グッバイダーリン
「あのね…」
そう一言、貴方に話しかけるのも苦しかった。
「…なに?」
こんなにも日々の日常にありふれて、多様される言葉が、貴方によって使われると、私の心が潰される様な気持ちになる。
『なに?』が『どうしたの?』なら、どんなに良かったか…。
長い時間をかければ、愛情に、情が輪をかけて離れなくなり、それが本当の愛に結び付くんだと思ってた。
旅行にも行った。買い物にも行った。食事にも行った。映画も行った。
それらは全て楽しかった。
それが全てだと…。
でも、私は気付いてしまった。
それらは全て彼にとって都合の良いものでしかなかったんだと…。
毎日の中でも、私の心が訴える声に彼は応答してくれていなかった。
ふとした時、仕事で失敗した時、人間関係で悩んだ時。
特に答えが見つからない、解決法のないジレンマの様な話には、聞く耳を持たなかった。
いつからだろうか…?
私が彼の顔色や、機嫌を伺い出したのは…?
いつからだろうか…?
彼がそんな私を、うまく気を使える優しい女だと勘違いを起こしたのは…?
歯車が合わずにカタカタと音を鳴らしているのに、まだ動く!使える!と互いに酷使する始末。
「なんかおかしいよ…私達。」
色んな意味にも取れる私の言葉が宙を舞う。
「…またその話?」
また?
またって使える程、貴方私と向き合ってるの??
私の想いが涙と化して頬を伝う。
横目でちらっと私を見て、彼は大きくため息をついた。
この行動で彼は私に圧力をかけて、小さな小さな、まるで意味を持たない戦いの勝利を目指す。
「もういい!!」
と言って、私が車から降りるのを待っているんだ。
そのタバコを吸うしぐさにすら余裕を感じる。
この人ぢゃない。
彼は、お話が上手かった。仕事が真面目だった。
浮気はしなかった。
見返りを求めない人だった。
だけど、いつも私を犠牲にする男でしかなかった。
『あのね…』
『…何?』
もう、終わりにしよう。
グッバイダーリン。