16. 羊スライム
俺は木をカットして、ベッドのフレーム作りをしている。
トリプルベッドを作ろうとしていたのだが、思わずオクタプルベッドのフレームを作ってしまった。
因みに、オクタブルは8を意味するらしい。
これは鑑定で調べたので間違いない。
これでハーレムを作った時に、同時に7人の相手ができる。
「早く、肉を。肉棒を手に入れなければ!」
俺は必ず肉を手に入れる事を、今日ここに誓った。
でだ。俺はベッドのマットを作らなければならない。
ベッドのマットの材料は、羊スライムを使う事にする。
羊スライムは、程々の弾力があるスライムで、最高級ベッドのマットに使われるスライムである。
そして、その羊スライムなのだが、アトレシア大陸北西部にあるオーランド共和国にしか生息していないと言われているのだが、何故かアムルーダンジョンの第22階層にも居るのだ。
俺は早速、羊スライムが生息している平原に向かう。
「おっ! たくさんいるな!」
平原には、数百頭の羊スライムがボーッとしていた。
羊スライムは、最高級品である。
一匹10万ゴルで取引されているのだ。
俺は思わず目が眩む。
ここにいる羊スライムを全部捕まえて、街で売ったら幾らになるんだ?
俺は思わず数えてしまう。
数分後。
358匹いる。
全部売ったら3580万ゴル。
日本だったら、マンションが買えてしまう。
しかし、俺はユニークリッチーだから、街に行けないので、お金に変えられない。
しかし、俺はお金が欲しい。
俺ってこんなに拝金主義者だったっけ?
ちょっとおかしい。
今の俺には、羊スライムがお金に見えるのだ。
俺は冒険者時代、宵越しの金は持たぬ散財家だった。
稼いだ金はその日に使う、典型的な冒険者だったのだ。
確かに、お金は好きだったが、これ程では無かった筈だ。
「アッ……そう言えば……ゴールデンスケルトンになった時、リッチーが俺の周りをやたら飛んでいたな……まさかな……」
俺は適当に、風魔法を使って羊スライムを倒して、魔法の鞄にしまった。
「これだけあれば、マットに使うのに十分だな」
俺はそのまま湖畔のログハウスに戻ろうとしたのだが、体が動かない。
「何が起こっているのだ?」
俺の右手が勝手に動いて、羊スライムに杖を向ける。
「おい! 嘘だろ?!」
そして俺は、第一階位風属性魔法ウィンドーカッターを羊スライムに向けて放っていた。
暫くした後、平原にいた羊スライムが皆殺しになっていた。
「ウッヒョー! お金だお金!」
そして俺は、小躍りしながら魔法の鞄に羊スライムの死骸を入れていた。
しかしながら、358匹もの羊スライムは魔法の鞄に入りきらない。
「糞! 入らない! お金が消える!」
そう、ダンジョンで死んだ魔物や人間は、暫くすると、ダンジョンに吸収されてしまうのである。
「お金お金お金お金……俺のお金がぁーー!」
どうやら俺は、リッチーに進化したせいでお金の亡者になってしまっていたようである。
やっと、肉の欲求から解放されたというのに、今度は、お金の亡者になってしまうなんて……。
「まっいいか!」
お金は有っても困らないし。
ゲットした羊スライムの死骸は、家に置いとけばいいし。
なんか知らんが、家は消えないんだよね?
多分、少しでも加工したものなら、ダンジョンに吸収されないのかもしれない。
それにしても勿体無い事した。
魔法の鞄に入るだけ、羊スライムを倒せば良かったのだ。
そしたら、羊スライムはダンジョンに吸収されなかったのに。
初めてのお金への衝動だったので、自分でコントロール出来なかったのだ。
興奮して、羊スライムを皆殺しにしちゃったけど、本来のリッチー的観点なら、羊スライムを皆殺しにするべきでは無かった。
リッチーの行動原理は、損得感情で動くようである。
ちょっと性格がお金に汚くなったが、人肉食べたいとか、脳味噌食べたいとか思うよりはマシだ。
お金が欲しいと思うのは、俺から言わせれば人間らしい欲求なのだ。
俺は少しだけ、人間に近づいたのではないかと思うのであった。
骨が金色になった時点で、無理そうな気もするけど。
ーーー
ここまで読んで下さりありがとうございます。
面白かったら、ブックマークに入れてね!




