77. ハーレム勇者凱旋
俺は、荒くれ冒険者から何とかロリコン疑惑を晴らして、アムルー冒険者ギルドに足を踏み入れた。
エントランスで酒を飲みながらたむろってた冒険者達は、一瞬、俺の方を見たが、直ぐに興味を無くし、再び、酒を飲み始める。
『アレ? 思ってた感じと違う……』
俺的には、俺がアムルー冒険者ギルドに足を踏み入れた瞬間、俺の周りに冒険者達が集まってきて、「お前、生きてたのか?」とか、「今まで、どこに居たんだ?」とか、質問攻めされると思ってたのに。
俺って、自分が思ってたより、アムルー冒険者ギルドで、人望が無かったのか……?
俺が唖然としながら突っ立ていると、シロが心配して話し掛けてきた。
「ご主人様、大丈夫ですか? みんな、ご主人様の事、知らないみたいですね?
本当に、ご主人様は、アムルー冒険者ギルド所属の冒険者だったんですか?」
シロが、俺の事を心配しながらも、疑いの目で見ている。
「その筈だ! 冒険者時代は、ここに毎日通ってたし、エントランスで冒険者が飲んだくれてる風景も懐かしく感じるし!」
「じゃあ、どうしてですかね?見た目が変わったとか?」
「見た目か……」
確かに、見た目は変わったかもしれない。
口の周りの肉は無いし、肉棒も皮余りが無い程ズル剥けになったし……。てっ、違うか!
それにしても、俺は12歳から30歳までアムルー冒険者ギルドに所属してたのに、誰1人として、俺の事に気づかないなんて有り得るのか?
俺は、暫く、本気で考える。
「ハッ! 解った!?」
「解ったんですか?」
「ああ、解った。流石、脳ミソが復活した俺は違うな!
本気で考えれば、普通に解るようになったのだ!」
「今までのご主人様は、5秒以上、物事を考えられませんでしたしね!
やっぱり、ご主人様は、大賢者なみに頭が良かったんですね!」
シロが悪意なく、ディスり褒めをしてくる。
「それは言い過ぎだと思うけど、俺、18歳ぐらいに見た目が若返ってるんだよ!」
「本当ですか?」
「本当だって! 俺が死んだのは、30歳なのに、今の見た目はどう見ても、若いだろ!」
「そう言われれば、そうですね」
シロは、俺をマジマジ見ながら答える。
「それに、肉も出来たてで張りがあるし、肌の色も、青磁器のように青白くツルツルで、とても人間ではないみたいだしな。
それから、運動不足のせいもあって、冒険者時代より、筋肉量が減って、シュッ! としてる感じがする。」
「僕は、30歳当時のご主人様を見た事ないから分かりませんけど、きっとそうなんですね!」
「ん? それから俺の髪の色は、茶髪だったような……今の俺の髪の色って、何色だ?」
「ご主人様の髪の色は、黒髪ですよ?」
シロが、俺の髪の色を教えてくれた。
「ハハハハハ! 髪の色まで変わってたのかよ!
そしたら、俺が俺だと、誰も気付かなくても仕方が無いよな!」
俺は、やっと合点がいった。
流石に、見た目が若くなって、髪の色まで変わってたら、誰も俺が俺だと気付かない筈なのだ。
別に、俺の人望が無さ過ぎる訳ではなかったのだ。
「それはいいですけど、ご主人様の目的は、自分の本当の名前を知る為に、アムルー冒険者ギルドにやって来たのではなかったのですか?」
シロが、難しい顔をして質問してきた。
「別にいいよ! それと、打ち合わせしてた設定は、全部無しな。
俺は新たに、新人冒険者として登録してもらうから!」
そう、出来れば俺は、新たな人生を送りたかったのだ。
俺が身バレしてしまえば、アムルー冒険者ギルドに利用されてしまうかもしれないし、動きにくくなってしまう。
俺の目標は、ハーレム勇者。
自由気ままなハーレム勇者は、しょうもないしがらみなど要らないのだ!
