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2.転生したら自分を殺した奴に生まれ変わった

 瞼を開けば薄暗く映る部屋の壁、自分が歩くたびに寂しく響く硬い音。こういう時間帯は自分が細く小さく感じる。間違いなく誰もいない空間だからこそ、自分だけだと目立つ。

 このような一人の夜中は何もない腕の内を不安が勝手に忍び込んでくる。抱えているのに落ち着かないことが不気味でならない。

だから足音を消して歩く。不安から隠れられるかもしれないという直感である。部屋の扉をじっくり見た後、再び地面に足を擦って進んでいく。

 顔を少しずつ上げて鏡を見つめた。写っているのは自分と背後にある部屋の扉だけ。それを確認してすぐに鏡から目を逸らす。

また歩いて後ろをゆっくり振り返る。あるのは部屋の扉。鍵はかかっている。何も心配することはない。

たとえば幽霊が現れたとしよう。だいたいは白い服着た若い女だと僕たちは想像すると思われる。

もちろんイケメンでもマッチョでもお婆でも悪くないと思うが、もしイケメンなら怖がる前にイラつくし、マッチョなら幽霊のせいで筋肉使えないから怖くない。

お婆は単純にハズレだ。出てきたところで困惑しかしない。熟女はこの場合、若い女ということにしておこう。

若い女であってほしい。できれば美人が良い。というかこういうものはだいたい美女だと決まっているだろう。可愛い系は嫌である。

別に幽霊は怖くない。子供のころは遭遇したらどうしようだとか頭抱えたが、そもそも幽霊は我々に理解できない力を使うのだから考えても仕方ない。

それにもし一目見たら、それはそれで面白い体験だったといえる。幽霊に殺された人間がこの世にどれほどいようか。そのような経験をする人間は少ない。

だいたい我々が怖がるのは未来、そして他人である。将来のことを不安がり、考えたところでどうしようもなく、まるで幽霊だ。

他人というのは知人ではない人間としよう。いわゆる殺人鬼だとか泥棒だとかの部類、頭がおかしいというやつである。

だがこれらの遭遇も予知などできないだろう。身構えたところでやられるときはやられるだけ。運でしかない。

だから恐れることはないのだ。もしも目の前に幽霊や殺人鬼がいたとしても、楽しむか逃げるかしかない。怖がるにしてもそのとき怖がればいい。

なお、宇宙人は除外していた。単純に忘れていた。正直、君たちはそんなに怖くない。勝手にしてくれ。

そう思ってベッドに戻りつまらない天井を見るのをやめた時、僕は死んでいた。ナイフを持った男が僕の首を掻っ切っていたのだ。

まさか気づくことなく死んでしまうとは、やはり怖がる必要性はなかった。とはいえ、平然と殺してきたあの男には腹が立つ。

僕は男の気持ち悪い笑みに殴りかかろうとしたが、幽霊になっていたので効かなかった。ならば呪ってやろうとしたが、やり方がわからない。


だから僕は二度寝した。まさか幽霊のほうが不便だとは。


無いはずの目を開ける。薄暗く涼しい。知っている天井。だけどかなり散らかっているし、見覚えのないフィギュアとか本とかがある。ここはどこだろうか。

あとお尻が少しもぞもぞする。なんか臭いし。あれ、この木の棒はなんだ。あとなんかもっと臭くなってるし。鼻が捥ぎれそう。

石のような頭を回してわかった。これはベビーベッドだ。僕は今、ベビーベッドで寝ているんだ。僕の身長は203cmだからずいぶんデカいベッドだろう。

ってなんでこうなってる。てかさっきから臭すぎる。なんだこれは。新手の拷問か何かか。いや、ふざけすぎだろ。

さすがの臭さに泣きわめき、どこからか若い女が走って近づいてきた。肌が白く、身長はだいたい400cmくらいか。あれ、おかしい。なんかお尻触ってくる。やめろ。

あんまり好みじゃないから触るな。セクハラだぞ。でもなんかスッキリした。なんだあの茶色いのは。鼻つままず、若い女がどこかに。ちょっと待って。それってもしかして。


死んだ後どうなるかということは古代からの難題であった。天国とか地獄とかに行くとか、ただ土に還るだけとか、世界を見守る存在になるとか、あるいは生まれ変わるとか。

これらから選べるとしよう。多くの人は生まれ変わりを選択するのかもしれない。他の人生を歩んでみたいと思ったりして。

ただ忠告しておこう。どの環境に生まれるかは選択できないということを。もしかしたら前世よりも楽できないかもしれない。


