44. 抗えない運命
久しぶりの第22階層は、平和そのものだ。
至る所にスライムはいるのだが、火山スライムのように、無闇やたらに襲ってこない。
それに、第29階層のように暑くもなく、現在は、春の陽気に包まれている。
「やっぱり、第22階層に戻ってくると落ち着くな!」
「そうですね。 この階層は、僕達の理想郷ですね。
ご主人様がハーレムを作るにしても、打って付けの環境じゃないですか?」
「シロ、お前も中々分かってきたな!」
「当たり前じゃないですか。 僕はご主人様の下僕第1号ですよ!」
「キュイ!」
オリ姫も元気よく、『僕は2号だよ!』と、言ってる気がする。
言葉が分からないから、勘だけど。
それにしても、そろそろ人間の下僕が欲しい所だ。
チ〇コがないから、エロい事は出来ないけど……。
そんな事を考えながら、拠点のログハウスに着くと、ログハウスはとんでもない事になっていた。
「なんだこれ?! 何が起きたんだ?」
俺の力作のウッドデッキが破壊され、ログハウスの屋根も吹き飛んでいる。
「ご主人様、きっと、あの泥棒猫がやったんですよ!」
シロが、興奮しながら捲し立てる。
「猫耳族には無理だろ! ってか、第22階層から自力で、地上に戻れる訳ないし!」
「じゃあ、誰がこんな事やったんですか!
僕とご主人様との愛の巣を!」
「キュイ!」
俺とシロが、ああだこうだと推理してると、1人でログハウスの中を探索していたオリ姫が、何かを知らせてきた。
「ご主人様! オリ姫が、中に人が居るって!」
「猫耳か?」
俺達は、急いでオリ姫がいるログハウスの中に入る。
「キュイ!」
オリ姫が、俺達の元にやって来て、人がいる所に案内してくれるようだ。
「キュイ!」
「オリ姫が、この部屋の中に居るっていってるよ!」
俺達が部屋に入ると、そこには、黒髪の青白い顔をしたグラマラスな女が、傷ついてグッタリしている猫耳娘の髪を掴んで立っていた。
「誰だ?!」
「ご主人様! 猫耳女が、知らない人に殺られてますよ!」
「……蜘蛛女……勝手に私を殺すな……」
どうやら、猫耳娘は、ボロボロだが、死んではいないようだ。
それにしても、この女は誰だ?魔族? いや、悪魔か?
黒髪の女の尻尾には、矢印尻尾が生えている。
「お前は、悪魔か?」
俺は、チョットビビりながらも、矢印尻尾のお姉さんに質問する。
「悪魔かと問われれば、私は悪魔ね。
それで、貴方がこの家の主様かしら?」
悪魔の女は、薄ら笑いをしながら答える。
どうやら、俺達の事を軽く見ているようだ。
「悪魔が、俺達に何の用だ?」
「何の用だ? ですって、最近、上層で好き勝手やってる魔物がいるって聞いたから、様子を見に来たんじゃない」
「様子を見に来ただけなら、俺の家を壊す必要無いだろ!」
「アラアラ、凄んでみせても無駄よ。
貴方、足がブルブル震えてるじゃない」
そりゃあ、震えるだろ。
何せ、相手は悪魔なのだ。
数百年前に現れた魔王は、悪魔族だったと言い伝えられている。
という事は、目の前にいる悪魔が、魔王である可能性が高いのだ。
というか、悪魔族自体が、この数百年間確認されていないのに、何で、よりによって俺の縄張りのアムルーダンジョンに居るんだよ!
俺が、無い脳ミソをフル回転させながら色々考えているのを、目の前の悪魔は、薄ら笑いをしたまま面白がって見ている。
糞っ! 一体何なんだ!
しかし、このままでは終わらないだろう。
悪魔の女に、何が望みか聞くしかない。
俺達が帰ってくるまで、ここにずっと待ってたという事は、絶対、何かがある筈なのだ。
「で、俺達をどうしたいんだ?」
「そうね……この家の住人を皆殺しにしようと待っていたのだけど……気が変わったわ。
貴方達、私の下僕になりなさいな。
オリハルコンスライムをテイムしている金色のスケルトンと、何百年ぶりに誕生したアラクネに興味があるわ」
「断る!」
「何ですって?」
「断ると言った!」
俺は、もう一度、大きな声で言ってやった。
「それは、私に? それとも、魔王様に言ってるのかしら?」
「ま…魔王?! お前がラスボスじゃなかったのか?」
「あら、私がいつ、ラスボス? というか魔王様と言ったかしら?
私は、魔王様の直属の配下、四魔将軍の内の一人、アマイモン様の配下スルトよ」
な…何だと……。
こいつだけなら何とかなるかもと思ったが、こいつの上に、四魔将軍のアマイモンがいて、その上に魔王までいるだと……。
既に、オワゲーじゃないか。
これは、スルトという女悪魔の配下になるしかないのか……。
いやしかし、俺にはハーレム勇者になるという夢がある。
しかし、命には変えられないか……。
取り敢えず、こいつのステータスを確認してから考えよう。
思ってたより小物だったら、倒しちゃってもいいし、大物だったら配下になればいいんだし。
名前: スルト
種族: 悪魔族Lv.85
魔法: 第6階位闇属性魔法、第6階位火属性魔法
力 800
防御力 950
HP 830
MP 1200
はい、終わった。
第6階位闇属性魔法って何だよ!
第6階位って、賢者クラスだろ!
それに、MPなんか1000越えだよ!
勝てる訳が無いじゃん!
それに、こいつの上に、四魔将軍が4人居て、その上に魔王まで居るんだろ。
これは、大人しくこいつの配下になるしかないだろ。
「私のステータスを見たようね。で、どうするのかしら?」
悪魔の女は、薄ら笑いを浮かべる。
悔しいが俺は、こいつの提案を受け入れるしか、生き残る道が無いのだ。
「俺は、お前の配下にはならない!」
俺の口から、トンデモナイ言葉が出てきた。
「エッ?」
悪魔の女が、まさかの返事に驚いている。
というか、俺の方がビックリしている。
俺は、悪魔の女の配下になるつもりだったのだ。
早く正さねば、俺達は、悪魔の女に殺されてしまう。
「俺は、お前を倒す!」
エッ? 何言ってんの俺?
「正気かしら?」
いやいや、正気じゃないから!
「おうよ! 正気も正気! 勇者の本分は、魔王を倒す事だ!」
もしかして、俺の職業が勇者だから、絶対に魔王と敵対しないと駄目という設定なのか?
だとしたら、物凄く不味いぞ……。
俺は、絶対に、目の前にいる魔王の手下の化物と闘わないと駄目という事になる。
「勇者って、貴方の事かしら?」
「そうだ! 俺は、正真正銘の勇者だ!」
なんで、俺の口は勝手に動くんだよ!
「貴方、ふざけてるの? この私に向かって
……」
悪魔の女の薄ら笑いが消えた。
どうやら、本気で怒ってしまったようだ。
まあ、闇属性のスケルトンが勇者を名乗れば、誰しも おちょくっているとしか思わないであろう。
しかし、俺は勇者。
魔王を倒す宿命を帯びた、正真正銘の勇者なのである。
残念な事に、どんなに抗おうが、この運命だけは覆らなかったのだ。
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