chapter1-2 キャラクターメイク1 名前と種族
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目を開けると、目の前に何も身に着けていない自分自身が立っている。
左上にはプレイヤー名、その下には種族、更に下には体格や顔の造形を調整するスライダーが並んでいた。
どうやら自分の姿形をベースにして、キャラクターを作成できるらしい。初めにスキャニングなどで時間がかかっていたが、こういうことだったのか。
種族は六つ。左から順にヒューマン・エルフ・ドワーフ・フェアリー・ドラコニアン・獣人※とあって、獣人だけはいくつかのバリエーションが用意されているようである。
試しに選んでいくと、映し出された自分の体がそれぞれの種族に見合った特徴を持って変化していく。それを更にスライダーで調整できるというのだから、この時点で自由度はだいぶ高いように思えた。
とはいえ、いきなり多くの選択肢を出されてもおじさんには理解に厳しいところがある。 私は迷いなくヘルプを呼び出した。 ポーンというアナウンス音の後、女性の声がどこからともなく響いてきた。
「ヘルプをご利用下さり誠にありがとうございます。只今からキャラクターメイクの説明を開始いたします。それぞれの項目ごとに紹介いたしますので、不要な項目の場合はスキップとおっしゃってください。即座に次の項目の説明に移ります」
必要な項目だけを聞くこともできるようだ。
まあ、ゲーム自体が久々なおじさんはすべてを聞くのだけれど。
「初めにプレイヤー名です。一二字以内で好きなお名前を入力ください。他のプレイヤーの名前と混同してしまわぬよう、後にお選び頂く種族にはそれぞれ固有の苗字が存在しており、ランダムで選出されて命名されます。同一の名前の場合、別々の苗字になるよう調整されますので、個別に認識することが可能ですのでご安心ください。続けて名前を入力できます。次の項目に進む場合はスキップとおっしゃってください」
んーむ、なるほど。好きな名前をつけられる代わりに、苗字がランダムで付随するのか。
フルネームで入力した場合どういう名前の表記になるのだろう?
種族名みたいに、ミドルネームのような形になるのだろうか?
まあ、私はフルネームにする予定はないのでいいだろう。
ゲームタイトルに入っているバスティアンだが、恐らく関係ないだろうがドイツの民俗学者で「民俗学の父」と呼ばれるアドルフ・バスティアンという人が居た。
私はその学者の名前を借りて、プレイヤー名の欄に『アドルフ』と入力する。一応引用元があるとはいえ、無難といえば無難か。 プレイヤー名を確定すると、ヘルプが自動的に先へ進んだ。
「次に種族です。全部で六つある種族はそれぞれに特性を持っています。一度設定した種族は変更できませんのでご注意ください」
変更できないのか、じゃあここが一番重要かもしれないな。しっかり吟味しないといけない。
「ヒューマンは最も安定した種族です。これといった不得意がありません。ですが、特出したものもありません」
……安定しているのはプレイングの上で重要な点だろうが、なんというか、世知辛い種族だ。
「エルフは最も器用な種族です。繊細なことは彼らの右に出るものはいません。魔法適正も高めです。ですが、力が必要な場面では頼りになりません」
ん、力は弱いのか。ということは、従来の弓が得意というイメージとは違う?
いや、魔法適正が高いのなら、直接弓を引かなくてもいけるか?
器用さを売りにしたプレイも面白そうだ。
「ドワーフは最も力強い種族です。世界の力自慢のほとんどが彼らです。小回りも利きます。ですが、細かいことは苦手です」
ドワーフと言えば小柄で力強く、ずんぐりむっくりひげもじゃというイメージだが、その通りと言えばその通りか。
単純に力強いというのは興味をそそられるが、細かいことが苦手というのが気になる。器用さとは違うのだろうか?
「フェアリーは最も魔力の高い種族です。魔法適正は群を抜いています。俊敏性もかなりあります。ですが、耐久性のなさも群を抜いています」
ここまでで一番尖ったプレイングになりそうな種族だ。回避型の魔法使いだろうか? 鈍重よりはいいが、耐久性のなさがどう出るか気になる。
「ドラコニアンは最も耐久性に優れた種族です。天然のスケイルメイルは驚異的の一言。力や魔法適正もあります。ですが、俊敏性のなさは如何ともしがたいでしょう」
この種族を選ぶプレイヤーは間違いなく盾職の人間だろう。ガチガチに固めた固定砲台だろうか?
好みではないが、仲間に一人は欲しいタイプだろう。
「獣人は最も俊敏性の高い種族です。彼らに追いかけっこで勝てる者はいないでしょう。攻撃性も高いです。ですが、器用さとは無縁のようです」
どのタイプの獣人も俊敏なのだろう。戦闘職には向いているかもしれない。しかし、生産職でプレイしたい人間にとっては絶対に選ばない種族だろうな。
よく考えたら、器用さと無縁ということは、手に長い爪や肉球があるということだろうか?
もしそうだとしたら、考えていたものよりだいぶ獣だな……。
「続いて種族を選択できます。次の項目に進む場合はスキップとおっしゃってください」
さて、迷いどころだ。
こういった重要な選択をしなければならないときにまずすることは、自分が何をしたいのかを決めることだ。
ひたすら戦闘がしたいのか? 生産一本でいくのか? そうした自分のやりたいこと、やってみたいことがこの先の方向性を見出させてくれる。
私はVRが登場するより以前、モンスターをハンティングするゲームにドはまりしていたことがある。一人でどこまでできるのか試したくて、ソロで高難易度のクエストをすべてクリアし、全武器でタイムアタックまでしていた。
若かりし学生時代の思い出である。
ゲート・オブ・バスティアンを久々のタイトルに選んだ理由も、そういったプレイヤースキルを試せそうだからだ。
ステータスを伸ばしていくゲームにはどうも食指が伸びなかった。モンスターをハンティングするうえで武具を揃えたりはするが、キャラクターの能力は伸ばせない。それぐらいがちょうど良かったからだ。成長の仕方まで数値で選べるんじゃ、それを否定するわけではないが、私には合わなかった。
自由度の高いゲームで、自由に自分の力を試せる。
生産は出来るに越したことはないが、それに情熱を捧げる人間に任せた方がいい。なんなら貴重な素材を回してあげた方が喜ばれそうだ。
さて、そう考えると。
まず真っ先に、器用さが売りの種族は除外だ。ヒューマンは突出していない。エルフは面白そうだが、生産をしないならダメだ。
ドラコニアンは単純に特性が好みじゃない。
残る種族はドワーフかフェアリー、獣人だが……。
フェアリーは正直楽しそうだ。回避特化で魔法乱打なんて面白そうじゃないか。紙装甲なんて、当たらなければ関係ない。
ただ、問題がある。
多分、体がとても小さいのだ。
種族選択で選ぶと、他と比べて明確にサイズが違う。細かい部分を見れるようズームアップしていてこれなのだから、実際はもっと小さいはずだ。
それがどうにも、合わなそうだった。流石に初めてのVRでそんな際立ったものを選ぶ気にもなれないし、なにより慣れるのに時間がかかりそうだ。
獣人もそう。基本二足歩行なんだろうが、獣の特性を色濃く残しているならば、四足歩行でスキルが出る可能性はある。そうなると単純に難易度が高そうだった。
消去法にはなるが、ここはもう一つしかない。
パワープレイ大いに結構。
プレイヤースキルで力と手数でDPSの最大値を叩き出し、ひたすら攻めるスタイルは得意なんだ。
私は種族入力欄に「ドワーフ」を選択し、確定をした。
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