表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/30

chapter4-2 クエスト

土曜日まで毎日投稿します。

少し短めが続くと思います。

 拗ねたおじさんほど厄介なものはない。

 なまじ経験を得てる分、誤魔化そうとしても、


「言い訳か?」


 と一言で切って捨ててくる。

 別の話へうまく誘導しようとしても、あ、こいつ誘導しようとしてやがる、という顔をする。

 そして更に拗ねる。

 お手上げだ。若い部下の手綱もうまく引けていないというのに、おじさんドワーフの取り扱いなど出来るはずもない。

 最終的に、シンプルに一言、


「すまん」


 と言った。

 ゲーハスはしばらく無言で睨んできたが、最終的には鼻を鳴らして、顎で椅子への着席を促してくる。

 なんとか許しを得れたようだ。

 私が何故ゲームで同性の同世代ドワーフのご機嫌取りをしなければならないのかは、考えてはいけないことだ。


 機嫌を直したゲーハスは、鉱石やゴーレムについて多く質問をしてきた。

 それに一つずつ答えていき、入手した鉱石すべてを見せる。いくつかのものに唸りながら頷いていたが、やはりというべきか、ゴーレムの鉱石には強く反応しているようだった。


「これをどうやって手に入れた」

「採掘道具で戦って体から掘り出した」


 ゲーハスは呆れた様子でため息を吐いた。


「何を考えりゃ、そんなもんでモンスターに立ち向かえるのか分からねえ」

「鉱石なら鉄杭と鉄槌が一番だろうと思って」


 体が岩だったことだし。

 それを聞いて、ゲーハスはもう何も言わなかった。

 しばらくむっつりと黙り込んだままゴーレムの核を眺めていた彼だったが、


「もう一度聞く、ゴーレムは浅い場所に出たんだな」

「ああ。最初の分岐点を右に進み、次の分岐点で集団で現れた」


 私の答えに、ゲーハスはどこか諦めたようにため息をついて頭を振った。


「……いよいよ駄目か」

「何か問題だったのか?」


 彼はその問に答えなかった。

 正直、これ以上のことを聞くことは躊躇われた。

 私はこのゲームを初めて日が浅い上に、恐らくだが真っ当なルートを辿っていない。なにせ、事前に得た知識と現状が違いすぎるものだから、私だけ別のゲームをやっているのではないかと思い始めていたくらいだ。

 出会ったNPCは彼だけだし、プレイヤーとすら遭遇していないのだ。情報交換が出来ないし、何が正解なのかも分からない。

 そんな知識不足の状態で、迂闊に踏み込んで何か失敗をしたとして、それを取り返せる自信は私にはなかった。

 そもそもMMOというジャンルが初めてだというのに。誰かセオリーを教えてくれないだろうか。

 考え出すと段々と気分が沈み込んできた。

 沈黙が部屋を満たす中、ゲーハスがおもむろに口を開いた。


「話すと長くなる。聞くか?」


 まさか彼が話す気になるとは。

 逡巡し、私が返事を考えていると、ぽーん、とメッセージ。


《クエスト:廃坑村の成り立ち 聞く 聞かない》


 まさかの初クエストが発生した。

 これが討伐か採取クエストなら、私は喜び勇んで受注していたに違いない。

 それなら慣れているし、なにより楽しそうだ。

 だが、こういったゲームのクエストとなると、途端に尻込みしてしまう。知識がないからだ。

 しばらくどうしようかと頭を悩ませていたが、私は意を決した。

 何事も、初めてというものは誰しもに訪れる。それをいつまでも先延ばしにすることは、やって失敗することよりも後々負担がデカいものだ。

 私はゲーハスの目をしっかりと見返して、頷いた。


「聞こう」

コメント・評価・ブックマークお待ちしております。

作者のモチベーションになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