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1 野良犬ちゃんと目が合ったら気に入られてついてきた

霧雨の降る昼下がり。

僕は学校をさぼって神社の境内で横たわっていた。

いわゆる「不良」というわけでもなく、別にバイクを乗り回したりケンカをするわけでもない。

悪い人とつるんでいるわけでもないし、むしろ他人に迷惑をかけずに生きているつもりだ。


ただ、この世のすべてが退屈なのだ。


両親は仕事で家に全然帰って来ないし、兄弟がいるわけでもない。

どこぞのアニメなら、突然宇宙人の女の子が来てモテ期が到来したり、身体が小さくなって好きな女の子の家に入り浸るなんて展開があるだろうが、残念ながら現実はそうではない。


特に親からの愛情を受けることもない。

人と話すのが苦手だから、4月の友達グループ作り期間に何もできず、友達もいない。

名前が「栂村 笹海」(んがむら ささみ)なので出席番号は必ず最後である。

教室の後ろの端で一人ポツンと無表情で座っているので、誰も近寄って来ない。

僕は学校では透明人間なのだ。

きっと僕がいなくても世界は何も変わりはしないのだろう。


どうして僕は生まれてきてしまったのだろうか?

僕は神社のガラガラ鳴らす鈴「鈴乃緒」を見上げながら神様に問うてみたが、残念ながら返事はない。

ただ、しんしんと降る霧雨の音を聞きながら横になっているのが今は心地よかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


どれくらい時間がたったのだろう、少しウトウトとしていると、一匹の仔犬が境内に迷い込んできた。

犬種は柴犬だろうか?両手に収まる程度の豆柴サイズだから生まれて間もないのだろうか。

首輪もしてなく毛の手入れなどもされていないところを見ると、野良犬なのだろうか。


仔犬は境内の雨のしのげる場所に立ち止まると、身体を振って濡れた身体の雨を切った。

少し僕を警戒しながら距離を取った場所で座り込む。

僕も別に関心があるわけではないが、お互いのパーソナルスペースを保ってくれているようでちょうど良い距離感が心地よかった。


「お前も僕と同じようにどうしていいのか分からないのかな…。」

思わずボソッと呟いた。

すると仔犬はこちらをジーッと見つめてきた。

(君もこの世界が寂しいの?)

不思議なことに仔犬の瞳を見ると、そう呟いてくるように感じた。

まさかねぇ…。

僕は疲れているのかと思い、横になり目を瞑ると、仔犬が少しずつ近づいてくる気配を感じた。


ジーーーーーーー…………。


目を瞑ってても、仔犬の目線をずっと感じる。

もしかして、僕の身体から食べ物の匂いでもするのかな?

ちょっとスンスンと自分の身体を嗅いでみたが、そんなことはない。

やがて仔犬は僕のすぐ側で身体を丸めた。


……落ち着かない…。

不思議とこの仔犬が僕のパーソナルスペースに入っても嫌な感じはしなかった。

でも、やっぱり落ち着かない。

もともと誰も側にいない生活を続けてきたわけだから無理もないが、どうしていいか分からない妙な時間をしばらく続いた。


…………………


はっ!

どうやらどうしたらいいか分からない緊張に耐えきれず眠ってしまっていたらしい。

雨はすでに止んでいた。

そして辺りを見渡すと、僕は仔犬を枕にして眠っていた。

「うおぅ!!」

さすがにびっくりしたが、仔犬は特に不機嫌なわけでもなく落ち着いていた。


…とりあえず帰ろうかな…?

