2. 人肉食べたい
兎に角、今の状況を分析しよう。
俺はスケルトン。
勇者だけど、滅茶苦茶弱い。
筋肉が無いから、力もない。
ダンジョンなので、俺以外の魔物も居るが、何故だか俺は襲われない。
魔物の世界は弱肉強食だけど、俺は肉が無いので、魔物も俺を襲う理由が無いのかもしれない。
その点だけ、骨になって良かったと思う。
今の俺は、このダンジョンで最弱だ。
多分、スライムにだって負けてしまうだろう。
いや、負けはしないか……なんたって俺、不死者だし。カタカタカタ!
笑うと、何とも言えない間抜けな音がした。
もうヤダ! 肉が欲しい!
というか、無性に肉が食べたい。
これはもしかして、スケルトンの性質なのか?
確かに、ダンジョンで遭遇するスケルトンは、やたらに生者に固執する。
特に人肉が食べたい気がする……。
この欲求は抑えられないのか?
人を食べたら、益々魔物じみて、人間に戻れないくなってしまうのでは無いか?
兎に角、人間は食べない。
これだけは絶対に守るべきルールだ。
で、どうする。
俺は肉が食べたい!
どういう訳か俺の思考は、肉から離れられない。
肉の事を考えないでおく事は、どうやらスケルトンには無理な話らしい。
「まあ、肉を食べたら、体に筋肉が付くかもしれないからいいか!」
肉中心の思考を受け入れたら、気持ちが楽になった。
それよりこれからの事だ。確か、魔物には進化というのがあった筈だ。
ゴブリンが、ホブゴブリンになり、その次に、オーガやゴブリンジェネラルになったりする奴だ。
進化は個体によって違う。
その個体が歩んだ道筋で、色々な種族になれる。
で、スケルトンが進化すると、どうなるのか?
多分、骨が無くなるとゴーストになり、魔法が得意ならリッチーになったりする筈だ。
で、肉を付けるとグールになるのか?
グールが進化するとスケルトンになると思うので、グールは、スケルトンが退化した姿かもしれない。
まあ、よく分からんが、兎に角、魔物を沢山倒して肉を食おう。
魔物の進化の道筋は、歩んだ道筋で決まるというし。
肉を沢山食べれば、肉付きの魔物に進化できるかもしれないし。
人間に戻れなかったとしても、人型の上位魔族になれれば、ハーレムは作れるのだ。
この時の何気ない決断が、俺の波乱な人生を決定づけるとは、今の俺には分からなかった。




