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17.謹慎

 真奈の意外な言葉に、次郎は目をぱちくりさせた。


「氷室さんの知り合いなの?」


「うん。お姉ちゃんは、襟戸中学に通っていたからね。そのとき、よく一緒にいたみたいだよ」


「へぇ」


 楽しそうに友達とお喋りする恵麻を想像し、次郎は胸がざわつく。やはり彼女は、光の住人だった。


「ただ、いろいろあったみたいで、今は、そんなに仲良くないみたいですね。『次元の魔王』に関しては、良い噂を聞きませんし」


「確かに、あのアフロもそんなことを言っていたな」


「お姉ちゃんが襟戸じゃなくて、只高に進学したのも、その辺が関係しているのかもしれません。その辺のところは話してくれないので、よくわかりませんけど」


「……なるほど」


「だから、次元の魔王について知りたかったら、お姉ちゃんに話を聞いてみるのも一つの手かもしれませんよ」


「わかった」


 しかし、いろいろな事情があるみたいだし、恵麻に聞きづらい。もしも、それがきっかけで恵麻から面倒な奴と思われたらどうしよう。そんな風に考えたら、二の足を踏んでしまう。


(……まぁ、自分で何とかしてみるか)


 有名人みたいだし、ネットで情報を調べれば、何かがわかるかもしれない。


そして、店の前で真奈を見送り、次郎はさっさと家に帰った。


「明日から謹慎か~」


 謹慎中は家をリモートで監視されることになっている。正直、魔法を使えば、誤魔化すことなどたやすいことだが、誤魔化してまでやりたいことがあるかと言えば、とくにないので大人しく従うことにした。


 そして始まる謹慎生活。とくに何かが起こるわけでもなく、真面目に勉強する姿を、画面の向こう側にいる教師に見せながら、勉強に勤しんだ。休憩中に、『次元の魔王』について調べてみる。やはり有名人なだけあって、噂レベルの話は、SNSを中心に広まっている。しかし、彼がどこにいるかについての情報は、書き込みがなかった。


「まぁ、魔王といえど、プライバシーはあるか」


 調べても結果が出てきそうにないので、次郎は調べるのをやめた。


 一週間後。次郎は久しぶりに登校した後、恵麻の喫茶店でため息を吐いた。その顔はお疲れである。


「どうだった? 久しぶりの学校は」


 恵麻は優しい声音で次郎の前にコーヒーを置いた。


「手のひら返しがすごかったな」


 次郎は渋い顔でコーヒーを飲む。この前までの空気扱いが嘘のように声をかけられた。彼ら彼女らのニコニコした表情を思い出すと、複雑な気持ちになる。


「良かったじゃない。友達ができるじゃん」


「……どうだろうな」


 むしろ、いらなくなった気さえする。彼らがひどくつまらない存在に思えたのだ。


(友達か……)


 そこで次郎は、次元の魔王のことを思い出した。恵麻に彼のことを聞いていいのだろうか。真奈の話を聞いた感じだと、聞かない方がいいような気はする。


(ってか、そもそも聞く必要がないか)


 次郎が戦おうと思った理由は、恵麻の実力がプラチナであるかどうかを判断するためだ。しかし、恵麻がプラチナだとわかった今、わざわざ調べる意味がない。戦ったら戦ったで、面倒くさそうなので、スルーしようと思った。


 そのとき、喫茶店の扉が開く音がしたので目を向け、次郎はコーヒーを吹き出しそうになった。


 金髪に攻撃な表情の少年――次元の魔王だった。

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