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あなたの『謎』、聞きます  作者: 佳景(かけい)
第2話 遺書
20/62

―20―

 せめて『たけちゃん』さん達がきっちり罰を受けてくれていたら、女の子も少しは浮かばれることだろう。


 でも女の子が余程やせ細っていたり、体に不自然な痣があったりしなければ、不登校気味の子供の自殺で片付けられて、虐待が発覚しないことは十分有り得る。


 女の子が書き残した文章は、ぱっと見虐待のことが書かれているようには見えないし、むしろ事が明るみにならなかった可能性の方が高い気がした。


 もし発覚していたら、『たけちゃん』さんはきっと私にあんな話をしなかっただろう。


 何もなかったから、呑気にあの妙な文章の意味を探ろうとしている――そう考えた方が自然だった。


 流石に虐待が発覚した後に、何事もなかったみたいに私にあんな話をしたとは思いたくない。


 やっていることは同じでも、無神経さが段違いだ。


「あの、何か私にできることはないでしょうか?」


 通報できるものならするけど、『たけちゃん』さんがどこの誰かもわからないし、本当に虐待が行われていた証拠もない。


 こんな不確かな情報しかないのに、通報なんてできなかった。


 でも何か、女の子の無念を少しでも晴らす方法はないだろうか。


 女の子はただ誰かに事実を知って欲しかっただけで、親を罰して欲しいとは思っていないのかも知れないし、私にそんなことをする資格はないこともわかっている。


 それでも、何か爪痕を残してあげたかった。


 メッセージに気付いたのは私と『ペンタブ』さんだけで、それがこのままただ消えていくのは悲し過ぎる。


 もういない女の子が、命と引き換えに残したメッセージなのに。


「できれば女の子の仇を討ってあげたいって言うか、あの人に一泡吹かせてやりたいんですけど」

「へえ、『肉球ぷにぷに』さんって、ぽわわんとした名前の割に、男前な性格なんですね」


 『ペンタブ』さんはちょっと意外そうにそう言った。


 何だか私の性格を誤解しているみたいだけど、私は見ず知らずの人にびしっと注意できたりするような、そんなかっこいい性格の持ち主じゃない。


 『ペンタブ』さん相手に変な見栄を張っても仕方がないから、私は正直に言った。


「お互い素性がわからない上に電話越しだから、ある程度強気に出られるだけですよ。まともな大人だったら、誰でも私と同じことを思うと思いますけど」

「僕も人並みに良識はあるつもりですから、一泡吹かせてやりたいという『肉球ぷにぷに』さんの気持ちはわかります」


 良かった。


 ちょっと腹黒いところもあるけど、やっぱり『ペンタブ』さんは基本的にいい人みたいだ。


 多分この人は、漫画さえ関わらなければ、まともな常識人でいられるのだろう。

 

 いっそ漫画家は廃業したらいいんじゃないかなと思っていると、『ペンタブ』さんが続けて言った。


「でも、ちょっと落ち着いて下さい。僕の推理が絶対に正しいという保証はありません。本当だったら事を荒立てようとは思わないでしょうが、もし間違っていたら少々面倒なことになるかも知れませんよ? それでもやりますか?」


 私は少し考えてみた。


 言われてみれば、『ペンタブ』さんの言う通りだ。


 つい思い付きで「一泡吹かせてやりたい」なんて言ってしまったけど、あまりにも考えなしだった気がする。


 でも『ペンタブ』さんの推理の通りにあの文章を読み解くと、きちんと意味のある言葉になるのは確かだった。


 私は本名であのサイトに登録している訳でもないし、『たけちゃん』を怒らせたところで、せいぜい悪い評価を付けられるくらいだろう。


 本気で調べようと思ったら、私を特定することは不可能ではないのかも知れないけど、そこまでして私を訴えたり、嫌がらせをしてくるとは考え難かった。


 それなら、見ず知らずの女の子のために何かしてみるのも悪くない。

 

 私は決意を込めて言った。


「やります。大したことはできないでしょうけど、何かいい方法ありませんか?」






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