3 野良犬ちゃんと買い物に行ったら重いものを軽々と持ってくれた
さて、朝ご飯を食べよう。
そういえば、桃は何が食べられるんだろう?
「桃は食べられないものとかあるのか?」
「こんな格好だけど犬だからね。チョコレートとか食べれないよ。」
なるほど、犬だと思って食事には気をつけよう。
僕はスマホを取り出すと犬が食べてはいけないものを調べた。
チョコレート
カフェイン
ぶどう
レーズン
アルコール
生のパン生地
キシリトール
タマネギ
ニンニク
乳製品
ナッツ
けっこうあるものだなぁ。
こりゃ、ドッグフードが無難なのかな?
「ちなみに毎日ドッグフードとかって大丈夫?」
「うん、むしろ大歓迎!栄養を効率よく摂ることが一番だからね。」
そんなもんなんだ。たしかに犬の味覚は人間の5分の1程度しかないみたいだから、そこまで味にはこだわらないのかな?
「よし、それじゃあ、今日はドッグフードと服を買いに行こうか」
「わーい!お散歩もしよ?」
「わかったわかった。」
僕たちは朝ごはんを食べて、出かける準備を始めた。
朝ごはんは鶏のササミを蒸したものだが、特に味付けもしなくてもおいしそうに食べていた。
「そういえば、昨日は犬の格好だったけど、もう犬には戻れないのか?」
「戻れるよ。犬の姿の方がいい?」
「いや、犬を連れて入れない店もあるし、犬の姿だと人に戻ったら裸だろ?人の姿でいよう。」
僕には小さくなってきれなくなった服を桃に着せたが、やっぱりちょっとぶかぶかだな。
さて、準備にもできたことだし出発しよう!
まずは服から買いに行こう。
この姿はいくら何でも違和感があるからな。とはいってもそんなにお金を持ってるわけじゃない。
そんな庶民の味方「ファッションセンターしもむら」に行こう。
ファッションセンターしもむらに着くとちょうど特売日だった。まだ一着も持ってないから、いくつか買っておかないといけないな。
「ねぇねぇ!お兄ちゃん!お兄ちゃんはこういうの好き?」
振り返ると桃はフリフリのついた紫のセクシーランジェリーを指さしていた。
「こ…こら!静かにしなさい!」
慌てて桃の口を閉じたが、周りのおばさんがボソボソと話していた。
「最近の男の子はああいうのが好きなのね…。」
「まったく、おエロいこと…。」
僕たちはそそくさとキッズ服売り場に移動した。
キッズ服売り場ではいろんな服が並んでいた。
「どんな服がいいんだ?」
「正直、服が好きじゃないから裸がいい。」
「人間として生活していくなら服は着なさい。」
そこはさすがに諫めた。
「じゃあ、動きやすくて邪魔にならないのがいいかな?」
なるほど。そうなるとセール品にあるこの辺の安いやつの中からスウェットとかズボンあたりがいいかな?
「ねぇねぇ!これがいい!」
桃が声をかけてきたのを見ると、紐のような水着だった。たしかに動きやすいかもしれないが、これで一緒に街を歩いていたら、僕は警察に捕まってしまう…。
「それは服じゃないんだ。こっちから選びなさい。」
僕は安くて無難な服の候補をいくつか出して、この中から3~4着買うことにした。
「それじゃあ…これと…これと…。」
桃はいくつか服を選んだ。どうやら桃は茶色や緑色など落ち着きのある色が好きなようだ。
さて…ここからが問題だ。
下着コーナー…。
いくら子供を連れているとはいえ高校生が下着を選ぶ姿はとても恥ずかしい。
僕は店員さんに聞いて、桃に合うサイズの下着を聞くと適当に選んでそそくさと出ていった。
お会計を済ませると、買った物のうちの一つを試着室で着て、店を後にした。
茶色のパーカーと薄い黄色の短パンを着てとても機嫌よさそうに外へ出た。
次はドッグフードを買うためにペットショップに向かった。
ドッグフードといってもいろいろあるなぁ。
水分含有量が10%以下のドライ。
水分含有量が25~40%のセミモイスト。
水分含有量が75%以上のウェット。
穀物類を使用していないグレインフリー。
アレルギーを抱えた犬用の食物アレルギー。
幼齢の犬に合わせた子犬用。
1つの犬種に特化した犬種特化品
他にもいろいろあって、どれがいいかよく分からないなぁ…。
「桃、硬いのと柔らかいのとどっちはいい?」
「硬いの!歯ごたえがあるのがいい!」
じゃあ、ドライかな…。
おっ!ドライはプライベートブランドで安いのがあるぞ!これにしよう!
「ねぇ…お兄ちゃ~ん…」
なんか急に甘えた声で桃が呼びかけてきた。
「あれ、欲しいの。」
どうやら大きい骨の形をして鈴がついたおもちゃが欲しいらしい。
いつの間に甘え方を覚えたんだ…?
「わかったよ。じゃあ、一個だけな。」
「わーい!」
ドッグフートとおもちゃを買って店を出た。
「それじゃあ、散歩と行きたいところだけど、ドッグフードが重くて散歩がしんどいなぁ。」
「じゃあ、桃が持つ!」
桃は2kgのドッグフートが2つ入った袋を軽々と持ち上げた。
「桃って、力持ちなんだな。窓も簡単に破壊しちゃうし…。」
「うん、だってわたしは前世の記憶と能力を継承してこっちにきたみたいから」
えっ?
突然のファンタジーな話に耳を疑った。
前世の記憶…?