ぶつかる世界(後)
明日電子書籍版の最終巻が配信開始です!
よろしくお願いいたします。
「それは勘違いさせてそうだね」
「そうでしょうか?」
大地のかけらが舞う中で、文月とルルスがそれぞれの世界であったことを話している。わたしはなにも知らないし、両方の世界がすでに物理的に崩壊しているためにどういう世界だったのかもよくわからない。
「で、結局守らなかったのはどうして?」
「楽して、そちらの世界を壊すという決定をしたからです。それはフミツキも同じではないですか?」
「そうだけどね。あたしはそこまで干渉しなかったから、結局こうなるんだなーって見てただけだよ。むしろルルスちゃんがここまで干渉していたことにびっくりだよ」
「不本意ながらそうせざるを得なかっただけです」
「だろうね」
ぶつかる二つの世界。それぞれ、文月は魔法文明、ルルスは機械文明の世界に降りたって、各々世界の行く末を見守っていた。文月があまり世界に干渉しなかったのに対して、ルルスは結構世界に関わっていたらしい。正直逆じゃないかなと思ったけれど、情報伝達速度とか考えるとさもありなん。
世界が近づいた影響もルルスがいた世界の方が大きかったようだし。何かしら目立つようなことをしてしまえば、一瞬で世界中に拡散されるだろう。
「結局、どちらの世界も相手の世界を壊したわけですね」
「そうなるね」
「そうですね」
文月がいた世界も、ルルスがいた世界も自分たちの世界を守るために、近づく世界を破壊しようとして、思惑通り破壊できた。
ただ向こうも同じことを考えているということを失念していた。というか、意識するほどの余裕がなかったのかも知れない。ルルスのいた世界はルルスがいるからとおざなりにしていただけかも知れないが。
上の思惑としては、片方だけ無事だったらどうなるのかとか知りたかったのかもしれない。でもわたしとしてはすぐに仕事が終わるから、今回の結果で良かった。んー、終末神としては思うところはあるけれど、それよりも仕事が速く終わる方が嬉しい。今回の場合それぞれの世界の選択だし。
「それにしても、面倒くさい前例ができましたね」
「フィーニスちゃん的には変わらないんじゃない?」
「文月もルルスもわたしの部下ですから、勝手にって訳にはいかないんですよ。つまりわたしが起こされます」
「あー、そうなっちゃうのか」
「わたしを通さずに二人が動くと言うこともないので、それはそれでいいんですが。仕事の範囲外です、で大体突っぱねられると思いますし」
世界を救うというのは終末神の役割からは逸脱する。だから頼まれても受ける気もなければ、必要もない。
混沌神に秩序だった世界を作れと言うようなものだ。そのへんわかっている神ならよほどのことがないと、依頼すら出さないだろう。
「わたしが降りれる世界の条件がより明確化したというのが、大きいかもしれませんね」
「攻撃によって世界の核が破壊された段階でようやく降り立てましたね」
「仕事が増えることがなさそうで良かったです」
わたしも二人と同じようなタイミングで、となるとそれこそ仕事が増えそうだ。
できないのがわかっていたから、派遣されなかったのだけれど……わたしの使徒となると違うのかもしれない。二人は終末神じゃないし、世界に降り立てるという要素が色濃く出れば、わたしよりも条件が緩く世界に降り立てるようになったり? ならなかったり?
その辺はなるようにしかならないか。
「それじゃあ、世界も崩壊しましたし、帰りましょうか」
何はともあれ、お仕事終了RTAに勝利したので、早く帰って寝ることにした。