36. 1億の服
俺が、どこぞの冒険者と戦っていた時、第12階層では、シロがアムルー冒険者ギルド最強パーティー『鷹の爪』と会っていた。
「シロさん! 頼まれてた牛50頭と、豚50頭、キッチリ持ってきやしたぜ!」
『鷹の爪』団長ラインハルトが、ヘコヘコしながら、魔法の鞄をシロに渡す。
「ウン、ありがとね!」
シロは、受け取った魔法の鞄を、そのまま自分の魔法の鞄の中に放り込む。
「で、お約束の品を頂きたいのですが……」
ラインハルトは、揉み手をしながら、シロにお伺いを立てる。
今のラインハルトには、アムルー冒険者ギルド最強パーティー、『鷹の爪』の団長の威厳など全く無い。
まあ、強いて例えるなら、絶対強者に屈服する、太鼓持ちの腰巾着と言ったところか。
「ええと、ラインハルトは、ミスリルの大剣で、アナスタシアは身体に合った服。それから、あの何だっけ……影が薄い侍……」
「ケンジです! シロさん勘弁して下さいよ!」
ケンジも、揉み手をしながら返答する。
「あ……そうそうケンジだった。ケンジは、ミスリルの日本刀だったね!」
「そうですよ!」
ケンジは、嬉しそうに返事をした。
「じゃあ、一番簡単なアナスタシアの服から作ろうか!
どんな感じにしたいか、イメージはある?」
「ハイ! こんな感じでお願いします!」
どうやら、アナスタシアは、しっかりイメージ図を用意していたようだ。
「成程、こんな感じね!色はどうするの?」
「妖艶な感じの、紫色でお願いします!」
「こんな色?」
シロは、指先から紫色の糸を出した。
「あの、申し訳ないんですけど……もう少し濃いめで……」
「全然問題ないよ! お代の牛と豚を貰ってるからね!
幾らでも、注文付けていいよ!」
「そ……そうですか! それなら、ここのレースの部分を白にしてもらいたいんですけど!」
「レースの形はどうする? このイメージ図だとよく分からないんだけど?」
「それはシロ様のお任せで!」
「じゃあ、こんなのはどうかな?」
シロはその場でレースを編んでみせた。
「素晴らしいです! シロ様は天才ですか!
その意匠でお願いします!」
「OK! そしたら、チャチャと作っちゃうね!」
シロはその場で、服を編み始め、ものの5分でアナスタシアの服を完成させた。
「一応、みんなに普段配ってる服の3倍の強度があるからね!」
シロは、サラッと恐ろしい事を言った。
今現在、アムルー城塞都市で出回ってるシロの服でさえ3000万ゴルもするのに、その服の3倍の強度があれば、1億ゴルは下らないだろう。
「ほ……本当ですか!?」
アナスタシアは、目ん玉飛び出る程驚いている。
「まあ、今回はたくさん貰ったからね!」
「ありがとうございます! 早速着てみます!」
アナスタシアはそう言うと、嬉しそうに草むらの方に行ってしまった。
「そしたら、次は、ラインハルトとケンジの刀だったね!
前に言ってた通り、型になる大剣と刀を出してみて!」
「あっしのは、この大剣です!」
「拙者は、この刀を!」
ラインハルトは、魔法の鞄から、ケンジは今使っている刀を、シロに渡した。
「フンフン、成程!」
シロは、副眼の一番右上の目で、ジックリ大剣と刀を観察する。
「このケンジの刀は、中側と外側の硬さが違うね!」
「よ…よくわかりますね?!」
「僕の副眼の一番右上の目は、ご主人様の下僕になってから、鑑定眼になったんだよね!
で、どうする?
中の芯を、鉄にする事も出来るけど?」
「そ…それでお願いします!」
ケンジは、何故かシロに土下座をした。
「了解! そしたら最初に刀の芯を作るね!」
シロはそう言うと、土魔法で、刀の芯を成形する。
「こんな感じかな?」
そして、魔法の鞄から粘土を取り出し、その芯に粘土を隠れるまで盛っていった。
そして、盛った粘土を火魔法と風魔法で乾燥させる。
「乾いたかな?」
シロは、独り言を言いながら、糸で丁寧に乾いた粘土を真っ二つに切った。
「うん! いい感じ!」
シロは、中に入れていた土魔法で成形した芯を取り出し、再び2つに割った粘土を重ね合わせ、中に鉄スライムの死骸を流し込んだ。
「シロ様! どんな感じでしょう!」
そうこうしてると、シロが作った服に着がえたアナスタシアが、草むらの中から出てきた。
「いい感じだよ! アッ、アナスタシア、その粘土の塊を火魔法で炙ってくれるかな?」
「エッ! あっハイ!」
アナスタシアは、シロに言われるまま、鉄スライムの死骸を流し込んだ粘土の塊を炙り出す。
シロはその間に、ラインハルトの大剣とケンジの刀を粘土で型取りをする。
そして、チャチャと乾かしたら、シロは、糸を使って丁寧に粘土型を真っ二つに切っていく。
「良し準備完了!」
「アナスタシア、乾いた粘土を割って、中から鉄の芯材を持って来て!」
「ハイ、畏まりました!」
アナスタシアは、先程まで炙っていた粘土を叩き割り、中に入っていた鉄の芯材を取り出し、シロに渡した。
「良し、じゃあ、ラインハルトの大剣と、ケンジの刀で作った粘土型に、ミスリルスライムの死骸を流し込むよ!」
「「お願いします!」」
ラインハルトとケンジの返事が、見事にシンクロした。
ラインハルトの方は、2つに割った粘土型を張り合わせ、持ち手の方からミスリルスライムの死骸を注ぎ込み、ケンジの型の方は、半分の型にタイ焼きを作る感じで、ミスリルスライムの死骸を流しむ。
「ヨシ! チョット固くなって来た。ここでケンジの刀の方に、鉄の芯金を入れちゃいます!」
「オオォォーー!」
よく分からないが、ケンジが唸っている。
そして、鉄の芯金を入れたら、もう片方の型を合わせ、柄をつける部分を上にし、ミスリルスライムの死骸を流し込む。
「じゃあ! 一気に乾燥させるよ!」
シロはそう言うと、粘土型を、火魔法で一気に炙った。
そして、5分後。
「もういいかな?」
シロが、炙ってた粘土型を叩き割ると、中から、見事なミスリルの大剣と日本刀が現れた。
「出来たよ! 後は研いで終わりだけど、研ぐには追加料金が必要だよ!」
「「お願いします!」」
ラインハルトとケンジの返事が、再び綺麗にシンクロした。
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