23. 純白パンティー
キュイーーーーン!
俺は、シロから振り落とされないように、必死に掴まっている。
「シロ……ちょっと、吐きそう……」
「キュイ!」
「なんだって、『骨だけだから、吐くものないでしょ!』だって……」
いつの間にか、シロの奴も言うようになったものだ。
しかし、確かに骨である俺には、吐くものなど何もない。
実際、肉を食べても、食べた物が何処に行ったか分からないし、
本来なら、骨だけなので、食べた物が透けて見える筈なのだ。
何故だ?
う~ん……脳ミソ無いから分からん。
そんな感じで、必死にシロにしがみついていたら、第12階層に到着した。
滅茶苦茶、久しぶりに来た気がする。
1度、シロが、ネームドシルクタランチュラに進化したばかりの頃、1人で狩りに行かせたっけな。
今回も、シロにお遣いを頼めば良かったのだが、今の俺はリッチーでは無く、お肉大好きのスケルトンなのだ。
肉の為なら、何処にだって行く。
「肉ぅーーーー!」
「ギィギィーーーー!」
(骨語)
俺は、肉への衝動が抑えきれなくなり、思わず叫んでしまう。
と、それと同時に、第12階層に居た全ての牙狼族が失神した。
おっ! 不快な叫び声が復活してる。
スケルトンになって飛べなくなったが、代わりに不快な叫び声が復活していた。
そんな事より、
「ウッヒョー! お肉祭りだー!」
俺は欲望を爆発させ、その辺に転がっていた牙狼族にむしゃぶりつく。
「うめぇーー! いつもよりうめぇーー!」
俺の口は止まらない。
「よく分からんが、いつもより美味いぞ!
肉の味がする!
……ん? 肉の味……?」
俺は、一瞬、止まって考えたのだが、
目の前の肉の誘惑に負けて、考えるのを止めた。
まあ、脳ミソ無いから5秒しか考えれないけど。
そして10分後。
俺は、牙狼族をまる一匹、頭の先から尻尾まで食べ終え、お腹いっぱいになって冷静になる。
「肉の味がしたな……」
そう、いつもより肉が美味しく感じたのは、肉の味がしたからなのだ。
俺はスケルトンになって以来、食べ物の味が感じられなくなっていた。
舌が無かったから、当然だけど。
これが、プラチナスケルトンになった特典なのか?
やはり、プラチナカードは、ゴールドカードより1つ上の価値があるようだ。
「まあ、プラチナカードホルダーは、美食家が多い筈だから、当然の特典だな!」
と、俺は納得した。
でだ。これは、アレだな。
調味料が必要だな。
プラチナ会員の洗練されたスケルトンには、食材の味そのままとか、野蛮な味は似合わない。
という訳で、
「行くぞ! シロ!」
「キュイ!」
シロは、元気に返事をする。
「冒険者から、調味料を奪いに!」
「キュイ?」
俺は、首を傾げるシロに飛び乗り、第5階層を目指した。
第5階層を探索している冒険者は、それほど多くはないが、それなりにいるのだ。
そして何より、第5階層は森林エリアで、広大である。
殆どの冒険者が、野営の準備を持ってきているので、調味料などを常備してる場合が多いのだ。
そうこうしてると、第5階層に着いたので、俺は、早速、思いっきり叫ぶ。
「冒険者の皆さん! 調味料を貸して下さいね!」
(骨語)
「ギィギィギィギィ! ギィギギィギィギィギィ!」
それと同時に、近くにいた魔物達が、バタバタと失神していく。
『俺は、しっかりと、調味料を貸してとお願いしたからな』
これで、俺は盗人ではなくなる。
まあ、冒険者に骨語が理解できたかは、知らないけど。
「よし! シロ、人間を探せ!」
「キュイ!」
シロは、突然、方向を変えて猛ダッシュする。
「シロさん……そんなに急がなくてもいいよ…ゲホッ……」
俺がシロにしがみつき、グロッキーになっていると、3分程でシロが立ち止まった。
「オェ…死にそう……」
「キュイ!」
「…お……冒険者パーティーを見つけたか……」
俺は、フラフラしながら、何とかシロから降りる。
倒れている冒険者パーティーは、戦士風の男が1人に、武道家ぽい男が1人、神官の男が1人に、魔法使い風の少女が1人に、シーフぽい女が1人の5人編成みたいだ。
俺は取り敢えず、1人1人の魔法の鞄を物色していく。
「おっ! 結構、もってるな!」
冒険者達は、調味料の他にも、食材やらワインやらたくさん持っていた。
全部、奪ってしまいたい気持ちに駆られたが、半分だけにしておく、俺は盗人ではないし。
あくまで、借りるだけ。
借りても、返さないけど。
ん? なんだって? それはいけない事だって?
そしたら、何故、ヤンキーは借りた金を返さないの?それと一緒じゃない?
ん? それが駄目だって?
だけど、「醤油を貸して」と言って、返す人はいないよね。
俺がやるのは、それ。
『日本の常識では、食材は借りても返さなくてもいいのだ!』
実際、「醤油を貸して」って、言ってる人、見た事ないけど。
そんな感じで、食材をたらふく借りていると、魔法使いの少女のスカートが、腿の辺りまでめくれ上がり、やわ肌が露になっている事に気付いた。
「こ……これは……元に戻さないと駄目だよね。
何せ、俺は、プラチナ会員の紳士スケルトンだし」
俺は、自分に言い聞かせて、恐る恐る、魔法使いの少女のスカートの端を摘んだ。
そして、大袈裟によろけるフリをしてスカートを捲り上げ、中身を見た。
「じゅ…純白パンティだと!」
俺は思わず、本当によろけてしまう。
こ…これは、あれだな……。
この娘は、具合が悪いんだ。
何せ、道端に倒れているのだから。
これは、骨紳士として、介抱しないといけない。
俺は、失神している魔法使いの少女を持ち上げ、草むらに連れ込んだ。
ーーー
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