地下牢⑥
朝、目が覚めるのは外から差し込むわずかな日の光に反応してなのか大体同じ時間になる。
時計もないこの小さな部屋では時間の間隔を把握する食事以外の貴重な習慣のひとつだ。
完全に日が出ていない明朝。朝日よりも強い光源が室内に入ったのをまぶた越しに感じて、体を起こそうとすると続いて爆発音と振動がやってきた。
まどろいでいた意識が一瞬で覚醒した。
突然の事態に口の中が乾いたような感じがして体が危険だと訴えかけてくる。
とにかく端へいって頭を守ろう……。
部屋の隅へ移動して寝床の藁を集められるほど集めて腕で頭を守る。
先ほどのような光源が再度生じたと思った瞬間、向かいの部屋から衝撃音とともに熱風がこちらまで流れてきた。最初だけ腕越しに見えたがとっさに目をつぶり衝撃に備えたー……。
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体にかぶった土砂やほこりを払いのけながらゆっくりと体を起き上がらせる。幸いなことにけがはなく、動作に支障はないようだ。
正面に目を向けると見慣れた鉄格子が歪み、隙間ができている。
部屋の外は松明に照らされた薄暗い通路が行き止まりの見えない長さで続いているようだった。
先ほどあった大きな爆発によって、目の前の部屋と一部通路が破壊されていたが歪んだ鉄格子から這い出るには支障をきたさなかった。
破壊された部屋からは外が見えており、土が抉れて地上に出られそうだった。
やっと外に出ることができると浮かれた気持ちになるところだが、爆発音が不定期的に起きていて、何かの叫び声が聞こえてくるあたり、すぐには飛び出さない方が良さそうだ。
「これは攻撃されているのか。爆発も事故とかじゃなさそうだしな」
「まずは冷静になって、周りを確認しましょう。逃げる前には煙や火災などによる障害物がないか、また脱出するための最適なルートを選ぶ必要があります。もし障害物や危険がある場合には、早急に対処する必要があります。」
「たしかに煙がひどくて地上も十分に見れないし、燃えているような音も聞こえるな」
段々と煙が立ち込めてきて地上からの明かりも遮られている。
普通に呼吸ができているのは、地下牢のおかげか煙が内部に入り込んできにくいからのようだ。
燃える音が増えた代わりに叫び声が減って来ている。出ていくチャンスに思えるが危険なことに変わりがない。
「少しでも外の様子を観察できれば良いのだけど。火事の時の対処法なんて小学校でやった依頼だから全然わからん」
「火事を避けて建物から出る方法は、煙を吸わないようにするために、タオルや布で口と鼻を覆います。安全な出口を探して、できるだけ煙の少ないルートを選択します。途中で倒れた人を発見した場合は、近くにある消火器を使って救助するか、他の人に救助を依頼してください。」
ん?これはフラグなのか?
AIさんから救助的な話が出たということは、外で誰かを助けたほうが良いということなのか。
この世界に来てから出会った生き物といえば三つ指無言の看守だけだから、少なくとも外にいるのは三つ指種族の人っぽいやつらだよな。
煙に関しては手元に口を覆う布なんてないから低姿勢で布服をちぎった切れ端で代用する。
そうこう準備をしているうちに時間が経っていたのか煙が晴れてきた。パチパチと燃える音だけが聞こえる中、俺は初めて外に出ることにした。