4.神になってみたい
これもまた想像することは困難と言える。なぜならば、この概念はまだ発見されておらず、今の人類の常識を逸脱しているためである。
あらゆる科学者が観測し、理論を組み立て、証明してきた法則。それらを用いて新たな真実を追求し、不可能だと思われた現象を実現してきた。たとえば、飛行機やロケット、電車だってそうである。
だがそれは同時に実在できない現象や物を露わにしている。水銀を飲めば死ぬ、地球は球体であること、呪いの正体が病気だったりなど。どれだけ気持ちを込めても西は西であり、東は東である。西に行って東にたどり着くことはない。
これを知らずに今までのことを後悔したり、憤りを感じる者も、そんなこともわからないとはアホだと、事実の否定に価値はないと馬鹿にする者もいるだろう。
だが法則というものはそのような思いを凌駕し、発見されれば世界を大きく変えていくものだというのも事実。
『人は現存する神を殺すことで神に成り代われる。そして神になったものはあらゆる法則のうち、一つを改ざんできる。』
これは非常に幻想的であり、盲目的であり、理想的でもある。ただ魅力的な法則である。錬金術も魔術も、呪いも奇跡も、科学に殺されてきた概念の復活を意味できるためだ。
彼は神学者であった。この世が誰かによって作られたとして、その誰かを神だとして、一体何のために作られたのかを調べていた。
それさえ分かれば完全なる法が実現でき、悪人を間違いなく裁くことができると考えた。そうすることで正しく平等である社会が完成する。
その理想を追い求め、日々古文書を研究してきた。本当に神がいるのであれば、古に答えがあるはずだと。だが今の人類の科学では調べ切ることができない部分があった。遺跡や学者の元に訪れては、そればかりである。
そこに神と名乗る人物が現れた。容貌は何の変哲もない普通の人だった。強いて言うのであれば、穏やかな雰囲気だった。
もちろん彼はその人物を頭のおかしいやつだと察して、関わらないようにした。だがしつこく付きまとってくるために話を少し聞くことにしたのだ。
その人物は自身のことを天才の神だと名乗った。天才に対する法則を司り、彼の願いを叶えられるかもしれないと述べた。
やはり頭のおかしいやつだと人を呼んだが、彼が変に思われた。天才の神と名乗る人物は彼以外には見えていないらしい。
天才の神は彼にある契約を持ちかけた。それは神にならないかという意味不明な戯言であった。
あらゆる神にも人間と同じように寿命があり、死ぬまでに法を誰かに受け継がせなければならない。もしそれができずに消えてしまえば、その法則ごと抹消されてしまう。これは世界の秩序を崩壊させる。
彼はもちろん断った。突然現れた変な人物から到底理解できない話であったゆえに、恐怖したのだ。だが次の一言でそれも変わる。
『神になったものはあらゆる法則のうち、一つを改ざんできる』
その言葉とともに浮かんだのは遺跡の研究の可能性を広げること。調べられる領域を増やせるかもしれないということ。
少し気持ちが傾こうとしていたが、ここで一つ疑問に思う。この天才の神は自分以外には見えていない。その存在は普通には認識できないのだ。もし神になったら自分も同じようになってしまうのではないか。
その考察は正解であった。基本的に神はある一人にしか関われないし、物体にも触ることはできない。つまり神になれば観測しかできない。
いわば幽霊に近い。だが寿命はある。やはり理解できないと彼は思った。しかし天才の神の言うことが嘘であるとは思えなくなっている。
彼の知的好奇心は刺激されていた。もはやその先がどうなるのかを想像して心が躍っている。そしてその想像を超えてくる事実がほしかった。
彼は天才の神と名乗る人物と契約を交わした。たちまちその体は薄れていく。手に持った本も落下した。
ついに彼は神になってしまったのだろう。そして何らかの法則を改ざんしたのだ。だがその事実に我々は気づけない。彼は見えなくなってしまったために。
あまりに適当過ぎる。
設定だけ考えて走りました。




