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あなたの『謎』、聞きます  作者: 佳景(かけい)
第2話 遺書
23/62

―23―

 『たけちゃん』とのやり取りの後、今日一日のやる気を全部使い切ってしまった私は、炬燵の中でにゃん三郎と一緒にゴロゴロしていた。


 今日はもう『愚痴聞き屋』は終わりにしようかなとも思ったけど、元々そんなにお客さんの予約が入る訳でもないし、何となく「電話待ち」表示のままにしていると、少ししてスマートフォンがアプリの通知が入ったことを知らせる。

 

 スマートフォンの画面を見てみると、『ペンタブ』さんだ。


「すぐに話したい」ということだったし、私も『たけちゃん』とのことを『ペンタブ』さんに話したかったから、私はすぐに電話をかけた。


「はい」


 今日の『ペンタブ』さんはちゃんと眠れているみたいで、この間より随分しっかりした声で電話に出てくれた。


 その声は疲れた私を包み込むみたいな柔らかさがあって、私は不覚にもちょっとほっとしてしまう。


 電話越しだったけど、『たけちゃん』と話すことについて、無意識に怯えていたのかも知れない。


 私がさっき『たけちゃん』と話したことを『ペンタブ』さんに伝えると、『ペンタブ』さんは私の話をすっかり聞き終わってから言った。


「お疲れ様でした。暴言を吐かれたりはしませんでしたか?」

「大丈夫でしたよ。言うだけ言って、すぐに切っちゃいましたから」

「そうですか。それなら良かったです。『肉球ぷにぷに』さんを矢面に立たせてしまいましたけど、『肉球ぷにぷに』さんだけが嫌な思いをするのは、ちょっと申し訳ないと思っていたので……」


 そう言う『ペンタブ』さんの声には罪悪感がはっきりと滲んでいて、口先だけでなく本当に申し訳ないと思っていてくれたみたいだった。


 始まりは不本意だったけど、謎を話す相手が『ペンタブ』さんで良かったと、私は初めてそう思う。


「次の合図は、何の写真にしますか?」


 私から次の合図を訊いたことで、少しくらいは私の言いたいことが伝わっただろうか。


 伝わらなくても別に良かった。


 どこの誰ともわからない、もしかしたら一生会うことのない人に親しみを覚えるなんて、そんなことは無意味なことなのかも知れないし。









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