10. 鷹の爪
「キャハッハッハッハッ! 俺TUEEEーー!!」
(骨語)
「ギィギィギィギィギィ! ギィギィギィーー!!」
俺は、第12階層で無双している。
あれ程、俺を苦しめた牙狼族が、独り言を喚いてるだけで、勝手に気絶してしまうのだ。
俺は気絶している牙狼族をただ、食べるだけ。
今の俺は、動物系の魔物には無敵を誇っている。
この調子なら、2、3日で、レベル30になれる筈。
早く、この恥ずかし過ぎるゴールデンスケルトンから進化したい。
魔物に見られるのは全然OKなのだが、人間にだけは絶対に見られたくない。
とか、思ってたら、しっかりフラグ回収して、目の前に冒険者パーティーが現れた。
俺は必死に叫ぶ。
「失神しろーー!」
(骨語)
「キィキィーー!」
冒険者パーティーは、俺の不快な叫び声を聞いても、全くへっちゃらのようだ。
何でだ?
「コイツは驚いた。金色のスケルトンだぜ!」
「不快な叫びを連発するスケルトンなんて、聞いた事ないわ。新種のユニーク個体じゃない?」
「どうするよ?」
「距離をとって、様子を見るわよ!
どんな攻撃してくるか分からないしね!」
「ああ、第12階層で無双している金色のスケルトンなんて、普通じゃねえからな……」
「拙者も、その意見に賛成だ」
3人組の冒険者パーティーは、俺から一旦距離を取った。
よく見たら、俺は、この3人組のパーティーを知っている。
この3人組のパーティーこそ、アムルーダンジョンの最深攻略階層である第15階層を攻略した『鷹の爪』である。
間違いなく、アムルーダンジョンNo.1の冒険者パーティーと言っても過言では無い。
どうしよう……。
俺には、『鷹の爪』を倒す術がない。
状態異常無効魔法を使ってるせいか、俺の不快な叫びも効かないみたいだし……。
幸い、俺に警戒してるようで、一定距離以上には近づいてこないので助かっているけど。
ーーー
俺と『鷹の爪』が、睨み合いを続けて10分、お互い一歩も動けないでいる。
『鷹の爪』は、俺の事を必要以上に高く評価しているのか、自分達からは動かないと決めているようだ。
『どれだけ用心深いんだよ……まあ、そのお陰で、この最難関と言われているアムルーダンジョンで生きてこられたのかもしれないけど』
そうこうしてると、辺りで失神していた牙狼族達が、起き上がり次々に俺に近づいて来た。
基本、牙狼族は骨好きなのだ。
このままでは俺は、牙狼族にしゃぶられ、あられもない姿を『鷹の爪』に見られてしまう。
それだけは、絶対、回避しなければ。
とか、考えてると、あっという間に牙狼族が数十匹、俺の傍に集まって来た。
「ギィー!」
俺は牙狼族が気絶しないように、威嚇を続ける。
このままだと不味い。
だからと言って、牙狼族を失神させてしまったら、再び『鷹の爪』とずっと対峙し続けなければならない……どうしたものか……。
「おい! ヤバそうだぞ! 金色の奴が、眷属を集めているぞ!」
「これは、私達の手に負える数じゃないわよ!」
「逃げるか?」
「それしか無いわね!」
「ウム!」
「じゃあ逃げろ!」
突然、『鷹の爪』が、逃げだした。
俺は限界だったので、大声で叫ぶ!
「気絶しろ!!」
(骨語)
「ギィギィーー!!」
俺の叫び声と同時に、周りにいた牙狼族が失神した。
助かった。
助かったら同時にお腹も空いた。
目の前には、失神した牙狼族がたくさん転がっている。
俺は、牙狼族にむしゃぶりつく。
「肉うめぇー!」
(骨語)
「ギィギィー!」
第12階層に、不快な叫び声が響き渡った。
ーーー
アムルーダンジョンを囲むように広がるアムルー城塞都市の、アムルー冒険者ギルドに、この日、第12階層で、自分の眷属である牙狼族を捕食しながらフラフラと歩く、金色のスケルトンの報告がもたらされた。
発見したのは、この大陸に5パーティーしかいないS級ギルドパーティーの『鷹の爪』。
金色のスケルトンは、第12階層に牙狼族を捕食しに来ていたようであり、それを邪魔した『鷹の爪』に少し興味を持ったようで、暫くの間、『鷹の爪』をジッと、深淵の底のような真っ黒な眼孔で見つめていたという事だ。
しかしながら直ぐに興味を失い、餌であり眷属である牙狼族に、『鷹の爪』を殺すように命令し、『鷹の爪』が逃げ惑う様子を見ながら不快な声で高笑いしたという事である。
この『鷹の爪』によって報告された、金色のスケルトンの叫び声は、最近、第5階層で頻繁に聞こえてくるという不快な叫び声と同一と考えられ、アムルー冒険者ギルドでは、金色のスケルトンを、アムルーダンジョン第一級危険モンスターに認定したのであった。
俺の知らない所で結構、大変な事になってたみたいだけど、肉を食べる事に必死だったこの頃の俺には、知る由も無い話だった。
ーーー
ここまで読んで下さりありがとうございます。
面白かったら、お気に入り、ブックマーク押してね!
作者の励みになります。




