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悪役令嬢との出会い

聖騎士は教会から派遣されて、聖堂の守護についている。交代制なので毎日人が代わる。

聖騎士を落とそうと考えているシャルナにとって、それは大きな問題だった。

話しかけても翌日にはいないのだ、仲良くなる隙が無い。


はぁ、溜息をついてシャルナは座っていた。

以前と違って、聖騎士を恋愛対象として意識しだすと、ドンドンカッコよく見えてくるのに、仲良くなれない。

(きた)えられた身体に白い騎士服を着ている様は、かっこよすぎるのだ。

厳しい訓練を経て騎士になった聖騎士はモテる。

孤児院出身で質素なシスター見習いは、聖騎士にとって庇護の対象であり、シスターは恋愛対象ではない。

どんなにシャルナが美人でも、恋愛対象とされない。

こうなったら、シスター見習い失格を早めるしかない。


「シャルナ、聞いたー?」

お昼ご飯の時に話しかけてきたのは、同じシスター見習いのイオリナだ。

返事がないシャルナを無視して、イオリナが話を続ける。

「街で、聖なる力が発現したんだって。もうすぐここに連れられて来るらしいよ。

それで、力の確認に王太子殿下が来るんだって」


ふーん、ミレミアが見つかったんだ。

そういう時期だっけ?

それで、聖なる力を見た王太子がミレミアに一目惚れするんだよね。

ちょっと王太子を見に行っちゃおうかな。

すごい美形なはずだし。


「ね、イオリナ、その人聖女候補ってこと?」

話が聞こえた隣の席から聞いてくる。

「そうらしいよ」

好奇心旺盛な年頃の女の子同士だ。話が盛り上がって見に行こうとなる。

「シャルナも行くでしょう?」

「うん」

わいわいとご飯を食べてから皆で、聖なる力を見たいとシスターにお願いに行った。

最初は渋ったシスターも、後学の為にと、礼拝堂の後ろで見学するのを許可してくれた。




聖堂の後ろで見学しているシャルナ達は、椅子の影にいるので気づく者も少ない。

ミレミアはすでに聖堂に着いていて、禊を受け聖女の服に着替えていた。

シャルナがミレミアを見た感想は、普通だった。

可愛いタイプなんだろうけど、突出しているわけでもなく、美人とは言えない顔の造りだ。

これに王太子が夢中になるって、信じられないと思ったぐらいである。


やがて近衛騎士に守られて、王太子殿下が到着した。

うわぁ、近衛騎士カッコいい。

シャルナは騎士なら誰でもいいのか、と自分で思うほど見惚れてしまった。


王太子は綺麗な顔をしていたが、シャルナの好みはやはり騎士の体格だ。

王太子は一人ではなかった、美しい令嬢を連れていた。

あ、婚約者のクリスチーネ・ジブゼレラ公爵令嬢だ。初めて見る顔でも分かる。

綺麗。銀髪に緑の目、白い肌に赤い小さな口元。

とうてい、ミレミアが敵うはずもない美しさ。


これでどうして? 

ミレミアのせいで邪険にされたら、ハウエルの為に努力してきたクリスチーネは、やるせないだろうな。

自分がクリスチーネの役をしていたこともあって、シャルナはクリスチーネに思入れしてしまう。


「待たせた。

すぐに聖なる力の実証をしてもらえるか?」

王太子の言葉で、ミレミアの前に萎れた花が差し出された。

ミレミアが両手で花に手を添え祈り始めると、手の周りに薄っすらと光が集まり、花の萎れがなくなっていく。

それを見ている王太子ハウエルの目が見開かれ、魅入っているのは一目瞭然だった。

花は生き生きとした状態にはならなかったが、垂れた首は持ち上がっていた。

「素晴らしい」

ハウエルが賞賛すると、ミレミアが笑顔を浮かべる。


「殿下、訓練を積めばミレミアの聖なる力が増し、聖女と呼ぶにふさわしい力が顕現(けんげん)するでしょう」

神官がミレミアを褒めたたえると、ハウエルも満足したようだ。

「ミレミアと申すか、貴重な聖なる力、楽しみにしている」

美形の王太子が笑顔を見せれば、破壊力はすごい。

頬を染めたミレミアが、王太子に駆け寄って手を取った。

護衛が止める間もなかった、あまりにミレミアと王太子が近い距離にいたからだ。

「不敬ですよ!」

クリスチーネの声が響いて、ミレミアがビクンと肩を震わせた。

「クリスチーネ!」

ハウエルが庇うように、ミレミアの肩に手を置いた。

「聖女はまだ慣れていないのだ。我々が導く立場にあるのに、(おび)えているではないか」


「そういうことではありません。

もし彼女が危険物を持っていたらどうするおつもりですか。殿下自身が御身を大事にしていただかないと」

クリスチーネが反論したのが、ハウエルは気にくわないのだろう。

「君はここで頭を冷やした方がいいだろう。

私は神官に説明を聞いてくる」

ハウエルがミレミアの肩から手を離すと、震えていたミレミアが顔を上げた。

「も、もうしわけありません。

誉めていただいたのが、うれしくって」

涙声なのが、後ろに隠れているシャルナ達にも聞き取れる。


あざとい、これで騙されるって王太子、バカなの。

シャルナの中でミレミア嫌いが成立した。


「クリスチーネは先に帰ったらいい」

礼拝堂から神官とミレミア、護衛を連れたハウエルがそう言い残して出て行くと、クリスチーネと護衛が一人残った。


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