65. 金色の魔王VSレスター王国軍(1)
俺とシロとオリ姫は、現在、第5階層に、せっせっと罠の設置をしている。
第5階層は、森と平原からなるステージで、戦いの舞台は、間違いなく平原になると思われるからだ。
まあ、5千人にもなる部隊を森に展開するのは不可能なので当たり前なのだけど。
しかし、俺達としても森では戦いたくない。
本来なら、少数精鋭の俺達は、森でゲリラ戦をするのが正解かもしれないが、こちらには、俺の不快な叫び声という奥の手があるのだ。
実際、奥の手と言っても隠してないけどね。
そして、俺達の目標は、レスター王国の兵士を1人残らず やっつける事。
やっつけるというと語弊があるが、兎に角、俺達と二度と関わりたくないと思わせなければならない。
その為には、1人も逃がす訳にはいかないのだ。
まあ、1人ぐらい逃がしてもいいが、俺は元日本人。やるからには完璧を目指したい。
そう、2番は駄目なのである!
そんな訳で、俺達は、レスター王国の兵士が森に逃げ込まないように、せっせっと森に蜘蛛の巣を張っているのだ。
一応、作戦を説明すると、レスター王国の兵士達を第5階層におびき出し、全ての兵士が第5階層に入ったら、シロの蜘蛛の巣を張って入口を塞いでしまう。
そして、すかさず、俺が叫ぶ。
多分、半分以上の兵士達が気絶するだろう。
俺の叫び声を効かなくする魔道具や、魔法も有るみたいだが、流石に、5千人分の魔道具は用意できない筈だし、5千人に、状態異常無効化の魔法を掛けるのは、例え、賢者が居たとしても無理な話だ。
俺達は、粛々とレスター王国の兵士を倒し、ハーレム勇者の俺様に逆らった罰を与えるのだ。
レスター王国は、他国のS級パーティーを雇ったらしいが、まあ、そいつらだけを気をつけていれば何とかなるだろう。
レスター王国には聖女もいるらしいが、そもそも俺に光魔法は効かないし。
どう考えても、俺達には負ける要素が見つからない。
しかし何故か、作戦に穴があるような気がして胸騒ぎがするが、もう時間が無いのでやるしか無い。
シロの話によると、レスター王国軍は、もう4階層まで進軍しているようなのである。
そして俺達はというと、現在、全ての準備を終えて階層入口付近で隠れている。
そうこうしてると、レスター王国軍が、第5階層に下りてきた。
先頭には、他国の冒険者の集団。
どうやら、20名ぐらい居るようだ。
その後から、レスター王国の兵士が現れる。
レスター王国の兵士は、どんどん膨れ上がり、シロの報告通り5000人ぐらい居るようだ。
全ての兵士が第5階層に到着したのか、殿に、また冒険者が20人程現れた。
冒険者の人数は、先頭の20名と殿の20名で、合計40名いるみたいである。
俺達は、レスター王国軍が、第5階層に到着したばかりで、隊列が整っていないうちに攻撃を仕掛けたい。
一応、第5階層の魔物は、そのままにしてるので、レスター王国軍や冒険者達は、現在、第5階層の魔物の掃討を行っているのだ。
「シロ! オリ姫! 予定通り行くぞ!」
「了解!」
「キュイ!」
シロとオリ姫は、元気に返事をする。
作戦は簡単。第5階層の入口を塞いで、俺が不快な叫び声を放つだけ。
俺達は、速攻で第5階層の入口を塞ぎ、俺は空高く飛び上がり、大きな声を出す。
「レスター王国軍の糞ヤロー! 今からお前達に、忘れられない黒歴史を刻んでやるぜーー! クワッハッハッハッハー!」
(リッチー語)
「レスター……オウコクノ……クソヤロウ……イマカラ……オマエタチ…ニ……ワスレラレナイクロレキシヲキザンデヤルゼ……クワッ……ハッハッハッハ……」
「 金色の魔王軍のリッチーが現れたぞ!」
「隊列を組め!」
「隊列が組めしだい、計画通り極大攻撃魔法を放つのだ!」
なんか、全く効いていない……。
「ご主人様ーー! その声では駄目ですよぉーー!
いつもの不快な声でお願いしますーー!」
地上からシロが、俺に指示を与えてくる。
何だと……。
俺の声は、不快な声ではないのか……?
ユニークリッチーだった時は、結構不快な声だった気がしてたが、パーフェクトリッチーに進化したせいで、声帯もリッチー目線で、結構パーフェクトになってしまったのか?
ちょっと嬉しい気分だが、今の状況では全く嬉しくない。
レスター王国軍の隊列が整ったのか、今まさに、俺に向けて極大攻撃魔法を放ちそうなのだ。
「ご主人様! 早く早く!」
シロが、必死に地上から叫んでいる。
俺の傍には、オリ姫は居ない。
オリ姫がいれば、極大攻撃魔法なんて簡単に防御出来るのだが、オリ姫も、シロと一緒に地上にいるのだ。
「ご主人様ーー!」
シロが瞳に涙を浮かべ、必死に叫んでいる。
「クッ! 仕方が無い」
俺は、顎の皮を、ガシッと掴む。
そして、そのまま思いっきり、皮を斜めに毟り取り、金色の上顎骨と下顎骨を露にさせた。
そしてそのまま、
「俺の皮を奪った恨み、晴らさでおくべきかーー!」
(骨語)
「ギィギィギィ……、ギィギィギィギィギィ……!」
俺の不快な叫び声が、第5階層に響き渡った。
ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァァ……!
それと同時に、レスター王国軍の兵士達の発狂した声が響き渡る。
そしてそのまま、レスター王国の兵士達は、泡を吹いたり失禁したりして、次々にバタバタと、ドミノ倒しのように倒れていった。
「糞っ! 何が起こってるんだ!
状態異常無効化魔道具が、殆ど効いてないぞ!」
「オイ! 貴様、起きろ!」
俺の不快な叫び声が効かなかった、高ランクのレスター王国軍の兵士や、レスター王国軍に雇われているS級パーティーの団体が騒いでいる。
多分、俺の不快な叫び声に耐えれる予定の兵士の人数が、計算と違ったみたいだ。
どうやら、俺の不快な叫び声は、パーフェクトリッチーに進化していたせいか、更にパワーアップしていたようである。
まあ、本来なら、リッチーである俺は、不快な叫び声は出せない筈だけど。
まあ兎に角、貴重な皮を剥いでまで放った、俺の渾身の恨みの言葉は、レスター王国軍の9割近くの兵士を、失禁失神再起不可能状態に追いやったのだった。
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