地下牢⑧
油の量が多かったのか徐々にこちらまで火が移動してきた。
引きずってきた人は意識がなくなっているのかこの状況に微動だしなかったので、地下牢に続く穴まで移動する事にした。
地下牢内には煙が入ってこないので、火が入り込むこともなさそうだった。
せっかく出る事ができた部屋に逆戻りになってしまった。
変わったことと言えば異世界の人ーー信者さんと呼ばせてもらおう。信者さんが横たわっている事だ。
三つ指なのがいまだになれないけど、顔の作りは人間で西洋系の整った顔立ちだ。
半日ほど前に聞いた声は高音っぽかったので、女の人なのかもしれない。
看守服の外観からは判別がつきにくかった。
信者さんは半日経っても目が覚めなかった。
初めて会話できたこともあってここに置いていくのも気がひけて、待っている時間で地下牢通路を探索することにした。
「運よく桶の蓋みたいなのと鉄格子の外れた棒が手に入ったけど身を守るには弱すぎるよな。剣があったところで使いこなせる自信はないけど」
「危険な生物や敵対勢力が存在する可能性があります。武器や力で戦うことができない場合、騒音を立てないようにすることが重要です。」
しばらく聞いていない声が頭に反響する。
もしかするとAIさんは不要な時はオンオフを自動で切り替えてくれるのかもしれない。
「地下牢に閉じ込められている場合、食料や水の確保は生き延びるために非常に重要です。地下牢に食料や水がない場合は、脱出の前にそれらを確保する必要があります。」
「ただ探索しようと考えていたけど、この中で過ごすためにも食料は必要だよな。要塞の外はわからないけど外に出たあとの事も考えて集める必要があるんだな」
アウトドアに触った程度の知識だったけど本当に何もないところに投げ出されるととたんにどうしたらよいのかわからなくなる。
今は目の前の状況を少しでも落ちつかせるために生活を安定させることに集中しよう。
部屋の同居人のためにも動ける俺が行動せねばいけないしな。
地下牢であてもなく日々を過ごしていた時よりも目的をしっかりと持てたことでやる気が出てきた。