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chapter2-4 廃坑村

 余韻に浸り続ける間もなく、すぐにウキウキと剥ぎ取りをしようとしてしまうのはハンターの性だろう。

 剥ぎ取り用ナイフなどなかったはずだが、短剣でもいけるだろうか?

 まあやってみたら分かるか、と行動に移そうというところで、ぽーんというメッセージ音。



《レベルアップしました》

《実績:初戦闘を無傷で勝利、を達成しました》

《実績:初戦闘で格上と戦い勝利、を達成しました》

《実績:初戦闘を格上と戦い無傷で勝利、を達成しました》

《実績:最速で格上をソロ討伐、を達成しました》


《称号:触れるモノなし、を獲得しました》(アドルフ・グランバリウス)

《称号:ジャイアントスレイヤー、を獲得しました》(アドルフ・グランバリウス)



 メッセージボードにはいくつかのレベルアップ報告と、謎のアナウンスが流れている。

 このゲームのレベルアップは、ステータスが見えないので有って無いようなものだろう。そこははなからどうでもいい。

 その後に続く実績や称号というのはなんだろうか?

 テスターからの報告情報をまとめたものにも、それらの内容は含まれていなかった。

 秘匿されていた? それとも正規版の新要素?

 しかも、称号は表記される色も違うし、名前まで記されている。

 しばらく首をかしげながらメッセージボードを眺めていたが、まあ、分からないものは考えても仕方ない。後で調べよう。

 今はとにかく剥ぎ取りだ!


 モンスターの姿が消えてしまうかもしれないその前に、まずは剥ぎ取りができるかどうかの確認だ。

 試しに短剣で爪部分を剥ぎ取りにかかる。実際に鶏の解体はしたことがあったが、流石にあそこまでリアルじゃないだろう。ゲームシステムに守られていなかったら、グロテスクさと生命の神秘を感じすぎて青少年のトラウマは避けられない。

 爪の根本へ短剣を差し込むと、パンっと光が弾けてドロップアイテムとして爪が残された。どうやら剥ぎ取り可能部位に刃物などを当てると、入手可能らしい。

 取得可能か調べるために耳や尻尾など至る所に短剣をあてがっていく。

 結果、牙や尻尾などが剥ぎ取れ、最終的に毛皮を入手した時点で、狼の姿は光の粒となって消えていった。


 回数で言えば五回だが、これが他のモンスターにも当てはまるかはまだ分からない。もしかしたらサイズなどにも影響されるかもしれない。

 もしモンスターハンティングと同じように剥ぎ取り回数が一定なら、希少素材の入手は困難を極めるだろう。あの苦しみを思い出すとゲロを吐きそうだ。

 と、狼が消えた場所に、いくつかドロップアイテムと思われる光が残されていることに気がついた。どうやら剥ぎ取り以外でもきちんとアイテムを入手できるようにもなっているらしい。

 その辺りはやはりというか、ちゃんとゲーム的なんだな、となんだかしみじみしながら、腰のポーチへアイテムを仕舞った。

 とはいえ、モンスターを倒したらお金がもらえるというものでもないので、強い武器を手に入れるためにひたすら弱いモンスターを狩りまくるということができないだろう。

 私としては慣れ親しんだシステムではあるが、ゲームらしいゲームをやってきた人にはハードといえばハードか。


 戦闘に随分時間がかかってしまったが、現実ではまだ一時間半が経過したところだった。このボリュームでこの時間経過は凄まじいな。いつまででも遊べてしまいそうだ。

 とはいっても、おじさんは体力的にも時間的にも限りがある。

 さて、移動再開だ。なんらかの手掛かりを得るまでサクサク行こう。

 初戦を終えてからは森からの奇襲に備えつつも、敵に出くわすこともなく順調に進んでいた。

 しばらく平坦な草の道を歩いていると、急に視界が開ける。


「お」


 思わず声が出た。 森の木々が開けた場所に、切り株を見つける。明らかに人の手が入っている証拠だ。

 ゲームを開始してリアルタイムでおよそ二時間、ゲーム内ではそろそろ日が陰りだそうかという時間になって、ようやく人が住んでいると思わしき場所へ到達できた。

 マップに表示されているだろうか、と確認する。そこには確かに、この先に村のような場所が映し出されていた。

 しかし。


「廃坑村……?」


 思わず、がっくりとうなだれた。

 名前すらない、棄てられた坑道。恐らくそれを中心にした村が広がっていたのだろう場所は、既に人の手を離れているという。

 確かに種族をドワーフにはした。らしいといえばらしいだろう。

 だがここまで来る間に、一人のプレイヤーにも、NPCにも遭遇していないのだ。ようやくたどり着いたのは人が居ない場所。

 私は今、本当にオンラインゲームをプレイをしているのだろうか?


 しばらくうなだれていたが、とにかく確認が先だ。もしかしたら、なにがしかの管理をしている人間がいるかもしれない。

 少し冷静になって考えてみれば、廃坑になったとはいえ森が村に迫っておらず、刈り倒された形跡があったのだ。ということは、まだ人が居る可能性があるということだ。

 わずかに気力を回復した私は、再び歩を進めた。

 それほど時間もかからず、村にたどり着いた。確かに、今にも崩れ落ちそうな家屋が目立つ。

 だが、半数ほどがすぐにでも住めそうくらいに整備されている。やはり誰か居る。

 村内に踏み込む前に、念のため大声で呼びかけてみる。


「おおい! 誰かいないか!」


 しばらく返答を待ったが、自然音以外なにも捉えられない。

 そろそろと歩を進める。


「誰か居たら返事をして欲しい! 村に立ち入る許可をもらいたい! 話ができないか!」


 声を張り上げながら村の中に立ち入る。

 ここまで全く反応なし。ゲーム的に用意されただけで、本当に誰も居ないのだろうか?

 だが、ここまでリアルに作り込まれたゲームでそんなことがあるものだろうか。

 不安がよぎったその時。

 ガラリ、と右側で物音がした。


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