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chapter5-3 アップデート情報

 探索を続けているうちに、入り口から三列目の分岐点までを全て踏破することに成功した。

 出現するモンスターはゴーレムばかりだったので、それほど苦労はしなかったが、一度だけ天井から降ってきたことがあった。

 あれには少々、いや大分驚かされた。

 幸い落下位置がずれていたおかげで難を逃れたが、全く気が向いていなかったので危ないところだった。

 上からの攻撃や襲撃も注意しなければならないのだが、目に見えない範囲についてはなかなか、難しいものがある。まあこれも収穫といえば収穫だ。

 それと、動き続けているうちに疲労が溜まっていくのを実感していた。

 過去二回は、一度の戦闘を長く続けていたが、ここまでの疲労を感じたことはない。基本的に大きく動くことがなかったせいもあるだろうが、恐らく連続で戦闘や移動をしていると疲れやすい、といったギミックがあるのだろう。

 その辺りの対策は、ゲーハスの調合待ちになる。


 さて、強制ログアウト時間はまだ先だが、一度休憩した方がいいだろう。一旦坑道を出ようか。

 帰り道、入手できた情報をまとめる。

 まず、モンスターの出現場所は分岐点となる岩のドーム内だけのようだ。

 通路内では、少なくともゴーレムは現れず、必ず分岐点の中へ足を踏み入れたときに出現していた。ある程度のスペースがなければ駄目なのか、そういう設定なのか分からないが、気を付けるべき場所が分かりやすいのはありがたいことだ。

 それと、一度倒したエリアからはリポップしないことが分かった。

 ゲーハスの話を思い返すと、ロックドラゴンは生まれ落ちた瞬間から、岩製モンスターを生み出していたと言っていた。

 つまりゴーレムは、ロックドラゴンからしかポップしない可能性があるのである。

 もちろん、時間経過で再び出現する可能性はある。十分注意しなければならないことではあるが、もしも仮説が正しければ、ひたすらゴーレム狩りをしていれば、いずれロックドラゴンの居る深部へたどり着けるかもしれないのだ。

 まあ、仮にそれができたとして、やるかどうかはまた別問題ではあるが。

 なにはともあれ、今回の坑道探索は一旦ここまでだ。

 切りよく外へ出れたので、ゲーハスに一言断りを入れる。二度同じ過ちはしてはいけない。


「三層目まで探索を終えた。今日はここまでにするよ」

「分かった。朝言っていた回復道具類だが、明日にはとりあえず一式出来上がるぞ」


 素晴らしい!

 私はゲーハスにくれぐれも頼むと頭を下げて、彼の家を辞し、自宅でログアウトをする。時間調整はしない。二時間か三時間か、しっかりと休息をとるつもりだ。ゲーム内では夕方なので、再開したら恐らく早朝。ちょっと早いぐらいか。

 どうせだったら晩御飯の準備までしてしまおう。

 そうしてゲームから現実へと浮上する。感覚的にはまさしく浮いていくような感覚で、目が覚めていくような感じだ。

 まだ慣れたとは言えないが、どうしても抵抗があるというほどでもない。


 とりあえず、昼食を食べながら情報収集をしようか。

 私は適応な素材で焼きそばを作ると、それをすすりながらパソコンの電源を入れた。

 昨日は称号について未だ情報が流れていないようだったが、再び調べると、なんと詳しい内容が更新されている。

 称号の取得条件や効果の詳細は不明のままだが、取得した場合にどんな作用があるのかは分かった。

 それによれば、どうやら称号に沿った何かしらの補正、またはオリジナルスキルといったものが手に入るようである。


 正直それほど魅力は感じないのだが、私は既に四つも称号を取得してしまっているので、今更いらないだのなんだの言っても仕方がない。

 返却できるのならしたいが……まあ手に入れてしまったのだから、うだうだ言っているよりも、有効利用を模索したほうが有意義か。


 続いてゲート・オブ・バスティアンのホームページだ。

 公式発表のアップデート情報などが事前に通達されることがあるというので、今のところはログアウトの度に確認している。

 現実の写真と見まがうようなゲーム映像が流れ、トップページが浮かび上がってくる。《お知らせ》の欄を見ると、アップデート情報があった。

 まだサービス開始から幾日も経っていないのに、随分早いな。バグでもあったか?

 内容を確認すると、明日新しい要素が追加されるようだ。どうやら、街に転移屋なるものが出現するらしい。一度行ったことのある街などへ瞬時に移動できる優れもののようだ。しかも同時に五人まで跳べるようで、誰か一人でも行ったことがあれば、一緒に移動できるらしい。

 戦闘の苦手な初心者や生産職が場所を移動するには、最高のシステムだ。

 距離に応じて料金は変わるようだが、流石にそこまでシビアな価格設定にはならないだろう。でなければ、利用できる人間が攻略や戦闘の得意なものに限られてしまう。そうした優劣の付け方は好まれないはずだ。


 このアップデート、そもそも最初から決められていたことのようである。見れば、サービス開始からリアルタイムで三日目から出現予定だったと書いてあった。

 ちょうどその日が有給最終日だ。タイミングもあって、ワクワクする。

 できたら廃坑村にも表れて欲しいが……まあ無理だろうな。

 そもそも転移屋が出来たとして、あの村にたどり着いているのが私一人だ。もし誰か呼び込むとしたら、私が他の街に行く必要がある。

 行きたいのは山々だが……今は難しいだろうなあ。

 どれくらい時間がかかるか分からない。その間にゴーレムが溢れ出したら、クエストは失敗だ。そうなったら、再びグランドクエストが出現するか分からない。

 まあとりあえず、時間稼ぎのために少しずつ現状を改善していくしかないか。 私はモニターの電源を切った。

 さて、ゲームの世界を楽しむのも良いが、まずは洗濯物を取り入れて畳まないとだな。

 ……男やもめの悲しい現実ではあるのだが、ね。

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