盗作
レビュー執筆日:2020/12/28
●シリアスなコンセプトを持ちながら、意外と気軽に楽しめる点も。
【収録曲】
1.音楽泥棒の自白
2.昼鳶
3.春ひさぎ
4.爆弾魔
5.青年期、空き巣
6.レプリカント
7.花人局
8.朱夏期、音楽泥棒
9.盗作
10.思想犯
11.逃亡
12.幼年期、思い出の中
13.夜行
14.花に亡霊
前作から約1年ぶりにリリースされたヨルシカのアルバム。今作はタイトル通り「盗作」をコンセプトにしているようで、所々に攻撃的な歌詞が見られたり、『爆弾魔』『花人局』『思想犯』といった犯罪行為を連想させるタイトルの曲が多かったりと、前作とは色々と異なる点が見られます。
とはいえ、基本的な音楽性は前作とはさほど変わっていません。スラップ奏法を強調させたファンキーな雰囲気が特徴的な『昼鳶』や和風なメロディや歌詞を聴かせる『春ひさぎ』のように前作には無かった感じの曲もあることにはあるのですが、基本的には爽やかな雰囲気をまとったシンプルなギターロックがメインで、「10曲+インストナンバー4曲で全14曲」という構成も前作と同じですし、夏の終わりを想起させる『夜行』や『花に亡霊』は前作に収録されていてもおかしくない感じ。そういう意味では、今作は前作の延長線上にあると言えるかもしれません。
分かりやすいメロディを持った曲が多く、疾走感のあるナンバーやスローなバラード、ジャジーな楽曲とそれなりにバリエーションはあり、相変わらずアルバムとしては「良くできている」と思うのですが、やはり「小さくまとまっている」感じがあり、個人的にはもう少し「癖」が欲しいような気がします。まあ、つい口ずさんでしまいそうなメロディに乗せて「この部屋を爆破したい」(爆弾魔)や「あんたの価値観なんて偽物だ」(レプリカント)等といったフレーズを歌う点を興味深く感じる点もあり、決して「典型的なギターロック」に収まっているわけではないのですが。
アルバムのタイトルやコンセプトからシリアスで物々しい雰囲気をイメージする方もいるかもしれませんが、前作同様に結構肩肘張らずに気軽に楽しめる点もある、そういう作品になっているのではないでしょうか。
評価:★★★★