「ご主人様は、人間だった時の名前に拘りは無かったのですか?」
「全く無いな。俺、前世の記憶も持ってるし、元々、名前を2つも持ってたんだ。
まあ、その前世の名前も既に忘れてるという事は、名前に拘りなどなかったんだな……だったら、新しい種族になって生まれ変わった暁に、新たな名前を名乗った方が、カッコイイだろ!」
「白熊ですか?」
「それは無い!」
「白鯨?」
「それも無いから!」
「白鷲?」
「違う!」
「白骨?」
「もう肉付いてるし!」
シロによる白色尽くしが一通り終わった後、冒険者登録をする為に受付カウンターに向かった。
『俺は、冒険者時代の全てのしがらみを捨てて、新たな人生を歩むのだ!』
俺は、そう心に誓い、意気揚揚と一番可愛い受付嬢の前に立つ。
「お嬢さん、冒険者登録をしたいんだが!」
俺は顔を作り、歯をキラリとさせて受付嬢にお願いする。
しかし、口の周りに包帯を巻いてるから、受付嬢に見えなかったのはお愛嬌。
「冒険者の登録ですね! それなら5000ゴルお支払い願いますか?」
受付嬢は、俺の渾身のアピールを無視して、淡々と自分の仕事をする。
俺は仕方が無いので、魔法の鞄からすごすごと5000ゴルを取り出し受付嬢に払った。
「それでは、この用紙に必要事項を書いてもらえれば、晴れて、F級冒険者になれます!」
受付嬢は、多分、いつも言っているであろうセリフを言いながら、俺に用紙を渡してきた。
「ちょっと待って下さい!」
俺が、受付嬢から用紙を受け取ろうとすると、突然、シロが横から口を出してきた。
「何でしょう?」
受付嬢が、ニッコリ営業スマイルをしながら、シロに問いかける。
「ご主人様は、B級冒険者なのです!
僕と同じ、B級冒険者以外認めません!」
シロは、真面目な顔をして、受付嬢に注文する。
「お前、何言ってんだよ!」
「どんな方でも、最初は、F級冒険者からと決まっていますからね」
受付嬢は、子供に言い聞かせるように、優しくシロに説明する。
「それは、間違ってますね! 実際、僕はB級冒険者から、冒険者を始めてますし!
取り敢えず、ギルド長を呼び出してもらえますか!」
「オイ! シロ!」
「ご主人様は、黙ってて下さい! 僕が必ず、ご主人様を、元のB級冒険者にしてみせますから!」
シロが、なんかよく分からない方向に、スパークしてしまっている。
俺は、普通に、F級冒険者からで良かったのに。
というか、俺はまだ、目立ちたく無いのだ。
まあ、少しは目立ちたいという願望はあるが、それは、口の周りの肉と、切りすぎたチ〇コの皮が復活してからで良かったのだ。
それに、下手に目立つと、やたらと青白い俺の顔を見て、冒険者達に、俺がバンパイアだとバレてしまう危険性もある。
「兎に角、ギルド長を呼んで下さい!」
しかし、こうなったシロは止められない。
シロはやると決めたら、必ずミッションを成し遂げてしまう性質なのだ。
まあ、それだけの力も実力もあるし。
もう既に、シロは徐々に体から闘気を発し、受付嬢に対して気絶しない程度のプレッシャーを放っていたりする。
受付嬢の額からは、尋常でない汗が吹き出ている。
しかし、それでも受付嬢は引かない。
「規則は規則ですので!」
「シロ、その辺にしておけ!」
「嫌です! 早く呼んでこないと、どうなっても知りませんよ」
シロは、ますます受付嬢にプレッシャーを掛ける。
ここまで来ると、流石に受付嬢も、シロがとてもヤバい人物だと気付く。
受付嬢のお姉さん、ガグガク震えてるし……。
どんなに鈍い人物でも、対峙してるだけで、自分の体が勝手に震えてくれば、相手がどれだけヤバい奴か気付くというものだ。
「急ぎ、ギルド長を呼んできます!」
受付嬢のお姉さんは、すぐにその場から離れたくなったのか、逃げるようにギルド長を呼びに行ったのだった。




