49. B級冒険者
「アッ! ご主人様、進化に成功したんですね!
真っ白な歯素敵ですよ!」
シロが、俺の真っ白な歯を褒めてくれる。
というか、シロは白色が好きなので、基本、白い物を褒める性質があるようだ。
「本当に、リッチーに進化してるのニャ!
魔物って、本当に進化するんだニャ」
ミーナが、俺の事をマジマジ見てくる。
「一応、言っておくが、俺は元人間で、しかも勇者なんだぞ!」
「またまたー」
ミーナは、全く信用していない。
「本当だ! 俺は元々、アムルー冒険者ギルド所属の冒険者だったんだぞ!」
「嘘ニャ」
「嘘じゃないわい! 俺はアムルー冒険者ギルド所属のB級冒険者だったんだ!」
「そしたら、アムルー冒険者ギルドのギルド長の名前、知ってるのニャ?」
「知ってるわい! えぇと……アレだ……アイツだ……」
顔はなんとなく頭に浮かぶが、なんて名前だったけ……。
「やっぱり知らないんニャ!」
「えっ! チョット待て、思いだすから……」
何故だか分からないが、アムルー冒険者ギルドのギルド長の名前が思いだせない。
「そしたら、いつも右端にいる受付の女の子の名前は?」
「それなら分かる! ええと……」
やはり、顔は浮かぶが名前が思いだせない。
「やっぱり、冒険者じゃ無かったのニャ!」
「そんな事はない! 俺はアムルー冒険者ギルド所属のB級冒険者だ!」
おかしい。おかし過ぎる。
1ヶ月くらい前までは、ギルド長の名前も受付の女の子の名前も覚えてた筈なのだ。
実際、S級ギルド『鷹の爪』の事は覚えてた。
まさか、長い間、脳ミソが無かった事が原因なのか?
確かに、脳ミソが無くなってからというもの、もの凄くアホになった気はしていた……。
「そんなに言うなら、ご主人様の名前は、何て名前なのニャ!」
「それなら簡単だ! 自分の名前なんだぞ!」
俺は自分の名前を考える。
というか、自分の名前を考えるものなのか?
「ご主人様?」
シロが、固まる俺を見て、心配そうな顔をしている。
ヤバいぞ……自分の名前が全く思い出せない。
こんな事があるのか?
前の世界の地球の事は、結構覚えているのだが、この世界の冒険者だった時の記憶が、殆ど思いだせなくなっているのだ。
「どうなのニャ?」
「分からない……」
「やっぱり、ご主人様が、アムルー冒険者ギルド所属の冒険者だったっていう話は、ウソだったんニャ!」
俺は、ミーナの言葉にグーの音も出ない。
今の俺は、人間だった時の自分の名前も思い出せないのだ。
これも全て、脳ミソが無かった時間が長かったのが、原因なのか?
今も、リッチーだから、脳ミソ無いけど。
ユニークリッチーから、金に眩んでプラチナスケルトンになってしまった時の事が悔やまれる。
あの時、ゴールドレッサーバンパイアに進化して、脳ミソを手に入れていたら、俺は、こんなおバカにならずに済んだのだ。
悔やんでも、悔やみきれない。
けど、まあ、いいか!
脳ミソ無いから、悔やんでも仕方がないし、どうせ、悩んでもすぐ忘れる。
というか、偉大なるハーレム勇者になる俺に、名前が無い方が問題ではないのか?
「おい! ミーナ、兎に角、俺は冒険者だった事は間違い無い!
実際、『鷹の爪』の事は覚えてたし。
ただ、脳ミソが無いから忘れてしまっただけだ!
で、どうだろうか。
俺に、相応しい、カッコイイ名前をみんなで考えるというのは!」
脳ミソが無いお陰で、滅茶苦茶、切り替えが早くなった俺は、みんなに提案する。
「ご主人様! 大賛成です!
僕も、偉大なるご主人様の名前が無いのは変だと思ってました!」
俺の提案に、すぐにシロが賛成する。
「キュイ!」
どうやら、オリ姫も賛成のようだ。
「それにしても、今まで名前が無くて、よく過ごせてこれたのニャ?」
ミーナが、俺に、当然の疑問を投げ掛けてきた。
「それは、今まで一人っきりだったし、シロも、アラクネじゃない蜘蛛だったからな!
たまたま、名前を呼ばれる機会が無かっただけだ!」
俺は、そのままの理由を返した。
「それで、ご主人様! どんな名前がいいんですか?」
シロは、よっぽど、俺の名前付けに興味があるのか、前のめりで聞いてくる。
「そうだな……やはり、偉大な勇者である俺に見合う名前じゃないと駄目だな!」
俺は背筋を伸ばし、俺的に威厳が有りそうな顔をして答える。
まあ、骨と皮しかないから、上手く表情が作れているか疑問だが。
「そしたら、白熊なんて名前はどうですか?
凄く強そうで、貫禄がある名前だと思います!」
「それって、名前というか、動物の種類じゃないのか?
それに、名前というか、二つ名ぽいぞ?」
「カッコイイのニャ! アムルーダンジョンを統べる白熊! いかにも魔王ぽい名前なのニャ!」
ミーナがニヤニヤしながら、シロが考えた名前に賛成する。
「どう考えても、却下だろ!」
俺は何度も、魔王では無いと言ってるのに、ミーナの奴、わざと言ってるだろ。
「そしたら、白鯨とかどうですか?
とても、雄大そうで威厳のある名前だと思います!」
「確かに、大きいから、雄大で威厳がありそうだが、それも動物の種類だろ?」
「カッコイイのニャ! アムルーダンジョンを統べる白鯨! いかにも魔王ぽい名前なのニャ!」
絶対に、ミーナは面白がっている。
「却下!」
「僕は、偉大で威厳のあるご主人様にピッタリの名前だと思ったんですけど……」
シロは、俺に名前を却下されて、とても悲しそうな顔をする。
というか、シロが、白色に強い拘りが有るのは知ってるのだが、いい加減、白色から離れて欲しいのだが……。
「シロは、白色の動物から思考を離してくれるかな……俺、そもそも白くないし」
「ご主人様は、真っ白ですよ!」
シロから、まさかの返答が返ってきた。
「何処が?」
「歯が、真珠のように真っ白で、素敵なのです!」
シロは、俺が喋る時、時折見える海外セレブのような真っ白な歯を、ウットリと見つめるのであった。
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