30. 立場逆転
シロが胸を反らし、小ぢんまりとした丘の頂上のサクランボを触って欲しそうに、俺の事をつぶらな瞳で見つめてくる。
しかし、真っ赤な8つの眼で、ジッ! と見つめられると、チョット怖い。
俺が骨じゃなければ、オシッコをチビっているところだ。
俺は、そんな、シロによる幼女にあるまじきエロい攻撃を躱しつつ、シロのステータスを鑑定で確認してみた。
名前: シロ
種族: アラクネLv.1
称号: 編み物上手、サクランボクリクリされたい幼女。
スキル: 自在糸、編み物、料理
魔法: 第1階位風属性魔法、第1階位土属性魔法、第1階位火属性魔法、第1階位水属性魔法。
力 250
HP 320
MP 250
なんか凄い事になってる。
シルク糸と粘着糸が無くなって、自在糸になってるし、多分、これはどんな種類の糸でも出せるって事だろう。
それから、魔法まで使えるようになってる。それも四属性もだ。
火属性と水属性は、元々料理スキルをゲットしていたから、それに派生して獲得した魔法のような気がする。
料理には、火と水は、絶対必要だしね。
そうじゃなかったら、蜘蛛種が、火魔法を習得する筈が無いのだ。
アラクネであるシロが誕生するまで、蜘蛛種最強と言われていたレッドタランチュラだって、弱点だった火魔法を浴びせられ続けられている内に、いつの間にか耐性ができ、最終的に火属性魔法まで、使えるようになったと言われている。
シロの場合は、料理する為に、普段から火を使ってるから、火の耐性がいつの間にかついてしまっていたのだろう。
毎日、牙狼族の肉を焼いて食べてたし。
それから、力とHPとMPも、Lv.1から凄い事になっている。
というか、レベルが同じだったら俺より、シロの方が相当強いんじゃないか?
ご主人様である俺と、下僕のシロとの上下関係が、強さだけで言ったら完全に逆転してしまっているし……シロが、この事に気付かない事を祈るしかない。
じゃないとシロに、サクランボクリクリを強制的にやらされてしまう。
まあ正直な所、シロのサクランボを、クリクリしてみたい気もするのだが……現在は、聖スケルトンなので出来ないというのが本当の所だったりする……。
そんな訳で、シロの「サクランボクリクリして欲しいよ」攻撃を避けつつ、俺はレベル上げに精を出す。
というか、シロは、ステータス上の実力だけではなく、実際の実力までも何十倍も跳ね上がっていた。
今までのシロは、蜘蛛の巣の罠を掛けて、ミスリルスライムを捕らえていたのだが、アラクネに進化したシロは、普通に糸を指先から飛ばしてミスリルスライムを捕らえているのだ。
ネームドシルクタランチュラだった時のシロでは、素早いミスリルスライムを、糸を飛ばして捕らえる事は出来なかったのだ。
しかし、アラクネに進化したシロは、難なくミスリルスライムを糸で捕らえている。
シロ自体も素早くなった事もあるが、どうやらシロは、放った糸に無意識で風魔法を掛けているようである。
風魔法が掛けられた糸は、スピードを増す。
しかも、糸が途中でミスリルスライムが避けた方に曲がったりもするのだ。
こうなってくると、ミスリルスライムを捕えられない筈が無い。
それから、糸をお尻からだけではなく、指先からも出せるようになっているようである。
それも、両手の10本の指先から。
シロが本気になったら、捕まえられない者など居ないかもしれない。
例えば、シロが格上の魔物とかに出会っても、糸で簀巻きにすれば普通に逃げる事だって出来る。
ハッキリ言って、殆ど無敵だ。
冒険者なんかが、シロと遭遇したりしたら悪夢でしかない。
会ったら最後、絶対に逃げられないのだ。
まあ、シロは悪いアラクネでは無いので、無意味に冒険者を簀巻きにする事は無いけどね。
そんな感じで、俺のレベル上げは順調だ。
今日1日だけで、レベルが2つも上がった。
俺のレベルは、現在Lv.45。
順調にレベルが上がっていると言える。
早く悪いスケルトンになりたい!
もう聖スケルトンなんて、懲り懲りなのだ。
「ハーレムを作れるなら、悪でもクズでも何にだってなってやる!」
俺は思わず、興奮し過ぎて叫んでしまう。
しかし3秒後には、心が浄化されて、穏やかな気分になってしまった。
「ウン! やっぱり悪い事したら駄目だよね」
「糞っ! 何言ってんだ俺!」
3秒後。
「糞なんて、汚い言葉を言ったら駄目だよね」
「あぁーー!もうヤダ!」
3秒後。
「否定は駄目! Yesは人生を変える魔法の言葉だよ」
埒が明かない。悪い考えは、全て良い考えに書き換えられてしまう……。
俺が、苦悩で悩んでいると、シロが俺に話し掛けてきた。
「ご主人様、悩んでるところ申し訳ないんだけど、進化したらお腹が減っちゃった!
ちょっと、上層で腹ごしらえしてきていい?」
「ああ……」
俺は、この時、苦悩に打ちひしがれていた事もあり、何も考えずにOKしてしまった。
「じゃあ、行って来ます~」
この何気ない俺の返事が、アムルーダンジョンは疎か、アムルーダンジョンが有るハルマン王国をも震撼させる大事件になってしまうとは、
この時の俺には、考えつかない事であった。
何度も言うけど、脳ミソ無いしね。
ーーー
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