
「ん。じゃあ話を戻すけど、ここまでで質問はある?」
「はい!」
また夢義が手を挙げる。
「なんだ?」
「占いでオススメするのはいいんですか?」
「…………君はたまに的を射たことを言うね」
「えへへー」
乙羽の鑑定結果には、『恋愛というより、都合の良い関係になってしまうのでオススメはできません。他に良い人がいるので、ちゃんとした恋愛をしたいのならその人を探してみて!』とある。
今回は、二千花がその男性を興味本位で聞いたという前提があったので、気にならなかっただけ。
「これに関しては、正解はないという前提を理解していてほしい。その占い師のスタンスや雰囲気によっても変わってくる。おふざけキャラが許される人と許されない人がいるでしょ? 占い師にも似たようなところがあって、結局は自分に合うか合わないかが最も重要だ」
「私は雰囲気的には合っていると思うのだけど、水都くんから見てどうかしら?」
「スタンスとしてはいいと思いますよ。ただ、相談者のニーズの把握や、伝え方の強弱も意識する必要があります。元カレとどうしても復縁したい相手に、別の人を強く推奨しても噛み合わないですからね。軽くジャブとして伝えて、相手の反応を見るくらいがいいでしょう」
「意識してみる」
「乙羽さんは僕と同じで人を見る目が養われているので、その方向を意識するといいかもしれませんね」
「ふふ、ありがとう」
「私はどういうスタンスがいいのでしょうか?」
「二千花はある意味占い師らしい占い師になれる。徹底的な第三者目線で、答えを純粋に欲する相談者と相性がいい。まあ占い師で稼ぐには苦難な道ではあるけどね。その辺は追々話そう。ただ、現状は客観的すぎて感情の理解が薄い。よく占い師は相談者に寄り添うべきだと言うけど、これは少し語弊があるんだ」
共感力と寄り添いは確かに必要なことである。
しかしそれは、気持ちの良い言葉を与えることではない。
「僕が大切だと思うのは『理解』だ。相談者の感情、ニーズ、現状、願いを理解することが大切だと思っている。理解ができれば、占い結果を伝えるのも自然と寄り添えるし、共感にも繋がる。でも多くの占い師はこの理解を後回しにして、 形だけの共感や寄り添いをしがちなんだ。まあ楽ではあるからね。二千花にはそうならないでほしいと思っている」
「分かりました。私にはまだその理解が難しいので、自分なりの見つけ方を探してみたいと思います」
「うん。ちょっとずつでいいさ」
「五分経った!」
いい感じで話が纏まったところで、KYな声が響く。
一応、話が終わって少し経ってからの発言だから、タイミングを読んでいたのであろうことが分かる。
「はいはい。とはいえ、夢義のはあまり言うことがないんだよね」
「夢義ちゃんの内容はなんというか、ちょっと怖いわね」
「水都さんが固まるのも分かりますね」
〜相談内容〜
てんちょー!
お店の占い!
・【魔術師】
・【ワンド10】
・【悪魔】
〜まとめ〜
てんちょーはすごい人で、みんなが頼りにする!
でもてんちょーはわあってなって、すっごく大変!
んー、お仕事以外でも大変な感じかなぁー??
いっぱい満たされるけど、それが苦難の塊
「テンションの高低差が怖いわね」
「いや、これはこれで面白いと思うよ………………自分の未来じゃなければ、ね」
「夢義さんは三枚をまとめて視ているんですね」
「んー、なんかそっちのほうが読みやすかった!」
「アドバイスはないのね」
「アドバイスがなくてもてんちょーは頑張る!」
「…………あってないようなものって意味かな……?」
「夢義さんの占いは、私や乙羽さんとはだいぶ違いますね。水都さんとも」
「直感極振りだね。この手のタイプは下手に知識を与えずに、自分で好きに学ばせるのが一番だ。僕が教えられるのは、占い師としての部分だけだね」
「はーーい」
水都の中にモヤモヤだけを残して、この日の模擬鑑定は幕を閉じた。
水都の脳裏に、笑っている魔女がしばらく残っていた。
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