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文芸に迷走  作者: 緋西皐
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13/20

13.SR626SW

時計止まった


太陽電池やネジ回しで発電されるわけでもなく

壊れたとかとスマホで調べてみると

ボタン電池の交換方法が出てきた


開けてみる

ボタンちっさ


SR626SW

米粒よりも小さい中に刻まれた単語

目を凝らさないと見えない

意識しないと無くしてしまいそう

老人になったら

わざわざ歩くほどの元気もないだろうな

そう思いながらボタン電池探す


なんとなく蓋を開けて針が止まったと気づく

シュレディンガーの猫

いつから止まっていたかなんて知らない

だけどすぐに電池を探したのは

止まったままの今に嫌気がさしたから


電球はある

スマホのカバーはある

電池はどこに置いてあるんだ

店内3周してもまったく見当たらない

諦めて持ってるものだけでも買おうと

レジに向かうと

その前に並んでた


SR626...あった

SWが無かった

売ってねぇのかよ


SR626SW

どこに売ってんだよ

小さい文字で確かに刻まれているのに

どこにも置かれていない

寂しいSW


時代が経て

時計も針がなくなった

それでもロンドンでは大時計が今を見渡してる

どんなにものが必要なくなっても

嘘つきながら存在を保つことも

古に思いを馳せることだって

心に刻まれていくから


SR626SW

もうどこにもない

歩ける場所にはもうない

小さく刻まれた文字も隠れていく

老いてしまえば古い時計は動かないだろう

でも今はもう違うから

ネットで注文すればすぐに届けてくれる


明日の10時に届くからと

スマホの数字に心を躍らせる

形は変わっても変わらない宝物を

あの時と変わらずに動き出したいから


三年持ちました。

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