番外編 遺物研究所
お久しぶりです!
なんと、200万PV突破です!
ありがとうございます! お礼に番外編をつけます!
シャルナとクリスチーネが、その建物に入ると異臭が漂っていた。
「また、ですか?」
クリスチーネは表情を崩さないが、シャルナは鼻を抑えて、キースが開けた扉から入る。
クリスチーネ、シャルナ、後ろを守るようにイルゼーンが続く。
研究の結果、聖遺物から、たまに異臭が漂うのがわかってきた。それの偶然性と規則性を調べているところだ。
「クリスチーネ様」
差し出したキースの手にクリスチーネが手を乗せる。
いろんなものが散らばった室内は足場が悪く、クリスチーネがよろけないように、キースはその手を握る。
キースは想いを悟られることがないように、決して表情は崩さない。
「ほら」
イルゼーンがシャルナに差し出した手を、シャルナは払いのける。
「私がつまずくなんて思ってないくせに、クリスチーネ様と同じように扱わないといけないと思っているんでしょ?」
「ほら、騎士は女性には優しく、だからな。シャルナは分類上は女性だ」
イルゼーンは教会騎士に属するようになって、ジブゼブラ公爵家の派閥から外れ、シャルナにはクラスメイトとして対等に話すようになった。
シャルナとイルゼーンの会話が聞こえて、クリスチーネがクスクス笑うと、キースも応える。
「あの二人は、いつもどうしようもないですね」
「ええ、楽しいわね」
「お迎えに出ないで、申し訳ありません」
廊下を駆けて来たのは、遺物研究所の所長である。
遺物研究所は、あの事件の後、遺物をまとめて保管するのと研究する為に作られた。
遺物は秘宝扱いであったので遺物研究者はいないが、教会の管理者や、悪魔や古書研究者が研究員として在籍している。
教会の一角にある建物は、聖騎士達によって守られている。もしも悪魔が遺物から現れた時に、すぐに対処できるようにである。
シャルナは協力者として参加しており、クリスチーネは聖女として訪れている。
「研究の成果をお見せしたかったので、こちらの通路にお願いします」
所長がクリスチーネを伺いながら、部屋に案内する。
キースがクリスチーネの前に手を張って止めた。
イルゼーンも緊張を高めて、シャルナを庇うように張り付いた。
シャルナは強い聖力があっても、微弱な異質までは感じる事ができない。聖力のないクリスチーネとシャルナ、有事に逃げ遅れるのは間違いないからこそ、護衛の二人は細心の注意を払っている。
「騎士団!」
キースが声をあげると、警備に配置されている聖騎士が集まって来た。
「隊長」
聖騎士達はクリスチーネとシャルナの存在を確認しながら、キースに指示を待つ。
「所長、扉は聖騎士が開けます。
各自、突入準備」
キースの言葉に緊張が高まる。
扉に手をかけ、臨戦態勢になった騎士の後ろに、クリスチーネとシャルナが隠される。
バン!
部下が開けた扉に、キースは先頭で飛び込んで行く。その後を聖騎士達が続き、イルゼーンはクリスチーネとシャルナの護衛に残っている。
部屋の中では、研究員たちが部屋の隅に固まっていて、机の上に置かれた聖遺物から黒い煙が僅かに出ている。
騎士の姿をみた研究員が、一歩前に出て叫んだ。
「壊さないでください! 遺物の秘密に一歩近づいたのです」
剣を振り上げていたキースの腕が止まった。
「どういうことだ?」
今までキースが見た悪魔は、黒い煙が異形の悪魔の姿になっていた。
「世界が見える」
後ろから部屋に入ってきたシャルナが、煙の出ている遺物を指さした。シャルナには遺物の煙が出ている所に景色が見えた。この世界では見たこともない景色。
「これは、異世界?」
「そうだと思われます。煙がでる瞬間に見たこともない景色が見えるのです。
それが一瞬であるため、今まで気がつきませんでした。
異形の悪魔は異世界の存在ではないでしょうか?
そして、それを繋ぐのが遺物の秘密ではないかと」
所長が説明している間に、研究員が他の遺物を煙が出ている所に重ねれば、煙は消えた。
ドクン、ドクン、とシャルナの心臓が大きく脈打つ。
異世界と通じている遺物。
それは、優香の世界にも通じている?
こんなにたくさん遺物があるのなら、そのうち1個ぐらい・・・私の世界に通じている?
スポットライトを浴びて、人々の歓声、スマホに高層ビルディング、飛行機。
懐かしい光景が蘇る。戻れるかも。
ツー、と涙がシャルナの頬を濡らす。
あそこには、クリスチーネ様はいない。
アルフレッドがいない。
考えるまでもない、私は選んだ。
少しだけ感傷的になってしまった、だけ。
「シャルナ?」
クリスチーネがシャルナの涙をみて、ハンカチを差し出した。シャルナはそれを受け取って涙を拭くと、笑顔を見せた。
「私は、一瞬だと言う世界が見えていたのです。
きっと研究の役に立ちます」
クリスチーネはそれ以上聞かずに、シャルナに頷いた。
「そうね、それは大きな進歩だわ」
私の居場所はここにある。
もうすぐ結婚式だし。
やっと初体験するのよ! ドキドキの初体験ー!
アルフレッドってば、婚約しているのに全然手をだしてこないんだもん。まぁ、そこが真面目で大事にされているというか・・
そう思うと、シャルナの頬が少し染まるが、聖力が無くなるとか思って、初夜にも手を出してこなかったらどうしよう、と一抹の不安を無理やり封印して、シャルナはクリスチーネと手を合わせて、黒い烟の出ていた遺物に聖力を与えた。
いざとなれば、私が襲っちゃえばいいんだものね!
お読みくださり、ありがとうございました。
完結後も読者の皆様がきてくれることに、感謝、感謝!です。
最後に一文を追加しました。
violet




