33. 肉の欲望は何よりも勝る
「ただいま! ご主人様! お土産の牙狼族の死体をたくさん持ってきたよ!」
俺が、ウッドデッキから湖を眺めていると、シロが帰ってきた。
俺はシロが留守をしていた2日間、ずっと、これからの計画について考えていた。
俺の計画は、至って簡単だ。
体に肉を付けて、ハーレムを築く事!
しかしだ。
聖スケルトンになって、鬼畜な考えが出来なくなってしまった俺は、どうしても考えの途中で、ハーレムを築く事を否定してしまうのだ。
もう、聖スケルトンは耐えられない。
悪いスケルトンになりたい。
3秒後。
「やっぱり、悪いスケルトンは駄目だよね!」
このように、悪い事を考えると、すぐに正しい考えに書き換えられてしまうのだ。
「ご主人様、ますます顔色が悪くなってるね。
こんな時は、お肉食べて忘れようね!」
俺を心配したシロが、肉をBBQコンロで焼き始めてくれた。
「ご主人様! 美味しそうに焼けてきたよ!」
「ああ…」
「ご主人様が、大好きな極厚レアステーキだよ!」
「ああ…」
「ハイ。ご主人様、お肉だよ!
ア~ンして!」
俺はシロに言われるまま、口を開け牙狼族のレアステーキを食べる。
「肉うめぇーーーー!!」
俺は肉を口に含んだ途端、一瞬にして理性を失ってしまう。
俺は今まで、いったい何をグズグズ悩んでいたんだ!
肉さえ食べれば、全ての考えが、吹っ飛んでしまう!
「ほら、いっぱいあるから、ジャンジャン食べちゃお!」
俺は、シロに勧められるまま、肉を食べる。
「ウヒョー! 肉! 肉!」
俺の肉への欲望は止まらない。
肉の欲望は、清い心も吹っ飛ばす!
スケルトンは、何よりも、肉への欲望に勝てないのだ!
スケルトンの欲望の1番は、肉!
2番目も肉!
3番目も肉!
4番目は、ハンバーグ!
5番目は、ユッケ!
そして、99番目までが肉料理で、
聖スケルトンである、今の俺の欲望の100番目ぐらいに、良い行いをしなければならないという欲求だったりする。
なので、肉さえ食べていれば、聖スケルトンの清い感情に引きずられる事はないのだ。
「よし! シロ!牙狼族の肉ををジャンジャン焼いて、焼肉弁当を作ってくれ!
そして、ミスリルスライムを倒しにいくぞ!
そして、サッサと聖スケルトンの呪縛から逃れるのだ!」
俺は、ステーキをガッツきながら、シロに命令する。
「了解! 少し待っててね! スグに焼肉弁当作っちゃうから!」
そして、俺とシロは、焼肉弁当(焼いた肉を、ただそのまま魔法の鞄に入れただけの物)を携え、ミスリルスライムの狩り場に向かった。
ピュン! ピュン! ピュン!
「肉うめぇーー!」
俺は焼肉弁当を食べながら、次々にミスリルスライムにエアーバレットを撃ち込んでいく。
シロが、アラクネに進化したお陰で、ミスリルスライムを簡単に捕捉出来るのだ。
「クッ! シロ、肉が切れてきた……」
「了解!」
シロが魔法の鞄から、箸で直接レアステーキを摘み、俺の口に向けてそのまま投げ飛ばす。
俺は、シロが飛ばしたレアステーキを口でキャッチする。
「肉うめぇ~!」
俺は、肉エネルギーをチャージし、ますますミスリルスライムを倒すスピードが上がる。
俺はこんな生活を、2週間続けた。
そして、
ティッティティ~ン!
頭の中でレベルが上がる音がした。
スグにステータスを確認する。
種族: 聖スケルトン lv.50(進化可能)
職業: 勇者
称号: 不死者、思い出すのが遅すぎた男、骨なのに勇者、運の無い男、陰陽を極めた骨。
スキル: 超隠蔽、不死、鑑定
魔法: 第4階位光属性魔法。第4階位火属性魔法。第4階位闇属性魔法。第4階位風属性魔法。
力 25
運 50
HP 200
MP 450
「よし! 進化可能になっている!」
俺はスグに、鑑定で何に進化出来るか調べてみる。
[聖スケルトンから、聖リッチーorパーフェクトスケルトンに進化]
聖リッチーは、絶対に却下だ!
また、女冒険者にイタズラ出来ない日々を過ごすなんて、罰ゲームでしかない。
となると、俺が進化できるのはパーフェクトスケルトンしかないな……。
ていうか、パーフェクトスケルトンって何なんだ?
俺は、鑑定で調べてみる。
[パーフェクトスケルトンとは、スケルトン種の究極の形態。パーフェクトスケルトンに進化出来た者が思う、全てのスケルトンの中から、いいとこ取りした、パーフェクトなスケルトンになれるのです]
「な……なんだって! という事は、ゴールデンスケルトンの運の良さ、プラチナスケルトンの強靭な体、そして、聖スケルトンの歯の白さを得た、究極のスケルトンに進化出来るという事か!?」
[その通りです]
俺は、鑑定の返事を聞いた後、その場でスグに、ステータス画面に浮かび上がっている、パーフェクトスケルトンの文字をクリックしていた。
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