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抑制力

今日も、教師の視線が熱い。

シャルナが提出した宿題は、教員室で大騒ぎになった。

シャルナの学力を試すために、専門的な問題を出したのに、シャルナの回答は完璧であった。

1年生が解けるはずもないからだ。


教室では、シャルナを中心に教師が授業をしている。

それが面白くないのは、ミレミアである。

同じように編入で入ったのに、ミレミアは教師の言う事は理解できない。

シャルナが平民であったというなら、教育の機会などないに等しい。自分と同じかそれ以下でないとおかしいと思う。


聖女である自分がないがしろにされるのは、我慢ならない。

ミレミアは、手の爪を噛み、瞳は怒りで燃えていた。

きっと、王太子の婚約者のクリスチーネの回し者なのだ。自分が王太子に気に入られているから、(うと)まれているのだ。


その日の昼休憩に、ミレミアはハウエルに訴えていた。

「あのシャルナは、平民じゃなく高等教育を受けたジブゼレラ公爵家の配下に違いない。

私を孤立させて、ハウエル様から離そうとしているのよ」

その場には、ミレミアとハウエルだけでなく、側近候補の学生も揃っている。

年上で側近として働いているジョサイアならば、状況判断をして王太子の抑制力となるのであろうが、学院にはいない。

側近候補達は、ハウエルをおだてる者ばかりで、ミレミアの言動が異常だと思ってもハウエルに進言したりはしない。


「だが、シャルナの知識は素晴らしい、と報告を受けている」

ハウエルは王太子として、国に恩恵を与えそうな人間として、学院長から報告を受けている。


「そんなことない。

担任のヤフレッツ先生が贔屓していて、答えを教えているからだよ」

ミレミアが偏見に満ちた観点で、シャルナの異常性を訴えると、ハウエルも1年生のシャルナが、クリスチーネの意で動いているかに思えてくる。


クリスチーネは嫉妬して、僕とミレミアを離そうとしているのか。

「シャルナの学力は問題があるかもしれないな。

僕から学院長に話をしておこう」

公爵令嬢のクリスチーネには、平民のミレミアに王太子妃の座を取られるのは許せないのだろうな。

ミレミアは聖女なのに、理解できないのか。

王太子ハウエルは、原因はクリスチーネにある、と考え始めた。


「さすが、ハウエル様。

よく分かっていらっしゃる」

ミレミアが尊敬のまなざしで見つめれば、ハウエルも悪い気はしない。


ジョサイアがこの場にいないせいもあり、ミレミアの暴走を止める者はいない。

ミレミアが根拠もないのに堂々と言い切る話には、ハウエル達のモラリティーで打破するのは難しい。

ミレミアの話が間違いであるという証拠を持っていないハウエルは、クリスチーネが自分に好意を持っていて嫉妬している、と考えた事でミレミアの話が真実のように聞こえてくるのである。





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