chapter6-1 フレーム回避について
説明回なので短め。
詳しくは端折りましたが、もしご意見あればお待ちしております。
一夜明け、有給最終日。
朝から全ての準備を万全に整えた私は、気合を入れてログインする。
今日一日の間に、なんとかフレーム回避を習得したいところだ。
そもそも、フレームとはなんなのか。
最も簡単な説明は、パラパラ漫画である。
映像はすべて連続して流れているように見えて、実はこのパラパラ漫画の要領で動いている。
FPSやフレームレートと言った言葉を聞いたことはないだろうか?
ここで言うFPSとは、ゲームジャンルとしてのファーストパーソン・シューティングゲーム(First-person Shooter)ではなく、単位としてのフレームパーセカンド(Frames Per Second)のことである。
例えばモニターゲームや動画再生などで、三十FPSや六十FPSなど書かれているものだ。
これは、一秒間に使われる静止画の枚数のことを指している。
単純な話、一秒間に使われる画像の枚数が多ければ多いほど、細かな部分まで滑らかに見え、少なければ歯抜けのように省略される部分が出てくるということだ。
一枚ページをめくるごとに、少しずつ動いていく。この一ページが、一フレームだ。そしてその枚数の数を示すのが、フレームレート、FPSという単位なのである。
さて、それを前提として、フレーム回避だ。
例えば、走っている人が壁に激突するパラパラ漫画があるとしよう。
これを一枚ずつ見ていくと、人と壁がぶつかる瞬間の絵というのはない。あるのは、走っている人と、迫る壁、ぶつかった後である(壁に触れている時点でぶつかっている)。
もちろん描いた枚数によるが、ぶつかるまでの間、事細かに描いたとしてもぶつかる前と後の絵は必ず存在する。
このぶつかる前と後、この瞬間に回避行動を挟むのが、フレーム回避だ。
この回避行動にもいくつか種類はあるのだが、大まかには回避か技の発動である。
細かく話すと長くなるので割愛するが、人がぶつかる前と後の絵があるように、技や行動にも、動き出す前と後の絵が必ずある。
そして、その行動によってはその動作の瞬間が優先されるものがあるのだ。
その優先される瞬間を利用して、相手の行動を阻害または割込みをする。
フレーム回避とは、そういった技術なのだ。
長々としてしまったが、これが私のこれからやることの説明でもある。
つまりこれから私がやることは、このタイミングや優先される動作をひたすら探っていく作業、ということだ。
そんなこと人間が出来るのか、と思う人もいるかもしれない。
やったことや見たことがある人なら分かるが、出来るのだ。
もちろん懸念がないわけではない。
私は一度ガルム戦にて、フレーム回避と思わしき現象を起こしている。明らかに当たり判定がおかしくなっていたからだ。
ただ、モニターゲームと違い、このゲームはフルダイブVR。大衆向けVR機がどれくらいのフレームレートで稼働しているのかが分からない。いかにリアルが売りだとは言っても、それを認識する側にも流石に限度がある。
人間が通常認識出来るのは六十FPSくらいだそうだ。極度に集中している状態でも、二百四十FPSくらいらしい。ここまで来ると一般人ではほぼ不可能で、一部のスポーツ選手やプロゲーマーなど、才能ある人物が訓練を重ねた末にたどり着ける領域だ。
仮に、VR機が二百四十FPSで稼働していた場合、フレーム回避は至難の業だろう。何せ一秒間で二百四十枚が映し出される中の一、二枚の瞬間を見つけ出そうというのだから。
だが、絶対に習得してみせる。
あれば便利だとか、理由は様々だが、結局のところはただひとつ。
私が習得すると決めたからだ。
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