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chapter5-2 威力偵察

 随分と話し込んでしまったと思っていたが、ゲーム内では三時間、現実で一時間程度しか経っていなかった。

 私は、これは時間の間隔が狂いそうだなあ、などと呑気に捉えているが、現実時間の表示を見えない設定でプレイしている人間はどんな体感なのか気になるところだ。

 一日がとてつもなく長く感じるのだろうか? 私生活で何か悪い影響がないと良いが。

 ともかく、活動再開だ。強制ログアウト時間までゲーム内で十五時間もある。それまでに、何か一つでも情報を集積したい。

 ゲーハスによれば、道具の作成は一日程度で出来るという。元々持っている素材も多いようで、それぞれ五個ずつはとりあえず確保出来そうだ。

 となれば、今日出来るのは坑道探索くらいだが……。

 そのためには重要なアイテムが必要だった。


「ゲーハス、坑道の地図はないか?」

「ない」


 至極あっさりと希望は切り捨てられた。

 うん、なるほど。


「ゲーハス、国の再建は諦めてくれ」

「いや、待て待て。地図はないが、大体の構造は知っている。すべてじゃねえが、書き写そう」


 そう言って、パピルス紙のようなものに線を描きだした。

 興味深くそれを眺めていたのだが、次第に雲行きが怪しくなっていった。

 彼の描くものが、入り口を除いてほぼ全てが+と〇のみなのだ。


「すまない、遊びはそこまでにしてくれないか」

「な、なんでだ! こっちは大真面目に描いてんだぞ!」

「これは地図でもなければ構造でもない。暗号だ」

「本当にこんなもんなんだよ……俺のじじいは鉱夫だったから間違いねえ」


 そう言って、彼は〇と+が重なった場所同士を線で繋げていった。

 そうして全体像を見れば、なるほど確かに、地図として見れなくもない。

 〇と+が合わさった印は分岐点を現しているのだろう。それを線で繋げると、網目状に広がる坑道、というわけだ。

 まあ分からないことはないが、これだけではなんとも……。

 頭を掻きながら多難な前途を想っていると、ふと閃いた。

 急いでホーム画面を呼び出して、マップを開く。すると、廃坑入り口と書かれた場所がタップできるようになっていた。

 押してみると、ゲーハスの描いた地図がそのまま表示される。

 やはり。地図や特定のアイテムは、ホーム画面などに表示の更新がされるようだ。

 まあ、当然といえば当然だ。いくらまるで異世界をうたっていてもゲームはゲーム。手書きの地図を一々持ってなければいけないというのは、効率が悪すぎだ。

 これで心置きなく探索が出来る。

 私はゲーハスに深々と頭を下げて感謝し、照れたように頭を掻く彼を背に家を出た。


 新しいカンテラを手に、再び坑道を進む。

 ゲーハスの話によれば、ゴーレムなどは元々今よりももう少し奥地に居たようで、ここまで浅い場所へ現れるようになったのはごく最近のことのようだった。

 マップを開くと、自分の居る場所がきちんと表示されていて、小さな感動を覚えた。これだけでとてつもなく快適になったように思える。

 今居る場所から少し進むと最初の分岐点があって、昨日はそれを右に進んだ。まずはあの分岐点へ行って、ゴーレムが再びポップするのかを確認するところからだ。

 もしもそこでポップしない場合は一旦戻り、今度は別の分岐点へ向かう。

 そうして、どの程度の場所までゴーレムが迫っているのかを確認しよう。


 道中は特に何事もなく、ゴーレムの出現した場所までたどり着く。今度はカンテラを破壊されないよう、置いておく場所に注意して慎重に周囲を観察した。

 しばらくうろうろと動き回ったが、ポップしていないようだ。

 壁沿いに調べていて分かったことだが、ゴーレムが潜伏していたと思われる場所は若干の窪みがある。これが最初からあるのか、ゴーレムが掘ったのかは謎だが、とにかく手がかりの一つにはなるか。

 倒した場所が明確になるので、もし次にここへ来たときこの窪みが埋まっていれば、ゴーレムが居るということになる。


 情報収集を終え、来た道を引き返す。最初の分岐点へ戻ってくると、今度は入り口から向かって左へ向かう。

 マップによれば、この通路は右に比べ短く、すぐに分岐する場所にたどり着けるようだ。

 私は道中、鉱石の反応がある度に後ろ髪を引かれながら進んでいった。

 今回は採掘目的ではないので、仕方がないと自分に言い聞かせながら、ゴーレムを排除したら絶対に採ろうと心に決める。

 分岐点は確かにすぐだった。そしてゴーレムが現れたのもすぐだった。

 今回は四体、前回に比べドームが小さいのもあるのか、数は少ない。

 私は通路へカンテラを置くと、採掘道具を取り出した。

 油断はしない。強敵と戦う時に限って、こうした通常モンスターからダメージを貰ってクエストを失敗したことが何度かあった。しかし、一度見切った相手に遅れはとらない。

 そこからは、ほとんど流れ作業だった。昨日に比べ鉄杭の刺さりが良く、簡単に部位を削り落とすことが出来た。

 なにかしらの補正が効いていることは間違いない。微妙な差といえばそうだが、私からすれば明らかな違いだ。

 すべてのゴーレムから核を掘り出し、この分岐点の確認を終えた。


《レベルアップしました》



 それほど意味はないが、またレベルが上がった。もしかしたらレベルも規定値が必要になる場合もあるのだろうか?

 まあ、それは置いておくとして。

 これほど楽に倒せるのなら、フレーム回避の検証も出来るのではないかとも考えたが……やめておこう。

 やはり、しっかりと回復できることを確認してからがいい。仮に攻撃を貰った場合、どうなるか分からないのでは困る。

 とりあえず、もう少しだけ他の場所を見ておこうか。

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