chapter5-7 必要性の実感
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敵に指示役が居る場合、最も厄介なのはこちらの動きに対処されることだ。
行動、癖を見て、それに適応してくる。
まあつまりは、私がいつもしていることをやり返されるということなのだが。
「モンスター目線だと、こんなに! 鬱陶しいものなんだ、な!」
避けて、攻撃。先ほどまで通用していたその動きが、既に通用しなくなっていた。
そしてなにより、こちらが立ち位置を変える隙を与えない、波状攻撃。腕への噛みつきを避けたそばから足を狙われる。武器を振るおうすればさっと身を引き、その背後から突進を受けた。
俊敏性の増した体、振り向きざまに杭を穿つ。脇腹への命中、致命傷の手ごたえを感じた。
だが、それを確認している暇もない。槌を持つ手が一瞬動きが遅れることを見て取った群れのボスが、すぐさま右手を狙う。
これは避けられない。ならば被害を最小限に。
噛みつきを受けたその瞬間、眉間へ向けて鉄杭を振り下ろす。が、やはり予測されていたのだろう、かすりもせずに後退された。
攻撃を受けてしまったが、ここで一旦小休止となった。
いや、確実に仕留めるためのポジショニングか。ボスの一声で、パッと散る。私の周りをあっという間に囲んだ。
攻撃を受けた腕の動きが鈍い。痛覚があれば間違いなく激痛が走っているはずだ。ゲームで助かった。
さて、そうも言ってられない。回復薬を使いたいが、間違いなく敵はその隙を見逃さないだろう。怪我を押して戦い続けても、正直勝ち目がない。
集団戦に慣れているなど、どの口が言うのか。結局アイテムがなければ何もできない。思い上がりも甚だしい!
せめてフレーム回避が出来れば、攻撃を受けることはなかったはずだ。足りない部分はプレイヤースキルで補わざるを得ない。
とはいえ、この状況をどうしたものか。
持久戦はこちらの不利だ。数で負けていて統率もされているのでは、死に戻りは時間の問題。
じりじりと間合いを詰めてくる狼たち。次の襲撃が恐らく耐えられる最後だろう。
じわりと、焦燥が胸の内を焦がす。
……死に戻りはペナルティがついたりするのだろうか?
最悪は、想定しなければ。
右側から、敵が駆けてくる。明らかに怪我を負って反応の鈍い側を狙っていた。
バックステップで避けるが、後ろから衝撃。前へとつんのめる。体制を崩しながら振り向きざまに杭を突き刺そうとするが、既に居ない。
そして、無防備な横っ腹へ、食いつかれる。
それを機に、殺到するモンスターの群れ。
これは、無理だ。
なら、やるしかない。一匹でも道ずれに。
鉄杭を強く握り絞め、迫る狼を迎え打とうとし。
「目を閉じろ!」
聞きなれた声、咄嗟にその指示に従った。
ぼふん、と何かが弾ける鈍い音がしたかと思えば、狼たちがきゃいんきゃいんと悲鳴を上げている。
そして私にもその効果が表れた。
恐らく何か香辛料のようなものが混じっているのだろう、つんと鼻をつく臭いを嗅ぎ取った直後、激しくむせた。
「立てるか! 逃げるぞ!」
切迫した声と共に、体を抱き起こされた。咳き込んで満足に出来ない中、肩を支えられながら可能な限り全力で離脱する。
むせ返り涙で滲む視界で状況を確認すると、狼たちは既に姿を消した後だった。
「こっ、こんな、もの、あるなら、渡して、おっ、おいてくれ!」
「護身用だ! 一個しかねえ! 後、遭遇してから使ったら、自爆にしかならん!」
確かに、その効果は実感している最中だが。
幾分落ち着いてきた呼吸の間、私は、絶対にフレーム回避を習得することを決意した。
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