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15. 一瞬

 最寄りの公園にて、南高の朱雀と対峙する次郎。取り囲む不良たちは興奮し、心配しているのは真奈だけだった。


 南高の朱雀は指を鳴らして、笑う。その手には『グローブ』がはめられていた。


「さぁて。北高の玄武をボコったその実力とやらを見せてもらおうか」


「逆にボコボコにしちまえ!」


「ぶっ殺せ、そいつを!」


 後方から聞こえる不良AとBの声援に、次郎はため息を吐く。


(余計なことをしやがって……)


 それが彼らに対する素直な気持ちだった。彼らがいなければ、もっと穏便に済んだはずだったのに。


(まぁ、しゃーない)


 次郎は諦めて顔を上げた。アフロの大男が次郎を見て、闘志を燃やしている。


(どうしようかな……)


 中途半端な対応では、より面倒なことになることを次郎は学んだ。だから、完膚なきまでに倒す。今回はそれが正解であるように感じた。


「行くぜ、おら!」


 だから次郎は、駆け出した南高の朱雀に、杖を向け、容赦のない一撃を放った。


「”吹き飛べブロー”」


「はっ、そんなこうげぇぇぇええええええ」


 風の塊が直撃し、吹き飛ばされる南高の朱雀! 放物線を描いて、地面を転がる。あっけない幕切れに、呆然となる南高の不良たち。一方、不良AとBは、「ざまぁ、みろ!」「これが俺たちの力だ!」と自分たちのように喜んだ。


「ば、馬鹿な、兄貴が一撃で?」


「しかも、”吹き飛ばし”の魔法だと?」


 ざわつく南高の不良。次郎は彼らを観察する。もしも彼らに、自分に対する敵愾心のようなものが芽生えたとしたら早めに摘んでおく必要がある。


「いや、そんなはずがねぇ」


「兄貴が簡単にやられるわけないよな」


「あいつが何か小細工したんだ」


 彼らのそんな声が聞こえ、次郎は決断する。ここで彼らも徹底的に倒しておく必要がある。


 次郎が杖を構えると、南高の不良たちも「何だ、やるのか」と臨戦態勢に入った。


 そのとき、「ちょっと、待てぃ!」と野太い声がした。南高の朱雀である。南高の朱雀は、上体を起こし、笑った。


「止めておけ、お前らじゃ、そいつには絶対に勝てねぇ」


「うっ」


「ぐっ、でも」


「この俺がやられたんだぜ?」


 その一言で、南高の不良たちは顔を見合わせ、杖を下した。話のわかる人たちで良かったと思う。


 南高の朱雀は、一瞬でぼろぼろになった体を奮い立たせるように立ち上がり、次郎を見据えた。


「てめぇ、とんでもなく、つえじゃねか」


「どうも」


「ゴールドの俺を倒すとはな。もしや、プラチナか?」


「いや、ノーランクです」


「何? お前ほどの実力者が?」


「ええ、まぁ。試験を受けていないので」


「……なるほど。ロックだな」


 どの辺がロックなのかわからないが、次郎は笑ってごまかした。それよりも、早く帰りたい。


「それじゃあこれで――」と言い出したところで、南高の朱雀が言った。


「もしかしてお前なら、『次元の魔王』にも勝てるかもな」


「『次元の魔王』?」


「知らないのか? 『白金の七人衆プラチナセブン』で最も強いと言われている男だ」


『白金の七人衆プラチナセブン』は次郎も聞いたことがある。この魔法都市で最強のランクであるプラチナランクを有する魔法使いたちのことだ。


(そうか。『白金の七人衆プラチナセブン』か……)


 その男と戦えば、プラチナランクの実力を知ることができる。つまり、恵麻のランクもより理解しやすくなる可能性が高い。


「……あなたは、その『次元の魔王』と知り合いなんですか?」


「いや、知り合いではない。けど、どんな奴かは知っている」


「そうですか。なら、彼について知っていることを教えてください」


 次郎は不敵に笑った。

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