6. ユニークスケルトン
「ハッ!」
俺は突然、目を覚ました。
確か進化する為に、ステータス画面からユニークスケルトンをタップして、それから……。
俺は全てを思い出し、ゾッとした。
俺は、進化する間、ずっと無防備状態で寝ていたのだ。
俺は、たまたま何の価値も無い骨だったから助かったが、もし俺が、肉付きの魔物とかだったら、絶対に他の魔物に食べられていた筈だ。
しかし、骨だからと言っても危険な階層もある。
例えば、第12階層などで進化してたら、今頃 牙狼族にシャブられまくり、溶けて無くなっていたかもしれない。
カタカタカタ……。
考えただけで、身震いしてきた。
間抜けなシュールな音が響く。
骨だと、何をしても滑稽な感じになってしまうのが辛い。
まあ、俺は生きている。
不死者だから、実際、死なないけど。
取り敢えず、俺は体を確認してみる。
特に変わった所は、何処にもみられない。
本当に進化したのか?
俺は不安になり、ステータス画面を見てみる。
種族: ユニークスケルトン lv.1
職業: 勇者
称号: 不死者、思い出すのが遅すぎた男、骨なのに勇者、運の無い男、陰陽を極めた骨。
スキル: 超隠蔽、不死、鑑定
力 15
運 3
HP 30
MP 80
「嘘だろ……せっかく上げたレベルが落ちている……。
もう一度、レベル上げしなければならないのか……」
俺は自分のレベルを見て愕然とした。
第一階位光属性魔法も使えなくなってるし、第一階位火属性魔法も無くなってる。
唯一変わったのが、種族の名前だけ。
「ん……? 陰陽を極めた骨?」
称号の所を見ると、新たに新しい称号が加えられていた。
これって、もしや……光属性魔法の耐性が出来たって事か?
そうだ! 確か、俺の足の指先が欠損していた筈だ。
と、思ったのだが、いつの間にか、俺の欠損した指先は、元通りに治っている。
もしや、進化すると、今までウケたダメージが全て回復するのか?
まあ、よく分からないが、治ったならいいか……。
それによく考えたら、第一階位光属性魔法も、レベルダウンと共に無くなってるし。
しかし、ヤル気は出てきた。
俺はスケルトンなのに、光属性魔法が使えるようになったかもしれないのだ。
多分これは、スケルトン史上、初めての快挙に違いない。
自分だけ特別だと思うと、何だかとても嬉しい。
早く、レベル上げしなければ!
今は、光魔法がつかえないので、死霊系が多い第21階層では倒す敵がいない。
取り敢えず、第5階層でホーンラビットに、オシッコを引っ掛けられよう。
そして、直ぐに第一階位光属性魔法を使えるようになるまで、レベルを上げるのだ!
俺は再び、冒険者達が闊歩する第5階層に向かったのだった。
何でだ……。
俺は現在、森林ステージである第5階層の木陰で、朽ち果てた白骨死体の振りをしている。
早く、ホーンラビットにオシッコしてもらいたいのだが、ユニークスケルトンに進化したのと同時に、体も綺麗になってしまったのか、ホーンラビットが俺の足にオシッコしてくれなくなっているのだ。
ホーンラビットは、俺の近くに通るのだか、何故かオシッコをしてくれない。
だからと言って、ホーンラビットと直接対決してもレベル1の俺は、ホーンラビットに瞬殺されてしまう。
実際には、不死者だから死にはしないけど。
これ程、足にオシッコを掛けて貰いたいと思ったのは、生まれて初めてだ。
仕方が無い……アレをやるか。
俺は第5階層中を歩き周り、オシッコ後を探し回る。
有った!
木の根元に掛けられたオシッコからは、まだ湯気が出ており、ホーンラビットにオシッコされたばかりであるようだ。
俺は急いで、根元に掛けられたオシッコを足に擦り付ける。
これで準備OKだ!
俺はそれから、ホーンラビットの通り道である元居た場所に戻った。
するとどうだろう。
ホーンラビットが、湯水のように現れて、俺の足にオシッコをしに来るではないか!
こんなに嬉しい事はない。
俺は、ホーンラビットにオシッコを引っ掛けられて幸せだ。
最初は、あれ程イヤだったホーンラビットにオシッコを引っ掛けられる行為も、今では ある種の興奮さえ覚える程である。
「嗚呼……なんて気持ちがいいのだ……」
その、何とも言えない気持ち良さは、思わず、ホーンラビットを倒し忘れる程であった。
何をやってるのだ俺は……。
俺の目的は、レベル上げだったではないのか!
決して、ホーンラビットにオシッコを掛けられる事ではない。
目的より過程に のめり込む余り、自分がやるべき事を忘れてしまうとは……。
もしかすると、骨で脳味噌がないから、直ぐに、色々な事を忘れてしまうのかもしれない。
とか、思いつつ、俺はオシッコ最中のホーンラビットの首を、刃こぼれしている剣で切り落とした。
「はあぁぁぁ……久しぶりの肉だぁぁ……」
ホーンラビットの首が飛び、新鮮な血が滴る肉になった途端、スケルトン本来の本能が呼び起こされた。
俺はホーンラビットに、無我夢中でむしゃぶりつく。
やはり、肉は美味い。
暫く、第21階層で死霊の相手ばかりしていたので、尚の事ホーンラビットの肉が美味しく感じたようだ。
しかしだ、俺は やはり、アノ肉が食べたい。
「人肉喰いてぇー!」
(骨語)
「ギィギィギィギィギィー!」
先日行われた冒険者ギルドの調査でも原因不明と発表された、第5階層で聞こえてくるという不快な叫び声が、今日、久しぶりに聞こえたと冒険者ギルドに報告されたのは、また別のお話。
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