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誘い

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「こんばんは、楽しんで頂けましたか?」

ワンピースの裾をフワフワと揺らしながら白髪の青年に問いかけてみた。

もうすぐ次の日へと移り変わってしまう時刻。

店長の仕事終わってよし!の合図をみて即座に会話を試みる。


「うん~こういうところは初めてだけど楽しいもんだね」


お酒が入っているからか更に軽そうな雰囲気だ。


「あら、そうなんですか! あっ、失礼しました。私はリディ。

一応歌姫やってます!」


「よろしくね~リディ。 俺はえっと、ロイだよ」


「ロイ…。はい、よろしくね!」


やっぱり猫みたいだな。目を細めたところ何て本当にそっくりだ。暫くは平和な時間が続く。



⎯⎯⎯⎯⎯



「へえ…。ロイに()弟がいるんだ」


「うん!俺が一番上だよ。弟に、凄くかわいくて、格好いいのがいるんだ!さすがは俺の弟!」


「ふふ、仲がいいんだね」


「まあね~!も、ってことはリディにも弟がいるんでしょう?

どんな感じ?あ、俺実は妹がめちゃくちゃ欲しいんだよね!妹もいたりする?!」


「いや、妹はいないよ。えっと、弟はふわっとした髪が可愛くて、私より十下だよ。…私も弟は大好き」


「ふわっとした髪はリディも可愛いよ?ふーんこんな髪なんだね、弟さん」


髪を一房くいっと持ち上げられ、少し照れる。

そうだった、私と弟は似てたんだっけ。…弟、サンが少しは元気になってるといいな。


「うん、ありがとう。ロイ」


嬉しかった。素直にそう思えた。


「うわ…えっと、どういたしまして」


ふふ、頬にほんのりと朱が混じった。可愛い人だな。


もうすぐ楽しい時間にも終わりがきてしまう。

それまでは、せめてこの穏やかな時間を楽しもう。



⎯⎯⎯⎯⎯



「あっ、やべっ!もうこんな時間、俺帰るね!今日は凄く楽しかった、またね!」


「まって、ロイ!」


誘わなくてはならない。


「ねえ、ロイ。私そのね…お金に困ってて…。私を、買わない?」


店長や店の皆にばれたら即、首だ。顔を近づけ、小声でしゃべる。


「え、あれ?ここってそういう店だったの?」


いいえ、ここは単なる酒場です。おかしいのは私だけ。


「ううん、違うの。私ここのお給料だけじゃやっていけなくて…。でも…そういうことって、好きな人としかしたくないでしょう、だから…」


「えーと、俺たち会ったばかりだけど」


「初めて見たとき、ロイの周りが輝いて見えたの!それに喋ってても凄く楽しかった。…駄目、かな?」


自分で言ってて相当うすら寒い、嘘だらけの言葉を紡いでゆく。でも、そうしないとと生活ができない。

彼の目には戸惑いが浮かんでいた。無理もないことだ。



「女は労働力として男よりも弱い」


親にそう言われて、二年前の14歳にに口減らしのためにここに送り込まれてからずっと一人で働いてきた。

…三ヶ月前からは仕送りも始まった。

それで足りなくなったお金は、ずっと、こうやって。


三ヶ月前から始めて彼はもう三人目。

そうやって、私は生きている。


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