4. 電柱
ティッティティーン!
突然、頭の中でレベルの上がる音が聞こえて来た。
ステータスを確認すると、lv.3になっていた。
剣を振り回すと、先程までより、少し早く振れるような気がする。
剣を魔法の鞄にしまい、その場でシャドーボクシングをしてみる。
やはり、思いの外、身体が軽い。
これならホーンラビットをもっと簡単に狩れるかもしれない。
1匹目は、足にオシッコを引っ掛けられながら倒したが、次は、オシッコを引っ掛けられる前に倒すのだ。
まだ、面と向かって倒す自信がないので、また、ホーンラビットの通り道で白骨死体のフリをする。
そして数分後。
俺の前にホーンラビットがやって来た。
ホーンラビットは、迷わず俺の足にオシッコを掛けてきた。
「……」
何でだ……何でホーンラビットは、俺の足にオシッコをするのだ?
1匹目を倒す前は、中々ホーンラビットは俺の前に立ち止まらなかったのに、2匹目は数分でやって来て、迷わず俺の足にオシッコした。
ハッ! もしや……俺の足から発せられている1匹目のオシッコの匂いに釣られて、ホーンラビットがやって来たのではないのか?
前の世界で飼っていた犬も、何処かの犬がオシッコした電柱に被せるようにオシッコをしていた。
という事は、俺の足は電柱と同じという事か……。
俺は、1回目にオシッコをされた時より、更に深いダメージを受けた。
しかし、俺は立ち直らなければならない。
折角、目の前に獲物がいるのだ。
俺は目の前のホーンラビットの首を刎ねる。
ティッティティーン!
再び、頭の中でレベルが上がる音がした。
ステータスを調べると、今度はlv.4になっていた。
取り敢えず、剣を振ってみる。
とても早く振れる。
調子にのって、剣を振り回していたら手からすっぽ抜けた。
やはり肉が無いので握力が弱い。
そうだ。肉だ!
肉を食わねば!
俺は再び、生のままホーンラビットを食べた。
やはり美味い!
「人肉食いてー!」
(骨語)
「キィキィキィー!」
再び、5階層に不快な音が響き渡った。
肉を食べれば食べる程、人肉が食べたくなる。
人肉の味、知らないけど。
そんな感じで、俺は白骨死体の振りを続け、甘んじてホーンラビットのオシッコを受け続けた。
やはり、簡単に狩れる誘惑には敵わないのだ。
実際、1匹目を狩るのに、まる2日間掛かったのに、俺の足に染み付いたホーンラビットのオシッコの匂いを利用すれば、数分でホーンラビットが狩れてしまうのだ。
肉の誘惑と、ホーンラビットにオシッコを掛けられるという屈辱を天秤にかけたら、俺の中で肉の誘惑が勝ったのである。
どうやら、スケルトンという種族は、肉の誘惑に抗えない種族のようだ。
しかしだ……。
ホーンラビットの肉を食べれば食べる程、人肉が食べたくなる衝動が抑えられなくなる。
『人肉食べてー!』
不快な音を発してしまうので、今回は心の中で叫んでみた。
もし人間を見たら、俺は、人肉を食べたくなる衝動が抑えられなくなると感じている。
だが、この階層には、少しばかり冒険者も探索しているのだ。
嫌でも、いつか冒険者に出会ってしまう。
出来るだけ、冒険者に出会わないようにしていたのだが、遂にその時は来た。
俺は、たらふくホーンラビットを食べて眠くなってしまったのだ。
ハッ! と気付いた時は、冒険者のパーティーが、俺の魔法の鞄を物色していた。
今の俺に、人肉を食べたいという衝動は現れない。
ただ、助かりたい。
俺の魔法の鞄を物色している冒険者は、見るからに格上だったのだ。
冒険者パーティーは、俺の事をタダの白骨死体だと思い込んでるみたいだ。
「ケッ! こいつロクなもの持ってねえな!」
シーフ風の男が、悪態をつく。
「真っ裸だから、既に別の冒険者に金目の物は剥ぎ取られてるのよ!」
魔法使い風の女が、俺の状態を見て推理する。
「刃こぼれしたボロボロの剣に、やたらと汚いマップラーしか持ってないし。それも、5階層までしかマッピングされてないから価値もそれ程無いな。
魔法の鞄も30キロしか入らないし、血がベットリ染み付いててコレは売れねーや!」
戦士風の男も、俺の持ち物を見てガッカリしている。
「行きましょ! もう金目の物は、誰かが奪った後よ!」
「そうだな!」
どうやら冒険者パーティーは、俺が大したものを持って無いと思い込み、諦めてくれたようだ。
マップラーに、超隠蔽を掛けておいて良かった。
こんな事もあろうかと、新たにマッピングした部分は、俺以外は見えないように隠蔽しておいたのだ。
俺のマップラーは、人間がまだ到達していない28階層までマッピングされている1000万ゴルオーバーのお宝なのだ。
居眠りしてたせいで奪われていたら、死んでも死にきれなかった。
骨なので、殆ど 死んでるようなものだけど。
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