エルマ
レビュー執筆日:2020/9/9
●爽やかで切なげな雰囲気をまとった、シンプルなギターロック。
【収録曲】
1.車窓
2.憂一乗
3.夕凪、某、花惑い
4.雨とカプチーノ
5.湖の街
6.神様のダンス
7.雨晴るる
8.歩く
9.心に穴が空いた
10.森の教会
11.声
12.エイミー
13.海底、月明かり
14.ノーチラス
コンポーザーでギタリストのn-bunaとボーカルのsuisからなるユニット、ヨルシカ。今作で初めて彼らのアルバムを聴いてみたのですが、suisの声は非常に清涼感があり、曲調はシンプルなギターロックがメインで、歌詞に関しては「夏の終わり」を想起させるものが多いということもあってか、全体的に「爽やかで切なげ」な印象を受けました。また、そういった一定のトーンを持ちながらも、どこかジャジーな雰囲気が漂う『雨とカプチーノ』だったり、タイトルに反して疾走感のある『歩く』だったりとそれなりにバリエーションはあり、間のインストナンバーもアクセントとして上手く働いており、アルバムとしては「よく出来ている」と思います。
ただ、シンプルな作風で、suisのボーカルは先程挙げたように「清涼感」はあるもののそこまで「癖」があるわけではなく、全体的に見ると小さくまとまっている感じが否めません。また、今作はどうやらコンセプチュアルで物語性のある作品のようで、そう言われてみると、歌詞において「いなくなった誰かを思う」という描写が多いような気がしますが、全体的に曖昧な表現が多く、「そこまでコンセプトを押し出すような作品かな?」と思うところがあります。
個人的には、「物語を描いた作品」というよりも、「リスナーの日常に寄り添った作品」という印象を受けた本作(特に、『心に穴が空いた』はふとした瞬間につい口ずさみたくなります)。良く言えば「押しつけがましい」ところは無いので、「サラッとしたギターロックを聞きたい」という方にお薦めできるアルバムになっているのではないでしょうか。
評価:★★★★