というかこの赤ちゃん、僕なんだね。ありえない。


どうせ生まれ変わるなら女の子になりたかった。いい気分になっている男どもを懲らしめてやりたかったものだ。

この無理やり乳首を押し付けてくる女みたいに。やめろ。お前の母乳なんて飲まない。というかあんた誰だよ。

いや多分、母親だってことだろうけども。ああ、最悪だ。赤ん坊の時の記憶があるというのは地獄だろう。


それからなんやかんやあって、僕は小学生になった。


友達とサッカーしたり、ゲームするのは楽しいものだ。威張ってくるやつもいるけど、それはそれで受け入れられる。この年だからか。

だがしかし、小学校が6年は長すぎる。飽きる。半ば監獄に見えてきている。ああ、早く終わらないかね。授業もやはりつまらない。

生まれ変わってから10年くらい経ったけど、たまに前世を思い出す。あいつら元気にしてるのかとか、あの子はもう結婚したのかとか。

まぁどうでもいいか。考えたところでしょうがない。とっとと帰って友達とゲーセン行くかな。


その日、家に帰ると親はいなくなっていた。すごく憤りを感じた。


高校生になった。祖父母の家に世話になって、よくしてもらっていた。あの両親とは違って、優しく話してくれる。

二度目人生、遊びつくしてやろうと思っていた。だけど祖父母に恩返ししたい。そう決めて僕は真面目に生きることにした。

立派な人間となり、祖父母を心配させない。そしてあの両親のようには絶対にならない。それだけをいつも心に刻んだ。


そして上京した。懐かしい景色だ。


煌びやかに彩られる夜の街。車が右往左往して騒がしく、自分の足音は聞こえない。それでも違和感は全くない。むしろなぜかワクワクしている。

今は2023年。転生の仕組みなんてわからない。前世で来た時と全く変わらない町並みだ。それなのに初めて見るような気もする。変な気分だ。

そうそう。ここの角を曲がったところに前世の僕のマンションがあるんだ。やっぱりあった。変わらないな。

今はだれが住んでいるのだろう。暗証番号に悩むことも、階段につまずくことはなく部屋に向かって行く。


あれ、これは。同じ苗字。偶然なのか。いや、そんなことがあるわけない。偶然にしてはおかしすぎる。


生まれ変わった時、ここは前世と似た別世界だと思っていた。そうじゃないと自分が二人存在してしまうから。僕は前世の記憶があるし、この魂だってそうだろう。

同一人物が二人存在するわけがない。そのはずなのに。でももしそうだとしたら。僕は鞄を漁って、携帯を取り出した。

うろ覚えの番号を打ち、電話をかける。出ない。この時間は寝ているのか。そうだ、今日は木曜日だった。

たしか鍵はここに隠してもあったはず。あった。ってなんであるんだよ。本当に前世の僕がこのなかにいるのか。

震える手を押さえながら僕は鍵を通し、回す。このボロボロの靴は。薄暗い部屋に忍び込んでいく。

鳴り響く音は自分のだけ。やはり寝ているようだ。安心した。あくまで確かめるだけ。それだけだ。


本当に前世が寝ている。気持ち悪い。こんな寝顔だったのか。

 

 僕はこいつなのだろう。そして僕はこいつの来世。だからこいつは僕と同一人物のはずだ。なのにそんな感じはしない。

 まったく別人のようだ。この中身には誰がいるのだろう。前世の僕が本当にそのままいるのか。僕は一人じゃないのか。

 

 殺した方がいいのではないのか。


 気味が悪い。恐ろしい。このままにしておけば、自分がどうなるかわからない。そんな気がしてならない。

 大丈夫だ。僕はこいつと関係はない。殺してもバレることはないだろう。それに自分自身を殺すのだから無罪だ。




 これでいい。そもそもこいつはじきに死ぬ運命だった。罪悪感はまったくない。だが手の感触が残って離れない。

 僕はゆっくり歩いて手を洗う。辺りには水のぶつかる音しかしない。ここはよく知っている。隣人の習慣もだいたいわかる。

 あの日もこんな空気だった気もする。ああ思い出したくもない。あの気持ち悪い男の笑み。あいつもここにくるのだろう。

 そう考えると怖い。今日は何日だ。26日。待てよ。何時だ。1時だ。まずい、まずいぞ。今日だったのか。今日が前世の命日だったのか。

 ゆっくり顔を上げ、鏡を見た。背後には部屋の扉。それと遡って表出する笑み。


 


この展開、テンプレだろ。

いささか強引だけど。

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