こか 話81
私は復讐するために、いま、ここにいる——。
× × ×
私は三年過ごして馴染んだキリスト教系の女子幼稚園から、地元の小学校に進んだ。
——元々、母は私に私立の女子小学校を受験させようとしていた。
ただ知的好奇心旺盛だった私は、閉じられた同質な人間同士の環境ではなく、異性含め色んな人間に出会ってみたかった。
単にその土地にいる人間が集う、公立小学校へ進んでみたかったのだ。
私は父を説得し、父が母を説得して、晴れて私は地元の市立小学校に進むことになった。
——けれど、私にとって未開のそこは、私の想定とは違っていた。
幼稚園から小学校に入ったその日、それまで全く気にかけていなかった母の小言を、本当だったんだとその時初めて思い返した。
私は幼稚園の時はみんなの衆目を集めるぐらい積極的だったけれど、余りにも違うその環境に戸惑い、困惑した。
周りの人間は、倫理に則って理性で行動するのでは無く、自身のエゴに則って感情で行動する。
物怖じしないのでは無く、単に何も考えていない。
公共の福祉ではなく、個人の利害を優先する。
これまで良しとされていた自身にとっての常識が全く通用しなくなってしまい、私は身動きが取れなくなってしまっていた。
同級生はもちろん、上級生、先生なども同じ。
友達になろうと、話をしようとしても、彼らは自身との価値観が異なる上に、相手には他人の価値観を尊重しようというつもりが無い。
また私のような人間は少数派であったので、波風を立てないようにするならとにかく相手におもねるしかなかった。
× × ×
——何度か学校に行きたくないと、駄々をこねたことがある。
ただ母は、そら見ろと言わんばかりに、私のお願いを引き合いにして、学校へ送り出した。
頼りの父は単身赴任で、私には、家にも、学校にも、居場所が無かった。
学校に登校した私は、とにかく一人で過ごした。
図書室、屋上手前の階段、校庭の隅、裏庭、人が少ない所を行き来して、私は過ごしていた。
友達がいないのは辛い。でも、友達がいないと思われるのは、もっと辛い。
——そんな風に思っている内に、私は人と会話ができなくなっていた。
声の出し方を、忘れてしまったように。
× × ×
人と話せなくても、役割は降ってくる。
私は図書委員として、毎週一度、図書室で貸し出し業務をすることになった。
本を受け取り、日付の入った印鑑を押す。
返された本を、戻しに行く。
一人ならまだ良かった。けれど、二人で行うことになり、それはよりにもよって男の子、だった。
私は——この小学校に進んだ理由もあいまって、特に男の子が怖かった。
この学校で体験したのは、私が喋ると得体の知れないものを見ている目で私を見てくる、私が黙ると悪態を吐く、嫌がらせをしてくる等々。
とにかくそれは昼休みの間だけと思い、私は貸し出し業務を、無理やり耐え切ろうと思った。
けれど——身体は正直で、昼休みが近くにつれ、私の手は震え、喉はカラカラになっていった。