僕はカバンを持って帰ろうとすると、仔犬も立ってこちらに近づいてきた。

「じゃあな。お互いがんばろうな。」

そんな声をかけると、仔犬はスッスッと寄ってきた。

「いや、連れて帰らないよ」

僕は立ち上がり帰り道へと歩く。

仔犬はその後ろをずっと追ってきた。

僕が少し早く歩くと、それに合わせて早く歩く。

かといって距離は常に一定だった。

「うーん、この仔犬は本当に僕と距離感がぴったり合うなぁ…」

と感心しているうちに家に着いた。


僕の家は2階建ての一軒家だ。親は仕事が忙しいらしく帰って来ない。

ただ、家賃はかってに払ってくれるし、生活費は毎月銀行に入ってくる。

何一つ不自由はないが、愛情をかけてもらったという記憶はない。


「家には上げないよ。」

僕は付いてくる仔犬にそう言うと扉を閉めた。

ちょっとかわいそうな気はしたけど、こんな性格のスレた人間がとても仔犬の世話など出来るはずもない。

でも、きっとあんなに相性の良い仔犬はいないんだろうな…。

そんなことを考えながら靴を脱いでいると…

「おかえり」

その声のする方を見ると、目の前に裸の幼女が立っていた。

うぎゃああぁぁぁぁぁ!

幼女は茶色でボサボサの髪に頭から耳が生えていて、眉毛が白くてまん丸い形をしていた。

そして、巻かれたしっぽが生えていた。


泥棒?

にしては幼すぎる。

まさか親父の隠し子?

いや、親父が帰ってきた形跡はない。それになぜ裸?


「えーっと、君は?」

「さっきまでずっと一緒にいたじゃない。」

「さっきまで一緒にいたって…まさかあの仔犬?」

突然のファンタジーな展開についていけなかった。

「そ…そういえば、どうやって入ったの?」

僕が聞くと、仔犬はリビングの方を指差して、

「あそこに破りやすいところがあったから、そこから。」

あわててリビングに行くと、窓ガラスが枠ごとなくなっていた。

泥棒でももう少し遠慮するものだ。

「と…とにかく、うちで君を飼うつもりはないよ。出てってくれないかな。」

「そんな…わたしの身体を枕にしておいて捨てるの?」

あの時は仔犬の姿だったが、裸の幼女に言われると急に恥ずかしくなってきた。

「それに、わたし…捕まると殺処分されてしまうから…。」

それを聞くと身体がズシッと重くなった。

殺処分…。

日本ではできりだけ里親などに譲渡して殺処分ゼロを目指している。

しかし、譲渡することが適切ではないと判断された場合、殺処分の対象となる。

適切でない原因は主に、病気やケガ、衛生上の問題、そして人間に対して攻撃性が高いと判断された場合だ。


「お前、何か病気とかあるのか?」

「別に。」

「じゃあ、人間を噛んだりしたことあるのか?」

「ううん。…でも…。」

仔犬は壊れた窓を指差すと…

「保健所から逃げるときに檻とか扉とか破壊したかな?」

「そりゃ、狙われて当然だな!」

「でも犬の姿でやってるから、こうやって人型の姿をしてれば大丈夫!」

なぜ人型になれるのか、それはこの際置いておこう。

「絶対に物を破壊しないのでここに置いてください。膝枕でも何でもやります。」

幼女の姿で膝枕とか言うな…。

でも、別にこいつといるのは不思議と嫌じゃない。

「わかった。ここに置いてやる。でももう犬としてでなく、人として行動しなさい。」

仔犬の顔がパァーッと明るくなると抱きついてきた。

「ありがとう。わたし、人の世界でちゃんとやる!」

「こ…こら!とりあえずまずは服を着ろ!目のやり場に困る!」

僕は自分の部屋着を着せてやった。

ぶかぶかだがその場しのぎなので仕方ない。

服を着ると仔犬はこちらを振り返り頭を下げた。

「じゃあ、これからよろしくね!お兄ちゃん!」

この世界に絶望した人間と人型仔犬の共同生活が今始まった。





初めて小説を書いてみました。

小説を書くのってものすごく勉強しないといけないということを感じました。

まだ始まったばかりですが、読んでいただけたら嬉しいです。

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